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「他にまだ気掛かりな事はあるか?」
「…………ない」
「なら……」
不敵な表情から真剣なものへ変わると、侑は繋いでいる手を更に握り締める。
「瑠衣。プロポーズの返事…………聞かせてくれないか?」
いよいよ彼に返事をすると思うと、瑠衣の鼓動がバクバク打ち鳴らされ、心臓が壊れてしまうのではないかと思ってしまう。
あまりにもドキドキし過ぎて、ベッドサイドの心電図モニターが再びアラート音を鳴らすんじゃないか、と思った瑠衣は、横目でチラリと見やった。
「私…………侑さんの奥さんに……侑さんの家族に…………なり……た……い……」
瑠衣の返事を聞き、彼が今まで見せた事のなかった満面の笑みを浮かべた。
「瑠衣……ありがとう。退院したら…………入籍しよう」
侑が瑠衣のこめかみに唇を寄せると、彼女は彼を見上げた。
やっと瑠衣に自分の秘めていた想いと愛を言葉にした侑だったが、彼女はまだ彼を上目遣いで見つめている。
「瑠衣? どうした?」
濃茶の瞳を潤ませ、切ない表情を映し出しながら、ポツリ、またポツリと言葉を零した。
「…………侑さん。さっき言ってくれた事…………もう一度……聞かせて……」
「何をだ?」
「それは…………侑さんが考えて」
幼さが若干残る瑠衣の顔立ちを見ながら逡巡すると、侑は穏やかな眼差しを彼女へ向けた。
「瑠衣。愛してる。誰よりも…………お前だけを」
甘美に響く侑の低く渋い声に、瑠衣の心が愛しさに打ち震え、大きな瞳が揺らいでいるように見える。
彼女の顔に浮かぶ小さな花弁に、彼が唇をそっと重ね、覆い被さるように小さな身体を抱きしめる。
侑にとって、瑠衣は数奇な運命で出会い、四年の時を超えて再び巡り会った大切な女。
先ほどまで天に召され掛けた愛しい女が、ここに舞い戻ってきてくれた事、瑠衣に想いと愛を伝え、プロポーズもできた事。
侑はその事に感謝しながら、抱きしめる腕に力を込めた。