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月遊び

第46話 - 月の指輪13

181

2024年07月29日

#恋愛

#大人の恋愛

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#第3回テノコン

#ハッピーエンド

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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木製のアンティーク風のショーケースを覗くと、月や星をモチーフにした上品なジュエリーがいくつも並んでいた。

それを目にした美月は「素敵！」と言って覗き込む。

美月の反応を見た海斗は、

（やっぱり）

と思わず微笑む。

すると男性スタッフが、

「よろしかったら、実際に身に着けてみてはいかがでしょうか？」

と提案したので、海斗はお願いしますと言ってショーケースから指輪を出してもらった。

美月が気に入ったのは、繊細な彫刻が入った三日月がダイヤモンドを抱え込むようなデザインの指輪だった。

三日月の部分に入った彫刻は、なんとなくアンティークジュエリーのような品格がある。

「もしサイズが合わなくても、お直しできますので」

サイズが合わなかった時の事を考慮してスタッフは言った。

でも美月はこう思っていた。

（海斗さんとの出逢いが運命の出逢いだとしたら、私にぴったりの指輪があるはずよ）

まさにシンデレラのガラスの靴と同じだ。

だから美月はサイズ直しの事は考えずに、並べられた指輪を端の方から一つずつ試してみる事にした。

しかし五つほどはめてみたけれど、ぴったりの物は見つからない。

それを見ていた海斗は、美月がダイヤのサイズが小さい物ばかりを選んでいる事に気づき、あえて大きな石がついた指輪をはめてみるように言った。

すると、なんとその中に、美月の指にぴったり合う指輪が見つかった。

それを見た男性スタッフは、

「あつらえたように、ぴったりでございますね」

と笑顔で言う。

海斗もその指輪のダイヤが１カラット以上のかなり質の良い物だったので、気に入ったようだ。

「これにしたら？」

「でも、私には高価すぎるかも」

美月は先程その値札をちらっと見て、あまりの高額さに驚いていた。

「大丈夫だよ。俺の考えていた予算内だから」

海斗はなんでもないといった風に言う。そして続けた。

「俺は、この指輪を美月にはめて欲しいと思っているんだよ」

「うん」

「じゃあ、これでいいんだね？」

海斗は最終確認でもう一度美月に聞いた。すると美月が嬉しそうに、

「はい」

と答えたので海斗はホッとした。

そんな二人を男性スタッフはニコニコと見守っていた。

「ではこれをお願いします」

「ありがとうございます。ではお会計はお持ちしますので、そちらのソファーにおかけになってお待ち下さいませ」

スタッフは二人を窓際のソファーに案内した。

美月はこの店が気に入った。

月や星のモチーフがふんだんにあるし、探してみると若い人でも買えるようなリーズナブルな値段の物もいくつかあった。そしてそのデザインもどれも素敵だった。

店のスタッフも感じが良く、日頃から丁寧な接客をしている様子が伺えた。

海斗が有名人だとわかっても態度を変えない所にも好感が持てた。

美月は嬉しくて目がキラキラと輝いていた。たった一つの運命の指輪に出会えた嬉しさではちきれんばかりの笑顔だ。海斗はそんな美月を見て抱きしめたい衝動にかられる。

その時スタッフが会計伝票を持ってきて言った。

「裏にイニシャルの刻印もできますがいかがいたしますか？」

隣の部屋が工房となっている為、すぐに仕上がるとの事だった。

「入れてもらう？」

「うん。入れて欲しい」

それを聞いた海斗は「『K to M』でお願いします」と頼んだ。

刻印をしている間、女性スタッフがコーヒーとマカロンを持ってきてくれた。二人がコーヒーを飲みながら購入した指輪の話をしていると、店の奥からグレイヘアの紳士が近づいて来て二人に声をかける。

「本日は当店でご婚約指輪をご購入いただき誠にありがとうございます。私、この店の創業者の孫で社長をやらせていただいております樋口と申します」

樋口は海斗に名刺を渡した。

「私どもの指輪をお選びいただき身に着けていただく事によりお二人が永遠に幸せでありますよう、スタッフ一同心からお祈り致しております」

樋口は優しい笑顔を浮かべながら丁寧にお辞儀をした。

「ありがとうございます。彼女が月が好きなものですからこちらのホームページを見た時にピンと来ました。また何かの記念日には連れて来ようと思いますので、その際にはよろしくお願いします」

「ありがとうございます」

樋口は再度深々とお辞儀をした。

その時、先ほどの男性スタッフが刻印が済んだ指輪を丁寧に包装して持ってきた。

「大変お待たせいたしました」

海斗はその袋を受け取った。

その後、二人は社長とスタッフに見送られて店を後にした。

スタッフがドアを開けてくれたので、二人は笑顔で会釈をすると手を繋いで店を出た。

その時二人を待ち構えていた人物が表にいた事に、二人は全く気付いていなかった。