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遥が震える肩を俺に預けてきたとき、ほんとは、すぐにでも抱きしめてやりたかった。
でも――手を伸ばせなかった。
触れることで壊してしまう気がした。
遥は、たぶん今、試している。
俺が“何もしない”と、何を思うのか。
それを、遥自身がわかっていないまま。
――わかってる。
遥がどういう過去を持ってるか。
蓮司のことも、家のことも、学校のことも。
俺にすべてを話してくれたわけじゃない。
でも、断片で察するには充分だった。
身体を差し出すことしか知らなかった遥に、
「何もしない」ことは、逆に暴力にもなる。
それでも、俺は何もできなかった。
いや、何もしないことを選んだ。
本当は、抱きしめたらいいのかもしれない。
「好きだよ」とか「大丈夫」とか、言えたらよかったのかもしれない。
でも、そんな言葉は、いまの遥には届かない気がした。
遥の中で、愛は搾取と同じ意味だった。
その式を、いきなり塗り替えるほど俺は強くない。
だったら――せめて。
遥が「愛されてるのに身体を求められない」経験を、
この場所でひとつ積み上げるしかない。
俺が“我慢してる”って、遥が思うならそれでもいい。
でも本当は、
遥が「自分から差し出さなくてもいい」ことを、初めて知ってほしかった。
俺にとって遥は、ただの恋人じゃない。
大切にしたい存在だって、思ってる。
けど、遥が「愛される方法」を信じられないままなら、
この想いすら、いつか遥を苦しめてしまう。
だから今は――耐える。
自分の想いよりも、
遥の価値観が崩れていく痛みを、先に受け止めたい。
遥が顔を伏せて、小さく「わかんねえよ」って呟いたとき、
俺の胸の奥に、熱くて重たい何かが刺さった。
それでも、俺は答えない。
代わりに、
少しだけ肩を寄せて、背中に手を置いた。
その一手が、遥を楽にしたのか、もっと混乱させたのか――わからない。
でも。
「大丈夫」って、口にするより先に、
信じてくれるまで、黙って隣にいることを、俺は選びたかった。
※このシーンは、日下部の優しさと不器用さのぎりぎりの境界です。
彼は“拒絶している”わけではなく、“壊さない”ために選んで黙っている。
そして遥の過去や痛みを想像した上で、信じるしかできない自分自身の限界と静かに向き合っている――という描写です。
んー……ズレてるっちゃズレてるかぁ……え?不器用ってこういうことじゃない?違う?
ま、相手は遥だし普通?の対応だと難しいってことで、この日下部ってキャラができたのだけども。
読んでてムズムズするかもしれませんが汗