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今日の撮影は、サブカップルを含めた集団での撮影がメインだ。
「 深澤さん… ねぇ、!
無視しないでくださいよ~! 」
「 …うるさぃ、撮影外でキスすると、ありえないんだけど…、 」
ラウールは執拗に追いかけてくる。
俺は彼に背を向けて、絶対に顔を見せないようにしていた。
「 もぉ、キスくらいで怒んないでくださいよ! もう34歳のくせに!! 」
「 はぁぁ? お前なぁ、恋人役だからって撮影外でキスするやつがいるか?
そんなん誰にでもしてたら、人たらしだって言われるぞ! 」
振り返ってそう言い放つと、ラウールはまた真剣な顔になった。
「 …深澤さん以外にしないですけど?
俺、本当に好きな人としかキスできないんですよ。 」
ラウールはめちゃくちゃ真顔で言ってくる。
俺は思わずムキになってしまった。
「 は、はぁ? でも、ドラマでしたんだろ、!
む、向井さんと…その、… 」
34にもなって、そういうのを言葉にするのが恥ずかしいって思うとか子供っぽすぎる。
そう思っているのに言葉が出てこない。
すると、ラウールは食い気味に早口で話してきた。
「 あ~…濡場あったみたいな話してましたけど、実際は、ただ俺が一方的にレイプされるっていうやつだったのでキスしてないです。 」
「 れ…れぃ!? 」
「 なにびっくりしてるんですか…そりゃあるでしょ。 」
「 ぉ、お前…その時何歳? 」
「 ぁ~…たしか、19とかだったかな… 」
俺は感動した。
「 お前…そんな難しい役こなしてたんだな…すげぇよ…。 」
「 難しいって…今回深澤さんも俺にレイプ紛いのことされてるでしょ。まだ撮影してないけど。 」
たしかに、俺が嫌がりながらされるシーンはある。
でも、その事をあまり深く考えないようにしていた。演技もなるようになると。
「 ぅ、うるさぃ…あんまそのシーンのこと考えねぇようにしてんのに…、 」
「 なんで考えないようにしてるんですか? 」
ラウールはずいっと顔を近づけてきた。
言えるわけない。
お前から、“男“を感じると心臓が裂けそうになることを。
「 …別に。
俺そういう演技したことないから分かんないし、なるようになれ精神でやってるし…無駄なこと考えたら上手くできないから。」
「 …ふ~ん。
また俺でドキドキしてくれてるのかと思ったけど違うのかぁ~。 」
「 ちげ~よ! 」
ラウールはフラフラとどこかに行った。
俺は急いで、スマホを開き、向井さんとラウールのドラマを探した。
そのドラマは、売春がメインの話だった。
若い子どもたちを売買して生計を立てている赤坂(向井)と、赤坂の性処理係となって生きているナナ(ラウール)。
1人で、2人が触れ合っているシーンを見る。
『 腹が立った。
俺が仕入れた12の上玉を奪われて。
赤坂「 おい、ナナ。脱げ。 」
ナナ「 えっ、…そんな急に言われても… 」
赤坂「 早くしろよっ“、! 」
ナナの身ぐるみを剥がし、無理やり挿れる。
ナナ「 ぁ“っ、いたぃ、いた“い“!! 」
赤坂「 黙れ! 」
ナナの首を締めると
顔を歪ませて、必死にもがく。
赤坂「 お前、俺に買われてるくせに口答えしてんじゃねぇよ。 」
ナナ「 はっ“、かひゅっ、…ぅっ、 」
赤坂「 このまま殺すぞ。 」
ナナは抵抗をやめ、殴られながらも流れに身を任せた。 』
思わず、画面を伏せた。
彼の苦しそうな表情、色っぽい声。
俺は火照っていた。
当時19歳のラウールが、レイプされているのを見て。
最低だ。
そんな目で年下の演技を見て。
純粋無垢な彼に、そんな感情をもってしまった。
「 …俺を殺してくれ…、 」
「 あ、見てくれたんすか? 」
「 っ、!?!? 」
突然向井康二が現れた。
しかも、ラウールと向井さんのドラマを見ていることがバレた。
「 ぁ、え、あの、…別になんでもなくてっ、 」
「 ラウール、ほんま凄いですよねぇ。
その役も、19歳のラウールには酷やったと思うんやけど…最後までやりきってくれて… 」
「 ぁ、…本当ですね。
19歳で、この役を演じるのは中々難しいと思います…おじさんの俺でも難しいのに…。 」
向井さんは目の前に移動してきた。
「 深澤さん、俺の方が後輩なんで、敬語やめてください! 」
「 ぇ、…あ、うん… 」
「 主演務めるような大物俳優さんに敬語使わせるんはよくないですからね!笑 」
「 そんな、大物だなんて…俺なんか全然だよ。笑 」
そう言うと、向井の表情が少し曇った。
だが、ころっと変わり、口を開いた。
「 深澤さんって、ラウールのこと好きなんですか? 」
「 っはぁ!? な、なにいって…!! 」
「 ラウールが、レイプされてるんに釘付けでしたよね? ここまで過激なBLって、抵抗あるやろうに…普通な顔で見とるから、もしかしてって…違いました?笑 」
向井は笑顔だったが、目の奥が笑っていなかった。
今にも吸い込まれそうな目に恐怖を感じた。
「 …11歳も下の子をそんな目で見ないよ。
今回初共演だから、どんな演技をするのか分析してただけ。
俺、そんなやばいやつに見える?笑 」
「 …いいえ。それならいいんです。笑
俺はラウールに近づくハエを殺さないかんのんですよ。笑
突然失礼なこと聞いてすみませんでした。 」
そう言い捨てて、ラウール方に走っていった。
なんだか嫌な奴だ。
「 ハエって…俺の事…!? 」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「 凪~!もう話聞いて!
陸が、雫先生綺麗って言うの。意味わかんなくない? 」
「 翔、引っ付くな。
あいつは前からそういう奴だろ。それわかった上で付き合ってんじゃねぇの。 」
「 ん~、でもさぁ…! 」
今は凪(ラウール)、翔(向井)、陸(目黒)がメインのシーン。
「 …翔、なにしてんの。 」
「 …ぁ、陸! なんでもないよ!
凪とちょっとだけ話してたの! 早く帰ろ! 」
「 凪…くんって、雫先生と仲良いよね。
あの人って、恋人いんの? 」
「 ぇ、陸、何聞いてんの…、? 」
凪が立ち上がり、陸の前に立ちはだかる。
「 あんたには関係ないだろ。
目の前にいる彼女大切にしろよ。このヤリチン。 」
「 や、ヤリチン、!? 」
「 …凪くん、雫先生のこと好きなんだね。 」
「 あぁ? 」
「 …なんでもない。翔帰ろ。 」
陸は翔の手を引っ張る。
「 ぁ、あぁ…凪っ、ごめんね、! 」
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「 カット~! 次の撮影まで10分ほど空きます!」
「 め、目黒さん、!
さっき足踏んじゃってすみません! 」
ラウールが深く頭を下げている。
目黒は焦ったように近づいた。
「 そんなそんな、全然大丈夫だから。
足踏んでくれたおかげで表情に揺らぎが出たから、むしろありがたかったよ。」
目黒は本当にできたやつだ。
断るだけではなく、しっかりフォローもいれて相手を安心させる。
「 ラウールに抱きついたん久々やったわ~!
いっつも嫌がるもんなぁ? 」
「 …康二くんうるさい。 」
「 えぇ?目黒さんの時と対応ちゃいすぎひん?」
「 向井さん、さん付けはやめてください。
俺の方が後輩なんで。 」
「 …っ、気が向いたらな? 」
そんな他愛もない話をしている。
俺はその3人をぼーっと見つめていた。
制服でも違和感のない3人と、1人おじさんの俺。
ラウールは可愛いとか、色々言ってくるけど…
たとえ、ラウールが本気で言ってくれていたとしても11歳の壁はあまりに大きすぎる。
俺は、彼を好きになってはいけない。
「 深澤さん! 差し入れですって!
次、俺と深澤さんのシーンなんで、一緒に食べて行きませんか? 」
「 ぁ、…あぁ。行くか。 」
「 …!! はい! 」
この素直で真っ直ぐなラウールを、
変な目で見た俺。
本当に関わっていていいのだろうか。
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「 なっ、凪、どうしたの…!? 」
廊下を歩いていた雫は突然凪に押されて、人気のないトイレに入った。
「 お前、陸とか言うやつと仲良いの? 」
「 り、陸くん…?
陸くんは…委員会のことで関わることはあるよ、? 」
「 …お前、ほんとうざい。
あんなやつにいい顔すんな。同じ空気吸うな。見るな。喋るな。聞くな。
俺以外に笑顔を見せるな。 」
「 …ど、どうしたの…ほんと、… 」
「 …俺以外見るなよ、 」
凪は雫の服に手を入れる
「 ぇっ、ちょっと、だめだよ、! 」
「 怒りが収まらねぇ。
俺以外見られないように、体に教えてやるよ。」
「 んっ、嫌っ…凪、! 」
「 ぢゅっ、…ん、 」
雫は跡をつけられる。
「 凪っ、やめてよっ、…! 」
「 …ほんとうるさい。 」
「 ん“んっ、ふ、ぅっ、…! 」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「 ぁ“っ、ぅ、ん“んっ、 」
「 ぁ~、お前ほんと腹立つ、
うなじえろすぎなんだよ。喉仏も…、全部。」
「 凪っ、きすして、っ… 」
「 …嫌。
お前が俺以外いらないって言うまでしない。 」
「 っ、なんでよっ、… 」
「 早く言えよ。 」
「 …、ん“っ…うぅ“、 」
「 ………。 」
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「 お疲れ様でした!
お2人の出番は以上なので! 」
「 はぃ。ありがとうございます。 」
「 ありがとうございます!失礼します! 」
今日の撮影が終わった。
1回目のレイプ紛いのシーンが終わって、少し気持ちが楽になっていた。
やっぱり、なるようになるんだ。
「 深澤さん、やっぱり演技お上手ですよね…!」
「 ん~、そうか?
演技する中で気持ちが高ぶっただけだよ。」
「 ……、深澤さんって、男の人の経験あるんですか? 」
空気が止まった。
「 ……は? 」
言葉が出てこない。
なぜ急にそんなことを聞くのか。
「 なに言ってんの…お前。 」
「 ぁ、いや…喘ぎ方、慣れてらっしゃるから…もしかしたらって、… 」
「 …は!?
喘ぎ方が慣れてるってなんだよ!??
男の経験とかねぇよ!フィーリングだよ!! 」
「 …ならよかった。笑 」
「 はぁ? 」
ラウールは不敵な笑みを浮かべた。
「 …深澤さんが経験あるって言ったら、俺嫉妬しちゃうところでした。 」
「 …意味わかんねぇ!
男とのキスもお前が初めてだよ、ば~か! 」
「 えっ、ほんとですか!?
ファーストキス貰ったってことですか!? 」
ラウールは俺の手を握って、そう聞いてきた
「 っ、もぉ、 そんな言い方すんな!
ドラマでするキスはカウントしね~だろ! 」
「 え~?じゃあプライベートで奪わないといけないってことか… 」
真剣な顔でそんな馬鹿げたことを言う。
俺はラウールの意図がわからなかった。
ファーストキスだと喜んだり、奪おうとしたり。
なにを考えているのか全く読めない。
「 何言ってんの。 お前に奪われることは絶対にね~よ! 」
「 はぁ?絶対奪いますから!!
あなたの初めてを全部奪うつもりでいますから!! 」
「 っ、お前それどういう意味か分かってんの?」
「 当たり前ですよ。
わからずに言うような無責任男ではないです。」
真っ直ぐな眼差しで訴えてくる。
目が見れなかった。
この方34年。
こんな目を向けられたことがなかったから。
「 …おじさんを弄ぶためだけに、そんな言葉言っちゃだめだぞ。」
「 …真剣なのに…。 」
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うわあ、第3話、読み終わりました……もう胸がギュッと締め付けられました。深澤さんがラウールの19歳の頃の演技を観て「最低だ」って自分を責めるシーン、あれ本当に切なかったです。11歳差の壁を意識すればするほど、ラウールのまっすぐな言葉が深澤さんの心に刺さるんですよね。「初めて全部奪う」なんて言われたら、おじさん側からしたら冗談にしか思えなくなっちゃうのもわかる……。それでいて、向井さんの「ハエを♡♡♡」発言、ラウールをめぐる上下関係が複雑で、次が気になりすぎます!