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中也が太宰の生贄になって、同居し始めてからの一寸した日常のお噺。

こうやって仲を深めて行って欲しいなぁと思って書きました(笑)

楽しんでもらえると嬉しいです!

それでは、どうぞ〜っ!↓↓↓








































中也が太宰の生贄になってから──────。


























【妖狐と生贄の朝。】


「ん……」

中也がゆっくりと瞼を開いた。

贄となった中也は、日の出ともに目覚める事から一日が始まる。

目覚めると、隣の布団で眠る太宰を起こさないよう静かに起き上がり、できるだけ音を出さないように布団を畳む。

そして台所へと移動する。

料理の際に袖が邪魔にならないよう、たすき掛けをした。

米を研ぎ始める。

土鍋の中に研ぎ終わった米と冷水を入れ、平にして浸水をさせた。

浸水させている間、中也は野菜を切り始める。

包丁がまな板に接する度に、トントントンっと料理ならではの調理音が台所に響く。

鍋に切った野菜を入れ、火を通し、柔らかくなった所で味噌を入れた。

美味しそうな匂いがふんわりと漂う。

中也は味見として一口飲む。

「……ん、佳い感じだな…」

そう云うと、中也は二つ茶碗を持って来て味噌汁を入れた。

用意された二つのお盆の上に乗せる。漬物を取りに、中也は外へ向かった。

玄関から出て、傍に在った壺の上に乗ってる漬物石を退かす。

漬物が入った壺を持って、中也は台所へと戻って来た。

小皿に料理の一品として漬物を添える。味噌汁と同じようにお盆の上に置いた。

浸水が終わった土鍋に今度は火をかける。

時折、蓋を開けて蒸気や泡の状態を確認しながら、中也は沸騰するのを待つ。

「あ、! 沸騰してる……」

そう言葉をこぼして、中也は火の加減を弱くした。中でブツブツとなる音が、徐々に小さくなっていく。

炊きあがると、蓋を開けずに蒸し始めた。

「よしっ………」

そう云って、中也は立ち上がる。籠を持って外に出た。

家の直ぐ近くにある桃の木から、桜桃を数個取る。

籠に入れて、中也は再び台所へと戻った。

「〜〜♬〜♫〜〜〜♪」

中也は鼻唄を歌いながら、桜桃を水で洗って皮を剥き、均等に切る。

食後の後菓子(デザアト)として、お盆の上に乗せた。

二つの茶碗を取ってきて、ホカホカと湯気を立たせ善い匂いを漂わせる出来たての白米を、中也は茶碗に盛り付ける。

そしてお盆に乗せ──────朝食が出来上がった。

「ご飯は出来上がったし……後は…」

中也は寝室の方に視線を移す。

一日の始まりの中で、中也が一番苦戦する所である。




















































***

──────スパアァンッ!!

中也が、障子を勢い良く開く。

音が響き渡るのと同時に、朝日の光が寝室に差し込んだ。

朝の爽やかな風が中也の頬をなぞる。

「ぅうん……」

気の抜けた呻き声が聞こえてきた。

中也は後ろを振り向く。

布団の上に横になっていた太宰は、寝室に入ってくる風が寒かったのか、モゾモゾと掛け布団を動かして自分の躰を包み込んだ。

(ミノムシかよ………)

中也は太宰に呆れた視線を向ける。

中也が贄になってから二三日は、騒音と朝日の光と肌寒い風で太宰を起こせていたが、今では全くの無意味となっている。

「はぁ……」

一つ溜め息を付いて、中也は太宰に近付いた。

全力で掛け布団を太宰から引き剥がす。

「んーぅ……」

風を遮るバリケードが無くなり、大宰は肌に当たる風の寒さに一瞬眉をひそめたが、九つの尻尾で躰を包み込んだ。

尻尾が躰を温め、やがて大宰は静かに寝息を立てる。

「…………………………」

然し今度は中也が眉をひそめた。

掛け布団を引き剥がして唐突の寒さで太宰を起こそうとしていたが、尻尾を布団代わりにすると云う策で、一週間で克服された。

中也は地面に膝を付いて、静かに太宰に近付くと、耳元でコソッと云う。

「手前の朝食作ってやらねェぞ」

其の言葉に、少しの沈黙が生じた後、

「もう作ってあるでしょ?」

大宰は呟くように中也に云った。

然し結局大宰は起きない。流石の中也も等々頭に来始める。

「はぁ……俺の朝食食べる為に一生懸命起きてた手前は何処に行ったンだか……」

「別に私が起きなくても中也、私の分まで朝食作って呉れるだろう?」

太宰の言葉は或る意味『中也を信頼している』に中るものでも在るが、本人は気付かない。

中也は再び溜め息を付いた。

「ンじゃあ昼飯抜きな」

そう云って中也は立ち上がり、朝食をとる為にお盆が置かれた机の方へと向う。

其の言葉に、太宰の耳がピクリと動く。

大宰は呻き声を上げながら、ゆっくりと起き上がった。

「中也の………お昼御飯、は……食べる…………」

目をこすりながら、大宰は中也の後に続く。

中也が溜め息混じりの息を吐いた。

恐らく此の方法も、後数週間したら太宰に効果はなくなるだろう。








中原中也・最近の悩み──────太宰が一回で起きない事。


























































【常世の夏祭り・上】


「中也、夏祭りに行った事あるかい?」

太宰が中也に聞いた。

中也は太宰の唐突な質問に、目を丸くして瞬きをする。

「…………いや、行った事ねェ……」

如何にか質問に答えた。

其の言葉に、ふふっと微笑んで太宰が云う。

「なら今日の宵に────私と一緒に行こう」

嬉しそうな表情で太宰に、訳が判らない中也は再び目を丸くした。













































***

「なァ、そろそろ云った方が佳いだろ?日も暮れてきたし!」

楽しみなのかキラキラした表情で、準備万端の中也が太宰に聞く。

太宰と云うと、丁度着物を着終わった所であった。

「そうだね、じゃあそろそろ行こうか」

小さく微笑んで、太宰が云った。

「っ!おう!」

中也の表情がパアッと明るくなる。中也は太宰の手を引っ張りながら、庭に出た。

「それで太宰?夏祭りは何処でやってンだ?」

太宰の方に振り向いて、中也が云う。

「そう簡単には行けないよ」太宰が中也に云った。「きちんと準備が必要だからね」

「……準備?」

その言葉に中也は首を傾げる。

「ふふっ…」

太宰が小さく笑みをこぼした。

そして。





















──────チュッ





















大宰は地面に膝を付いて、中也が首に掛けている青い宝石の首飾りに優しく接吻をした。

「ぇ、は?」

中也が口先から声をこぼす。

首飾りに柔らかい光が宿った。

刹那、首飾りが先程の何倍もの強く青白い光で、中也の躰を包み込む。

「な……」

その現象に、中也は目を見開いた。

太宰がクスリと笑みをこぼす。立ち上がって、中也に云った。

「此れから行く夏祭りは妖怪しか居ないのだよ。だから人間が紛れ込んでるってバレると面倒になる、食べられちゃったりね……」太宰が中也に説明する。「だからこうして私の妖力を君に纏わせる。そうする事で、君が人間だとバレにくくなるのさ」

そう云って、大宰は首飾りを指差した。

「成程な……」

中也が呟く。

ニコッと太宰が嬉しそうに微笑んだ。

太宰が中也に手を差し伸ばす。

「____…」

目を丸くした後、中也も嬉しそうに微笑んで、太宰の手を掴んだ。

太宰が左手を前に出す。

風が巻き起こり、太宰の掌の前に収集された。

─────パチッ───────パチパチッ──

火種が跳ねるような音を立てて、光が生じる。

秀麗で異端な其の光景に、中也が目を丸くした。

「……凄ェ…………」

中也は思わず声をもらす。

そして其の光は徐々に増えていき、やがて扉の形に変化した。

「コレは……?」

太宰に中也が聞く。

「常世の夏祭りの入り口だよ」

中也の質問に太宰が答えた。

(常世……?)

心中で、中也は首を傾げる。











「──────それじゃあ、行こうか中也」










振り向いた大宰は、中也の手を優しく引っ張って光の中へと這入って行った。


妖狐の私と生贄の君

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コメント

2

ユーザー

今回も最高でしたぁぁ!続き楽しみにしてまぁぁす!!

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