テラーノベル
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バッターが入り口をくぐると、そこは緑のメタルで構成された場所だった。
少し上を見れば、ピンク色の空が見える。視線を戻してみると、正面に正方形の地面がある。
しかし、今までに行った場所と明らかに違うのは、周囲の様子だろう。
バッターの立っている通路や、正方形の地面の両サイドに大きな溝が彫られていて、その中に赤い液体の様な物体が溜まっているのだ。
その上、赤いモノからは、鉄の様な鼻につく匂いが漂っている。
バッターが周囲を見回しながら進んでいると、奥の通路からエルセンが歩いてきた。
「あ…あなたは…ああ…」
「デーダンに会いに来た」
エルセンは、両手をだらんと脱力させながら、生気のない目でバッターを見た。
デーダンの名前を聞いた瞬間、エルセンは少し目を見開いた。
「デ…デーダンさん…。そ…そう、そういえばあなた、ここがどんなところか知ってますか?」
エルセンは、周囲の赤い物体を見回しながらバッターにそう聞いた。
しかし、バッターが返答する前に、これまでのように説明を始めた。
「…ここは、第一のゾーンの中央、アルマの”肉の泉”です」
肉の泉。
その言葉でようやく理解できた。
周囲に溜まっていた赤い物体は液体ではなく、無数の肉片が絡み合い、溶け合い、まるで液体のようになってしまったものだったのだ。
エルセンは、そんなグロテスクな話をしながらも、顔色一つすら変えずにバッターを見つめている。
それから再び口を開いた。
「ここでは、ふんだんに湧き出した肉が、あなたの前に広がる広大なメタル製のプールを満たし続けているんです。そして、泉が溢れてしまう前に、肉をボトルに詰めるのが僕らの仕事です」
エルセンは、投げ打たれた様に地面に転がっていたガラスの破片を虚ろな目で見ながら呟いた。
「肉はボトル詰めされた後、すぐにゾーン1から別のゾーンに向けて配達されます」
それからガラスの破片を一つ拾って、エルセンはそれを握りしめた。
そして、お決まりの様になっているあのセリフを吐く。
「4つのエレメントのうち、最初の一つ…。とても重要なエレメントです。…だって、肉がなければ僕らは食べるものがありません。みんな次々に飢え死にしてしまうでしょう」
エルセンはそこで一度話を区切った。
しかし、すぐにもう一度口を開く。
「デ…デーダン様は、この泉の中央にご自分だけのオフィスをお持ちです…。で、でも、今までそのオフィスを見つけた人は誰もいないんです…。彼は…必要な時以外姿を見せませんし…」
エルセンはそこで言葉を詰まらせ、バッターを見た。
「ええと、あー……それで…。………それはともかく、あなたは誰です?」
今さらエルセンがバッターにそう問った。
バッターは、エルセンを見つめ返しながら、毅然としていう。
「俺は、世界を悪意から解放するために来た」
「…わあ、ほ、ほんとうですか・・・? ああ・・・じゃあ・・・その・・・」
エルセンは顔をうつむかせた。
瞬間、バッターの胸に向けて球状の何かが飛んできた。
思わずそれをキャッチすると、そこには満面の笑みを浮かべながら黒い液体を吐き出すエルセンの顔があった。
」ぼくのことも解放してくれますか?「
一拍の隙さえ与えず、バッターはそれを思い切り投げ返した。
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眠狂四郎
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それはバーントの体にぶち当たり、バーントは思わずよろめいた。
よろめいたバーントに、バッターが渾身の体当たりを食らわせると、バーントの体は更によろめき、泉の中へと落ちて行った。
頭がないせいか、バーントはじたばたともがきながらプールの中へと消えた。
それから数秒後、突如としてエルセンの顔面がしゃべりだした。
」ああ・・・いい気分かも・・・「
そしてエルセンの頭すらも消えてしまった。
バッターはそんなエルセンの事を意にも介さずに踏み越えると、エルセンが通って来た道を逆走する。
するとその先には、ザッカリーがいた。
ザッカリーはバッターを見るや否や、マスクの上からでもわかるほどニヤニヤしながら近寄ってきて、バッターの肩に腕を回した。
「よう相棒! 今シーン、最ッ高にシビれたぜ! 流石は浄化する者様だ! …おっと、ここは台本通りにやんなきゃな…。うぉほん」
ザッカリーはバッターを離すと、へらへらした態度はそのままに言った。
「こんちわ、███! 調子どうよ? …さあーて、ショッピングに使える現ナマはお持ちかな?」
言いながらザッカリーは、どこからともなく商品を並べ始めた。
その中には、先ほど出会った時とは少し違った、けれどもやっぱりバッターやアドオンにぴったりの防具や、武器などが並んでいる。
「なぜ装備を小出しにする」
「ん? あんたも野暮なことを聞くねえ。強い装備ほど後半に登場する。こんなの常識だぜ?」
「なぜ彼らの事を███と呼ぶんだ」
「だからさあ……俺らは物語の中の存在なんだぜ? 読者様の名前まで作者が律儀に一個一個書くわけねえだろ。別のサイトだったらできただろうがな。……で、どうすんの? 買ってくのか?」
バッターはそこで問答を打ち切り、ザッカリーから新たな装備を購入すると、今まで身につけていた装備を売却した。
「まーいどありい。んじゃ、お得意様のよしみってことで、監督官様のとこへ行くヒントをくれてやるよ」
言いながらザッカリーは、道の突き当りを指さした。
そこには、ブロックに囲まれて通れない大きな入り口があった。
「監督官様は、あの奥にいるよ。ブロックで囲まれてて、今は通れないがな。…ああそうだ。さっきあそこに、俺の知り合いの猫が入ってったんでな。もし会ったら代わりに挨拶でもしといてくれ」
ザッカリーは笑いながらそう言うと、地面に座り込んだ。
「……なんだよ。俺を見つめてたって、これ以上は何にもないぜ? 小説版だからって理由で、ここまでセリフ膨らまされたってのに、難儀なもんだよな。…でも、商売の話ならできるぜ? どうする。まだなんかご入用かな?」
バッターは、ザッカリーがすべて言い終わる前にその場を後にした。
歩き出したバッターは、ブロックで塞がれた入り口を左に曲がって、更に歩いた。
すると、そこにもエルセンが一人だけいた。
彼が立っている場所の後ろの壁には、なにやら非常口の様なマークが刻まれている。
バッターはエルセンに話しかけた。
」ほ、ほっといて・・・。は、働かせてください! お願いですから!「
エルセンの絶叫とともに、ばちゅ! と音がした。
何の音かは、言うまでもない。エルセンの顔面が吹っ飛んだ音だ。
そこからは、いつも通りだった。
どかん。がこん。ぼこっ。
それでおしまい。
」まだ・・・病欠だってしたことないのに・・・「
エルセンの遺言はそれだった。
なんとなく気配がして振り返ってみると、こちらを見ながら大笑いしているザッカリーだけが目に入った。
何か言っているようだ。
口の開き方を見るに、なんだそのナレーション。だろうか。
…。
バッターはやっぱり無視を決め込んだ。
コメント
1件
「肉の泉」…その正体が無数の肉片の塊だったって知った時、ゾッとしました。でもエルセンが淡々と説明するのが逆に不気味で、この世界の歪み方を感じました。バッターがエルセンの頭を投げ返すシーンは衝撃的で、もう完全に狂った世界なんだなって。ザッカリーのメタ発言はちょっと笑えたけど、エルセンの最期のセリフが切なかった…。病欠したことないのにって、虚しすぎるよ。