テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
俺たちは領内にある、冒険者ギルド、エルシア支部へとやって来た。街の中はたくさんの冒険者で溢れかえっている。ここはルカ兄さんが投資している企業の1つでもあるんだったか。クラリスが重厚な木でできた扉を開け、俺たちはギルドの中に入る。
「おおっ、まさにって感じだな!」
「変わっていませんねぇ⋯⋯あそこが受付です」
そう言ってクラリスは、忙しそうに働く女性のいるカウンターを指さす。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどのようなご要件で⋯⋯って、クラリスさん!?」
「久しぶりですね、シエラ」
なるほど、この女性がクラリスの知り合いか。クラリスは凄い冒険者だったようだし、人脈も広いんだろうな。
「本当にお久しぶりです! もぅ、あの後突然いなくなったと思ったら⋯⋯別れの挨拶くらいはしていってくださいよ! それで? 今日はなぜここに来たんです? また冒険者になってくれるとか!?」
「いえいえ、冒険者になるのは私ではなく、アステル様です」
「アステル⋯⋯様?」
そう聞き返しながら、シエラという受付嬢はカウンター越しに俺を見下ろす。その後は俺とクラリスを見比べていた。
「えっと⋯⋯クラリスさんの紹介なら、疑う気もありませんが⋯⋯まずは、階級を測定させてくださいね」
そう言うとシエラは、水晶球を取り出して俺に手渡した。へぇ、これで測定ができるのか。見た目はただのガラス玉なのに、どういう理屈なんだろう?
どれ、測定しつつ仕組みを調べるか⋯⋯ん?
「あっ、やっべ」
ピシリとヒビが入る音がし、俺は慌てて手を離す。もしかして、入れた魔力が多すぎたか? ギリギリ壊れてなかったようだし、これはセーフ。結果は――。
魔力︰A 筋力︰E 俊敏︰E
体力︰F 頑強︰F 総合︰E
「ダハハハハハッ! 総合がEだってよう! 新米の雑魚でもDはいくだろ!」
ギルドの酒場の方から野次がとんでくる。別に俺は気にしないんだけどなぁ。と思ったら、シエラが何かブツブツと唸っている。
「いえ、凄いですよ、この結果は⋯⋯! 魔力値がAだなんて、公爵家なら当たり前と思われがちですけど⋯⋯それでも、さすがに12歳の子供がこの数値を出すだなんて! 熟練の魔術師でも、Bがやっとなのに⋯⋯! これは恐らく、『黒銀の妖』に匹敵するほどの、冒険者の逸材!!」
「「「く、黒銀の妖ぃ!?」」」
「あのバケモンとおんなじレベルになるかも知んねぇだと!?」
「あの⋯⋯鬼のような強さで一気にA級にまで上り詰め、その後すぐに冒険者を辞めちまったとかいう⋯⋯あの伝説の!?」
ええぃ、外野が煩いな。俺はそんなのになるつもりはないぞ。
「はぁ、まだその二つ名は残っていたのですね⋯⋯」
ん? もしかしてクラリスって⋯⋯。
「おうおう、可愛い嬢ちゃんがいるじゃねぇか。そんなガキンチョなんて捨てて、俺と一緒にダンジョンデートと洒落込もう⋯⋯ヒッ!?」
クラリスの手を掴もうとした冒険者の男が慌ててのけぞる。見ると、頭の毛が半月のようにスパリと切られていた。モヒカンよりオモロイかもな⋯⋯。
「アステル様への不敬は許しませんよ?」
「フフッ、クラリスさんが、その『黒銀の妖』ですよ〜!」
やっぱりか。なんとなく察していたけど、これにはみんなビックリだろうな。周りの冒険者たちは、顔を見合わせてザワザワとしている。
「そうだ。俺、ダンジョンに行きたいんだけど。モフと一緒に戦いたいんだ」
本当はモフの戦闘力とかを見たいんだけどな。
「それでしたら、私がついて行って⋯⋯」
「あー、ごめんなさい、アステルさん、クラリスさん! ダンジョン攻略には、B級冒険者が最低1名は必要なんです! クラリスさんがまた冒険者になっても、再復帰はC級スタートの決まりなので⋯⋯」
ありゃ、残念。また今度、抜け出すしかないか⋯⋯?
「フッフッフ⋯⋯お困りのようね!」
そう言って現れたのは、濃いめのピンクの髪を三つ編みにした、短弓を背負った少女。そっか、エナもここの冒険者だって言ってたっけ。
「はぁ、やかましいのが増えましたね⋯⋯てゆーか貴方、『アルカス』とかいう人を探しに行っていたのでは?」
「それなー⋯⋯ぜんっぜん見つからないのよさ⋯⋯。アイツならダンジョンにいるかと思って、手当たり次第探してみたけど、なんの手掛かりもないし⋯⋯。ダンジョン攻略しすぎて、そのうちA級になれそうなくらい強くなっちゃったのよさ⋯⋯」
半ば諦めたような表情で、落ち込みながらエナは語る。なんか悪いことしちゃったなぁ。
「よかったじゃありませんか。生存確率が上がりましたよ」
「いやなのよさぁ! 筋肉だけの女になったら、いよいよ彼氏できなくなるのよさ! もぅいいもん! こうなったらダンジョン攻略手伝う代わりに、ルカ様を紹介するのよさ! 絶対お茶会してやるんだかんね!」
結局、ルカ兄さんに迷惑かかってるんだよなぁ。それにしたって⋯⋯。
「クラリスは、思っていた以上に凄い冒険者だったんだな!」
「いえいえ。修行のため、師に言われての加入でしたし⋯⋯あのときはまだまだ未熟でしたよ」
クラリスが、未熟⋯⋯? ちっとも想像できないな。
「それに⋯⋯仕留め損なった連中もいました」
「ええっ、クラリスが!?」
「はい。その名は⋯⋯『ノクス協会』」
クラリスが指をさす先には、6人の似顔絵と指名手配者の文字が書かれていた。
「あーっ、疲れた〜」
俺は屋敷に帰って、ベッドに勢いよくダイブした。カグアがモフの毛から出てきて、俺の隣に寝そべる。
「俺は暇すぎでしたぜ⋯⋯ふわぁ」
「フォフン⋯⋯」
大きく1つあくびをすると、カグアはフワフワとモフの腹の上に行き、2匹ともそのまま眠ってしまった。
今日はいろんなところに出かけたからなぁ。ミオン兄さんのところに行って、冒険者ギルドに行って、エナとダンジョンを攻略して⋯⋯。素材も集まったし、また今度研究するかぁ。
⋯⋯中庭になんかいるんだよなぁ。
何だコイツ⋯⋯魔力が全然ない⋯⋯?
流水武──『水鏡瞳』
存在はあるのになぁ⋯⋯?
今日あんな話を聞いていなければ、普通に見逃していただろうな⋯⋯。俺はギルドで、クラリスに聞いた言葉を思い出す。
「ヤツラはとにかく気配がなくて⋯⋯さらに妙な力を持っていました⋯⋯」
凄いなぁ⋯⋯なんで気配がないんだろうか? しかし、ゆっくり近づいても気づかれるだろうな⋯⋯。
よし、最大出力で⋯⋯無属性中位魔術──『瞬歩』
俺は目に見えないほどの速さを実現させることに成功しつつ、謎の影に声をかけた。
「こんばんは」
「⋯⋯っ!」
ふむ、見た感じ俺より小さいな。なんで夜にこんなとこ来たんだろ。あ、逃げるな。
水属性下位魔法──『水膜』
俺は薄い水の膜を形成し、俺と少女を中心にしてぐるりと囲ってやる。これで簡易的だが、結界に閉じ込めることに成功した。
「⋯⋯仕方ない。子供には使いたくなかったんだけど⋯⋯ごめんね」
そう言うと少女は、着ていた黒いローブを脱ぎ捨てる。うわっ、胸当てと短パンだけって寒くない? ハニートラップ的な⋯⋯?
ズキンッ
肺に、痛み⋯⋯?
見ると少女の背中から、無数の鎖が飛び出していた。1本は俺の張った『水膜』に。そしてもう1本は俺の足に⋯⋯。やっぱり魔力を使ってない。
──聞いたことがある。魔力なしに、こんな事象を引き起こせるのは⋯⋯。
「『異邦人』。お察しの通り、ボクは異世界からの⋯⋯連鎖の異邦人だ」
327
花月夜れん
2,065
柴田
224
#バイオハザード
そまもんた@ペア画募集
621
コメント
1件
あらためて読み返したけど、この回めっちゃ情報量多くて興奮したよ〜!!😳💕 まずギルドでの魔力測定、A出てるのに総合Eってギャップがすごいwww 主人公の魔力特化型っぷりが際立ってて笑った!そしてクラリスがまさかの「黒銀の妖」だった過去にビックリ…!しかもエナ登場でさらにテンポ良くなるし、最後の異邦人との遭遇がめっちゃ不気味で続きが気になりすぎる…!! 「連鎖の異邦人」ってタイトル回収もカッコよすぎるよ〜⋆♡ 次話が待ち遠しいです!!