テラーノベル
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みあが二歳。世間で言う「魔の二歳児」に、ウチの妹は完全進化しとった。
朝から「これじゃなか! ピンクがいい!」って叫んで、お母さんが準備した服を全部投げ捨てる。 ウチが「みあちゃん、お母さん困りよるよ」って言っても、「ヤダ! まきねぇもヤダ!」って火に油を注ぐ始末。 結局、ウチも悲しくなって二人で「えーん!」って大合唱。家の中は朝からカオスやった。
ばってん、そんなみあがピタッと泣き止む魔法の音がある。 それは、玄関のチャイム。
「まきちゃーん、遊びに来たよー」 文くんの声がした瞬間、さっきまで裸で大暴れしとったみあが、光の速さでピンクのワンピースを自分で引っ張り出してきたと! 自分で着れんくせに必死に頭を突っ込んで、「まきねぇ、着せて!」ってバリ可愛い顔して頼んでくるっちゃん。……さっきまでウチのこと「ヤダ」って言いよったやん。
着替え終わると、みあは澄ました顔で文くんの前に。 「ふみぃ……こうかって?」 さっきまでの怪獣が嘘みたいに、甘〜い声で「おんぶ(こうかる)」をおねだり。 文くんが「いいよー」って背負ってあげると、みあはウチに向かってチラッと勝ち誇ったような顔をしたと。
……二歳児の女子力、バリ怖か。 ウチ、将来この子が「ギャル」になったら、絶対勝てる気がせんわって、四歳ながらに悟った瞬間やった。
みあが二歳になって、ウチは四歳になった。 お姉ちゃんとして頑張ろうとは思いよるけど、正直、最近のみあは「手に負えん」の一言に尽きる。
公園に行けば、自分より大きな男の子からスコップを奪い取って、「ウチの!!」って仁王立ち。完全に砂場のボスになっとるとよ。 ウチは後ろで「すいませーん、すいませーん……」って謝り倒して、心身ともにボロボロ。
その日の夜、ウチは決意した。 お父さんとお母さんをリビングに呼び出して、正座して真剣に頼み込んだと。 「お父さん、お母さん。……ウチ、もう一人じゃみあちゃんの相手は無理ばい。早急に家族ば増やして、ウチば楽にしてくれんね?」 四歳児からの、まさかの「業務改善」と「増員」のお願い。 お父さんはコーヒー吹き出しそうになっとったし、お母さんは絶句しとった。
そんな中、遊びに来た文くんが、昔の幼稚園の時の集合写真か何かを見せよった時のこと。 そこに写っとった「文くんが昔ちょっと好きやった子」を見た瞬間、横から覗き込んだみあが、バリ低い声で言い放ったと。
「……この子、可愛くないっちゃもん。みあの方がピンクで可愛か!」
二歳児にして、文くんの元カノ(?)をバッサリ切り捨てる審美眼。しかも自分の方がピンクだから可愛いっていう謎の理論。 ウチの「増員願い」と、みあの「毒舌」。
お父さんとお母さんは、遠い目をして「……やっぱり、もう一人おった方がよかね」って呟きよった。 これが、後に「あお」がやってくる、本当のきっかけになったとか、ならんかったとか――。
あんなに「ピンク!ピンク!」って暴れよったみあが、ある日突然、清楚に目覚めた。 お母さんが準備した白いフリフリのワンピースを着て、鏡の前でポーズを決めよる。 「みあ、清楚やけん。清楚可愛いっちゃもん」 二歳児がどこでそんな言葉を覚えたんか知らんけど、本人はバリ自信満々。中身は砂場のボス(破壊神)のままやけど、見た目だけは「おしとやかなお嬢様」に擬態完了した。
そんな中、文くんが遊びに来ると、みあの「清楚モード」は最大出力に。 服の裾をちょこんとつまんで、首をかしげながら上目遣いで一言。 「ふみぃ……みあ、清楚? 可愛い?」 ……バリ怖か。二歳にして、文くんを落とそうとしよる。ウチも四歳なりに「この女、将来絶対にヤバいギャルになるばい……」って、本能で察しとった。
そして、ついにその日が来た。 ウチの「増員願い」が神様(とお父さんお母さん)に届いたと! 「お腹に赤ちゃんがおるよ」って教えられた時、ウチは「やった!これでみあちゃんのお世話を分担できる!」ってガッツポーズ。
でも横でみあは、お腹をじーっと見て、 「あお……あおも、清楚にする。みあが、可愛くしてあげる」 って、清楚な声で不敵に微笑んどった。
こうして、ウチの切実な願いが叶って、三女「あお」が家族に加わることが決まった。 これが、さらなるクセ強姉妹伝説の幕開けになるとは、この時のウチはまだ知らんとよ……。
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