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「ちょっと……! 私にデリヘル嬢をやれって事!?」
「前科持ちの女が、まともに金を稼ぐとなると、身体を売るくらいしかないだろ? あ、安心していいよ。相手の男は、大手企業の役員、しかも次期社長だし」
(それにしても、この拓人という男は、何者なんだろう?)
不意に昨日から思っていた疑問が、優子の中から湧き上がる。
男が答えてくれるかどうか、分からないけれど。
彼女の万引きを未遂で阻止したかと思えば、デパートで高級な化粧品を一式買ってくれたり。
身体を売ってこい、と突拍子のない事を言ったり、彼女はワケが分からずにいた。
「ねぇ。それよりもアンタ…………本当に何者なの?」
「俺? ああ、そういや言ってなかったな。俺は女性専用風俗店『Pleasure Garden』のオーナー。以前は……ホストもやってたし、男娼もやってた」
「うわ……」
優子は、嫌悪感を露わにしながら、ボソっと呟く。
「店は、ワケあって最近は留守にしてるけどな。時々、知人に女を斡旋したりしてる。俺の知人や友人、金持ってるヤツばっかりだからさ、街の風俗は行きたがらないんだよなぁ……。まぁ……あんたの場合は、デリヘル嬢ってよりも、デリバリー娼婦、みたいな?」
「…………デリヘル嬢も娼婦も同じじゃない?」
飄々と言葉を返す男に、彼女は小さく言葉を漏らしながらも、背筋が凍り付いていく。
と同時に、拓人の女の扱い方や、セックスが上手いのも、話を聞いて納得した優子。
「話を元に戻すけどさ、ここに住む条件は、客の男が払った報酬の五割を、俺によこす事。当然だよな?」
「…………半額ピンハネって事ね」
「ピンハネって、酷い事言うなぁ。この部屋に住んでるのは俺だよ? 一文なしのあんたに、仕事と住む場所を提供してやるって言ってんだよ? 部屋代を払うのは当たり前だし、感謝してもらいたいなぁ」
「でも身体を売る──」
「…………ごちゃごちゃうるせぇな」
男は、急に地鳴りが響きそうな低い声音で、彼女の言葉を退ける。
「っ……」
「さっきも言ったよな? 元犯罪者の烙印を押されている女が、まともに金を稼ぐとなると、身体を売るしかないって」
拓人に威圧されて言われてしまうと、優子は何も言えない。
自分は前科持ちで、金もなければ、住む場所もないのだ。
「あ、残りの半額は、あんたが持ってていいよ。好きに使えばいいんじゃん?」
男は立ち上がり、ベッドルームを出ると、財布を手にして、再び彼女の隣に腰掛けた。
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