「これで、俺の友人はみんな既婚者になり、独身は俺だけ。四月になったら三十五歳になるっていうのに……思いっきり取り残された気分です」
苦笑しつつも、さり気なく独身を恵菜にアピールした純だったが、彼女は、違う事が気になったようで、クールな目元が丸みを帯びている。
「え……? 谷岡さん、四月が誕生日……なんです……か?」
「そう。っていうか、相沢さん、ビックリしてるけど……」
「私も四月生まれなんです」
「ええぇ!? マジか! 俺は誕生日が四月二日なんだけど……」
純の誕生日を聞いた恵菜は、更に目を見開き、口元を手で覆った。
「こっ……こんな事ってあるんですね……。私も誕生日が四月二日なんです……」
「うわぁ! 誕生日が同じって、すげぇ偶然……!」
男友達と会話をしているノリで、つい砕けた喋り方になってしまった純。
「すっ……すみません……。つい、友人と一緒にいる時の話し方になってしまって……」
「いえ、普段通りの話し方で、私は全然構わないですよ」
恵菜が純に微笑むと、純は、『じゃあ、お言葉に甘えて遠慮なく』と爽やかな笑顔を彼女に向けた。
誕生日が同じだった事がきっかけで、純と恵菜の会話は一層弾む。
『四月二日生まれあるある』を話している二人。
「同級生の中でも、一番早く誕生日が来て、すごく損した気分になるんですよね……」
「ハハッ……すげぇわかる……!」
「しかも誕生日って、春休み中じゃないですか。新学期で学校に行く時、既にひとつ歳を取っているっていう……」
「そうそう! 年寄り扱いされるんだよな……」
他愛のない話を恵菜としている事が、純にとって、心から楽しいと思える。
(やっぱり俺…………彼女の事……すげぇ好きだわ……)
勇気を出して、恵菜を食事に誘って良かった、と、純は改めて思う。
二人は、予約時間いっぱいまで、レストランで楽しいひと時を過ごした。
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