テラーノベル
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この日車で会社に来ていた壮馬は、車を会社に置いたままタクシーで帰る事にする。
タクシーに乗ってすぐに、花純は目も開けられない状態になっていた。
(酒に弱いのか? この前うちで飲んだ時はたしかワインをグラス半分くらいだったか?)
壮馬はそんな事をぼんやりと考えていた。
花純は次第に頭を壮馬の肩にもたれかけると、スース―と寝息を立て始めた。
(しょうがないな……)
壮馬はそう思いながら、その可愛らしい寝顔を見つめる。
花純の左手が壮馬の膝の上に無防備に置かれていた。
壮馬はその手を握ると、親指で手をそっと撫でた。
タクシーがマンションに到着すると、
「花純、花純…」
壮馬は声をかけてなんとか花純を起こす。
フラフラ歩く花純の腰をしっかりと支えながら、二人はゆっくりとエントランスへ向かった。
「高城様、お帰りなさいませ」
コンシェルジュに声をかけられた壮馬は「ただいま」と挨拶を返すとエレベーターへ向かった。
そんな二人の事をコンシェルジュは微笑んで見守っている。
部屋へ着いて玄関へ入ると、壮馬は花純をベッドへ連れて行こうとした。
しかし花純はふらふらしながら自分の部屋の前を通り過ぎると更に奥へ進む。
そして扉が開いていた壮馬の部屋を覗き込んでから、
「ベッド……」
そう呟くと壮馬の部屋へ入って行った。
壮馬がびっくりして慌てて追いかけると、花純は奥にある壮馬のベッドへ行きそのままバタンと倒れ込んだ。
(ま、マジか?)
こんなに動揺したのはいつ以来だろうか?そのくらい壮馬はうろたえていた。
今まで壮馬は何度も美女たちをベッドへ押し倒してきた。
そして中には自ら進んでベッドへ行く女もいた。
しかしどんな場面でも壮馬が動揺する事はない。
しかし今の自分は明らかに動揺している。なぜか心臓のドキドキが止まらない。
壮馬は高鳴る鼓動を押さえつつ、ゆっくりとベッドへ近づいてみた。
すると、既に花純は熟睡していた。
横向きで横たわる花純の寝姿は、いつものあどけなさは消え失せ女の色香を漂わせていた。
少し開いた唇、そしてブラウスの襟から見える首筋が妙に艶めかしい。
この日花純はパンツを履いていたが、それがもしスカートだったら壮馬は平常心ではいられなかっただろう。
(ま、まずいな……)
とりあえず壮馬はそっと花純に布団をかけると、一旦シャワーを浴びにその場を後にした。
翌朝、花純は鼻をくすぐる良い香りで目覚めた。
この香りはハーブだろうか? という事はここは長野の実家?
不思議に思った花純は、うっすらと目を開けてみる。するといつもは左にある窓が右にあった。
(アレ?)
違和感を感じた花純はもう一度よく見てみる。
どうやらいつもとは違う部屋で目覚めたようだ。
びっくりした花純は、一度目を閉じて昨夜の記憶を手繰り寄せる。
昨夜は確かミーティングの後、プロジェクトのメンバーで居酒屋へ飲みに行ったはずだ。
途中の会話までは覚えている。
しかし、記憶はそこで途切れていた。
そこで花純はハッとした。
(ここってもしかして……?)
そろりと首を動かすと、ベッドの足元側に書斎が見える。
間違いない、この部屋は壮馬の部屋だった。
花純は慌ててすぐに起き上がろうとした。しかしなぜか身体がピクリとも動かない。
そこで初めて横を見る。
するとそこには、無精ひげがうっすらと生えた壮馬の顔があった。
(ひっ!)
花純は思わず声にならない声を上げるとなんとか起き上がろうとする。
しかし身体は動かない。
そこで花純は落ち着いて今の状況を分析しようとした。
花純が動けない理由は、壮馬の左手が花純の左肩を抱いている事。
そして壮馬の右手が花純の腰に巻き付いているせいだった。
つまり今花純は壮馬にしっかりと抱き締められていたのだ。
その事実に気付いた花純は、さらにパニックになる。
(どうしよう……)
急に居心地の悪くなった花純は、腰をもぞもぞと動かしてなんとか壮馬の腕の中から逃れられないかと試してみたが、状況に全く変化はない。
その時壮馬が、
「う……ん」
と声を漏らしてさらに花純を引き寄せた。
気付くと壮馬の唇が花純の鼻に触れている。
(絶体絶命の大ピンチだわ……)
花純が動けば動くほどさらに壮馬が密着する。
だったら動かなければいいのだ。
そう思った花純は『動かない作戦』を実行する事にして、しばらくそのままの姿勢でいた。
すると壮馬も静かになる。
とりあえず花純はホッとした。
その時、実は壮馬は既に目覚めていた。
もちろん花純が起きた瞬間から気付いている。
しかし壮馬はあえて寝たふりをしていた。そしてそのまま花純に色々と仕掛けていたのだ。
花純の男性経験はゼロだ。
つまりこういったスキンシップには慣れていない。
そこで壮馬は今のこの状況を利用させてもらう事にした。
もし二人の交際が始まり壮馬がいきなり花純にスキンシップを求めても、不慣れな花純の事だ、突き飛ばされかねない。
いきなり迫ると花純も身構えてしまうだろうから、
あえてこの状況を利用し花純にスキンシップに慣れてもらおうと考えたのだ。
コメント
4件
壮馬さん寝たふり作戦で花純ン抱きしめて楽しんでる🥰
花純ン…昨夜お店を出る前からキオクニゴザイマセン🤭吸い寄せられるように壮馬さんのベッドに寝て、壮馬さん狼狽えたのよ〜🤣きっと花純ンの本能が壮馬さんのベッドを選んだのよね?
花純ちゃん、酔いつぶれて 何と❗️壮馬さんのベッドでスヤスヤ Zzz.....♥️キャア-🤭 獲物を目の前にして お預けの壮馬さん、お気の毒に.....😅でもよく耐えた~👍️エライ❗️😁🤭 頑張ったご褒美に⁉️朝のスキンシップ💏♥️ ちょっとくらい良いよね❓️😘💕🤭ウフフ.... 花純ちゃんが 早く密着に慣れてくれると良いね~♥️ ねっ❓️🤭壮馬さんっ‼️😁💖