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上に置いていた箱が頭の上にトンっと落ちてきた。
「いたた……」
(ん?これなんだったっけ…)
頭に当たって床に落ちたそれを拾い
ぎゅうぎゅうに敷き詰められたシランの贈り物だったことを思い出す。
贈り物というより、嫌がらせに近い気もするが。
もう一度その箱を開け、中の紙切れをもう一度見
る。
【р.1068 w.16/ p.919 w./p.2198 w.15/p.512 w.12/p.2155 w.2/p.2087 w.8/p.1078 w.20/р.2155 w.2/p.1408 w.24/p.870 w.26】
俺は頭を摩りながら、その箱を机に放置したまま
その紙切れだけをズボンのポケットに入れて
スタッフルームを後にして1階に下りた。
入口の扉に掛けてあるプレートを〝Open〟に変えると、タイミングよく客がやってくる。
あの大輝くんの事件以来
ストーカー行為もパタリと止み、彼が店に顔を出すことは無かった。
健司にことの概要を話したときは
「そんな状態のまま花屋続けられんのかよ」
と心配されてしまったが、正直休んでる暇は無い。
なにより、店でお客と花を通して交流しているときが自分の中の癒しでもあるため
店を休む方が酷なのだ。
そんなこんなで、客の中で一人の常連を失ったという淋しさもあったが
安定の日々を取り戻していた。
謎のローマ字と数字が書かれた紙切れを除いて。
◆◇◆◇
その翌日
焼肉以来、仁さんとよくLINEで話すようになった俺は
花の予約の内容
日頃どんなメンズ服を作っているかなど
ナチュラルに世間話をする仲にまでなっていたこともあり
いつしか、ただの常連客からプライベートでも会う友人と呼べるほどの関係になっていた。
◆◇◆◇
そんなある日の閉店作業中のこと
最近ポストを確認していなかったことに気付き
また何か入っていたら嫌だな……と思いながらも
なにか大事な郵便物が来ていたら大変なのでポストの中を確認するべく
店の扉横のポストをいつものように開けると
そこにはまたもやネコスポサイズのダンボールが入っていた。
嫌な予感がして思わずため息を漏らす。
(まじか…….)
今度は一体何が届いたのだろうと思いながらそのダンボールをその場で開けてみると
そこには今度はシランではなく竜胆が入っていた。
しかしそれだけでなく
以前シランと一緒に入っていたあの謎の文言が書かれた紙切れと同じようなものがまた入っていた。
【p.2155w.2/p2147w.11/p.1134w.16/p.1517w.1/p.2444w.7】
(……本当にこればっか。なんかの暗号っぽくはあるけど、全然検討もつかないな…っ)
自分一人じゃ限度があるし他の人に相談してみるか、と考えたとき
ふと仁さんの顔が思い浮かんだ。
自分より10歳も年上だし、なにか手がかりにはなるかもしれない。
普段人に相談するということをしないが、仁さんになら逆にしやすいかもしれない。
◆◇◆◇
翌日、7月3日
そんなこんなで、仁さんに折り入って相談したいことがあると理由を付けて居酒屋で飲む約束をした。
仕事を終えて店を閉じ、約束していた居酒屋に向かうと
先に席についていた仁さんが手を挙げて俺に気づ
く。
「今終わったとこ?お疲れ様」
俺を迎える仁さんの声が聞こえ
俺も「はい、仁さんもお忙しいところありがとうございます」と答えて席に着く。
お互い飲み物と料理を注文すると
「それで…相談って?」
仁さんが身を乗り出して聞いてきた。
そうして俺は一呼吸おいて、口を開いた。
「この前、大輝くんと同時期に宛先不明のシランっていう不吉な花がぎゅうぎゅうに敷き詰められたダンボールが届いてたんですけど…」
「同時期に?証拠は全部警察に渡したはずじゃ…」
首を傾げる彼に俺は丁寧に説明してみせた。
「いえ、どうやら大輝くんが俺に送ってきていたのは赤い薔薇とメッセージの書かれたメモと盗撮写真だけみたいで」
「じゃあ、他にも誰かが送ってきてる可能性があるってこと?それに、不吉な花ってのは……?」
「…俺の感覚に過ぎませんけど、明らかに別の人が送っていると思うんです」
「わざわざダンボールに、不吉な予感という意味を持つ「シラン」という花が何枚も敷き詰められていて」
「その中央にこんなものが入っていたんです」
言いながら、俺はズボンのポケットから少しクシャッとなった例の紙切れを取り出して
仁さんの前に差し出した。
すると彼はそれを手に取ってマジマジと眺めながら、首を傾げた。
「なんだかすごい書いてあるけど…なにかの暗
号っぽいな」
「!….やっぱり暗号、ですか」
「俺はこういう系詳しくないからあんま力になれるかわかんないけど、紙ってこれだけ?」
「…あ、あとこんなのも最近新しく入ってて……!」
もうひとつの紙を見せるが、もちろん反応は変わらなく。
「はあ…だめだ、肝心な辞書の種類が検討もつかない……」
そう言い尻込みすると
仁さんは突然閉いたような表情をして
「そうだ、俺の昔からの知り合いに暗号系に強い情報屋いんだけどさ、そいつに聞いてみよっか?」