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バッターは、エルセンの立っていた場所の後ろにあった、非常口のようなマークに顔を近づけた。
すると、目を凝らせば見えるくらいの大きさで、ペダロの復帰地点です。という文字と、小さなボタンを見つけた。
試しにボタンを押してみると、泉の上に、どこからともなくアヒルの乗り物が現れた。湖とかで乗るあれだ。
ペダロは、肉の上にぷかぷかと浮かんでいる。
バッターは振り返って、逆側の道を見てみるが、行き止まりになっているようで進展は望めなさそうだった。
大人しくペダロに乗ってみると、意外に沈むことはなく、肉とプラスチックの体がこすれる気味の悪い音が聞こえてくるだけだった。
奥の方に向かってずっと続いている泉を、バッターはペダロに乗って進むことにした。
ちなみに、バッターがペダロに乗っている姿を見て、ザッカリーがまた腹を抱えていたのを、バッターは知らない。
そのころバッターは長い通路に居た。もちろん眼下には、真っ赤な肉が渦巻いている。
ふと、バッターが右側の壁に視線を移した。
するとそこには、1:4という数字が刻まれている。
まさかまた謎解きだろうか。恐らくこれは、何かのヒントなのだろう。
バッターはそれを記憶の片隅に留めて、先へと進んだ。
それから少ししてバッターは、泉の終点と思われる場所までやってきていた。
ここに至るまでの間の壁には、2:9、3:8、4:2という数字が刻まれていた。
やはり、何かの規則があるように思えたが、今のバッターには、それを解くための材料が足りない。
バッターは、ペダロから降りた。
泉の終点には、奥へ進む道を塞ぐようにメタルの地面がせり出していたからだ。
そこには当然の様にエルセンがいる。
バッターが話しかけると、エルセンは焦点の合っていない目でバッターの奥を見つめながら言った。
」燃え尽きちゃうだなんて嫌だな・・・「
バッターはエルセンが言い終える前にバットを横薙ぎに振るい、バーントを泉に叩き落とした。
数秒としないうちに、エルセンの顔面が泉から浮き出てきた。肉の上に浮かびながら、虚ろな顔で呟く。
」ああ、くそっ・・・「
そう言い残すと、エルセンの顔面は消えてしまった。
バッターは今までの出来事がまるで無かったことの様に振り返り、終点にある唯一の通路を進んだ。
少し進むと、そこにもエルセンがいた。彼の背後には、ペダロの復帰地点のマークがある。
エルセンに退くよう話しかけると、エルセンは唐突に叫んだ。
」・・・亡霊に、なりたくないよぉ「
バッターは、一瞬の間すら置かなかった。
バーントをぶん殴って転ばせると、そのまま馬乗りになる。
そして、バットの先端を何度も叩きつけた。
暴れていたバーントは次第に静かになり、エルセンの顔面が口を開いた。
」ぼくに何がおきてるの・・・?「
そう言って消えたエルセンの顔面を無視して、バッターはペダロの復帰地点に触れた。
すると、バッターから見て斜め右に、終点とは別に仕切られた泉があるのが見えた。
その泉に、ペダロが姿を現す。
ペダロに乗り込んだバッターは、泉の中央にいくつかのキューブが浮かんでいることに気づいた。
ゾーン0で最後に見たものと、よく似ている。
合計10個のキューブが置かれており、ゾーン0の物と仕掛けが同じならば、左上のキューブから、1ずつ数字が割り当てられているはずだ。
数字と言われて思い当たるものと言えば、これまでに発見した数字だけだった。
バッターは、ここに至るまでに発見した数字の順でキューブに触れてみた。
まず試しに、1、2、3、4の順。しかし、キューブは何の反応も示さない。
ならばとバッターは、4、9、8、2の順でキューブに触れた。
何か劇的な変化が訪れたわけではなかったが、キューブはその数字を受け入れた。
「……恐らく最初の数字は、入力する順番なんだな」
バッターの仮説は、当たっていた。
1、2、3、4以外にも、既にいくつかの順番でキューブに触れていたのだが、どれも反応しなかったからだ。
しかし前言の通り、劇的な変化は訪れない。
恐らく、数字がまだ足りていないのだろう。
バッターはペダロから降りると、来た方向とは逆に向けて進んだ。
そこにもエルセンと復帰地点があったのだが、戦闘シーンは少々割愛させていただこう。読者の皆様も、同じ戦闘が何度も続いて飽きてきている頃だろう。
………いや本当に。
代わりと言ってはなんだが、彼の放ったセリフだけ書き下ろすことにしよう。
」もうこれ以上、成果なんて出せないよ・・・「
」僕が働かなかったら、誰が代わりに・・・?「
バッターは復帰地点に触り、ペダロに乗り込むと、背後の泉を進んだ。
その途中で、壁に数字が書いているのをバッターは発見した。内容は、6:5。そして、5:6だ。
バッターは、その後の泉がある場所をペダロで進んだ。
そしてふとした瞬間、少しだけ上の方から声が降って来た。
「よーうバッターさんよ。ペダロでここらを旅行でもしてんのかい? 滑稽な姿とは反対に、楽しそうじゃないの」
ザッカリーだった。どうやら泉を一周して、戻ってきてしまったようだ。
「なぜお前がここにいる」
「……なあバッター。あんた、鈍いとか言われないか? 俺からしたら、なんでお前がそこに? って感じなんだがな」
ザッカリーは笑いながら言うと、バッターからは死角になっている壁を指さしながら言った。
「多分さ、この上にあった、あのよーわかんないキューブのなぞ解きの真っ最中なんだろ? だったらそこ見てみなよ。今のあんたに必要なヒントがあるからさ」
バッターはザッカリーの指の先に行ってみた。
その壁には、7:9、8:Cとあった。
バッターはそれを覚え、キューブの所まで戻ろうとした。
「番号は7:9、8:Cだぜ。俺ったら優しいねえ」
…ザッカリーの声が上から降って来た。
バッターがザッカリーを見上げると、ザッカリーはマスクの上からでも分かるウザイ顔をしながら、けらけらと笑って言った。
「なんだよその顔。もっと早く言えってか? へっへっへ、ヤーなこった」
ザッカリーは言い終えると、すぐさま駆け出し、どこかに消えてしまった。
バッターはザッカリーを目で追わずに、引き返してキューブのところまで戻った。
そのまま、数字を先ほどの法則に当てはめて入力していく。
4、9、8、2、6、5、9、C。
全てに触れ終わると、遠くから、がこん。という音が聞こえた。
今までのパターンから察するに、デーダンの本宅へ通じる道をふさいでいたブロックが消えたのだろう。
バッターはペダロに乗り込み、入り口に向かってみた。
すると、見事にブロックが消えているではないか。
逡巡すらせずにバッターは中へと入った。
…そして、見事に期待を裏切られた。
すぐにデーダンと出くわすかと思っていたが、そこはやはり監督官だった。
入り口を入ると、すぐに十字路が姿を現した。しかも、酷いことにヒントの一つだって記されていないのだ。
だが、バッターはとりあえず進んでみることにした。
それから、数十分が経った。
バッターでさえ、自分が今どこにいるか分からなくなったころ。助け舟はいきなり現れた。
「……本当にどこにでも現れるな。親愛なるヒロイズムの体現者殿。それで、君はこんなところで何をへばっているんだ」
ジャッジだった。
ジャッジは、バッターを見下すような目で見ながらため息をついた。
「なに、君もすぐに分かる。このリンゴの赤と、海のブルーが織りなす景観に、一体どれだけの価値があることか。…君は、この場所の独特な建築様式にまごついている。そうだな?」
ジャッジは、毛づくろいをしながら片目でバッターを見上げる。
「もしそうだとするのならば、君はもっと集中したまえ。曲がり角ごとに迷路が示す誤った選択肢に囚われたくないのなら、次の部屋に行く前に、もっと耳を凝らすことを勧めよう」
ジャッジは言い終わると立ち上がり、どこかへ歩き去りながら一言、「頑張りたまえ。若き呑んだくれ殿」とだけ言い残した。
バッターはそれから、部屋を移動する前に耳を澄ませてみることにした。
すると、どうだろう。どの部屋でも、必ず何かの音が聞こえる通路があるのだ。
ジャッジの、耳を凝らせ。というアドバイスは、恐らくこのことだ。
バッターは、音がする通路を選んで進んだ。
一つ。
また一つ。
そしてまた一つ。
気付けば、七つ目の通路を抜け、広間に出ていた。
その広間には看板が一つだけ置いてあった。内容は、【この先、監督官の仕事場ゆえ、進むべからず】
バッターは先へと進んだ。
入り口を通り抜けると、紫のメタルでできた長い廊下があり、その先に巨大なドアがあるのが見えた。
バッターは、バットを構えながら廊下を進んだ。
そしてドアをたたき壊して中へと突入した。
「…! テメエ!!」
デーダンはデスクの向こう側で顔を真っ赤にしながらバッターを睨みつけた。
デーダンの背後では、電源の付いたラジオがぺちゃくちゃとお喋りをしている。バッターをここまで導いてくれた音は、恐らくあれから出ていたのだろう。
「クイーンの千の顔に懸けて、こんなこたァあり得ねえ!! イカレてんのか?! テメエ、まるっきりのノータリンだってのか?!」
丸太の様な両腕をデスクに振り下ろしながらデーダンは叫んだ。
バッターを睨みつけながら、再び口を開く。
「テメエをぶっ殺してやるっつった意味が分からねえってのかよ?」
「お前を滅ぼしに来た」
バッターは、デーダンの問いに全く沿わない回答をした。
眉を歪めながらデーダンは反抗する。
「狂人か。テメエは。分かるか?! 俺はゾーン1のガーディアンだ! 俺無しじゃ、ここが立ち行かねえんだよ!」
デーダンは呼吸すら忘れて、ただひたすらに怒鳴った。
「どんな風にイカレちまえば、そんなテメエに都合のいいことだけをメクラみてェに信じ込めるってんだ?」
「俺は世界を浄化する者。そして、お前はこの地を蝕み害を為すモノだ。…覚悟はいいか」
「…ざけんな。このゾーンがイカレちまったら、他のゾーンだって、長くは持たねえ! テメエなんかに殺されてたまるかよ!」
バッターはデーダンに殴りかかった。
コメント
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おお、第11話読み終えたわ!ペダロに乗るバッターの姿とか、数字の謎解きの仕掛けとか、ゾーン0を思い出させる構成がニクいね。ザッカリーの軽口も相変わらずウザかわいいし、ジャッジのヒントで「耳を凝らせ」ってのが地味に効いてて良かった。最後のデーダンとの対峙、バッターの「お前を滅ぼしに来た」って台詞がパンチ効いてて痺れたわ。次が気になる!🔥