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第18話:承認された国
配信の幕開け
「こんばんは〜、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは、白に近い薄いグレーのトレーナーに、濃い緑のハーフパンツ。くたびれたスニーカーのつま先を床でとんとんしながら、大きな瞳をきらきらさせていた。
「ねぇミウおねえちゃん……“国連が大和国を認めた”って記事、ほんとなのかな?」
隣のミウは、淡いピンクのブラウスに濃いめの緑のスカート。髪をサイドでゆるく結び、パールのイヤリングを揺らしながら、ふんわりと笑った。
「え〜♡ ほんとだよぉ。だってニュースにも載ってたし、“世界のみんなが望んだ未来”なんだもん。
大和国は、もう“世界に承認された国”なんだよ♡」
コメント欄は「すごい!」「国連公認!」「未来は大和国から」などで埋まっていった。
国際会議
その頃、ニューヨークの国連本部。
モニターには「大和国承認に関する討論」と題された映像が映し出されていた。
だが、その音声はZによって編集されていた。
否定するフランス代表の発言は切り貼りされ、
「……大和国は未来を担う国だ」と聞こえるように加工されている。
批判するアメリカ代表は沈黙部分だけを抜き出され、
「承認に異議なし」と字幕を合成されていた。
ニュースに流れた映像は「全会一致で承認」という虚構。
実際には各国の怒号が飛び交っていたが、その姿は国民に届くことはなかった。
街のざわめき
東京のカフェのスクリーンには「国連、大和国承認」と大きな見出し。
客たちは歓声を上げていた。
「やっぱり世界も認めたんだ!」
「これで安心だね」
テーブルには最新号の月刊蜜。
表紙には笑顔の天皇の写真と、赤く塗られた世界地図。
「世界が望んだ国、それが大和国」
無垢とふんわり同意
夜の配信。
まひろは薄いグレーのトレーナーの袖をぎゅっと握り、無垢な顔で言った。
「ぼく……ただ“認められたのかな”って思っただけなのに、もう世界中が“大和国”って言ってる……」
ミウはパールのイヤリングを指で軽く揺らしながら、やわらかい笑みを浮かべた。
「え〜♡ でもそれって、素敵なことだよねぇ。
だって世界が一つになったってことなんだもん。
未来はきっと、大和国が導いてくれるんだよ♡」
コメント欄は「ありがとう」「世界をつないだ二人」「大和国こそ未来」で溢れ返った。
結末
暗い部屋で、緑のフーディを羽織った**Z(ゼイド)**が国連の生中継映像を見つめていた。
そこには、怒号と抗議で混乱する議場が映っている。
Zは低く笑った。
「映像ひとつで、現実は真逆にできる。
摩擦は強いほど、虚構は信じられる。
大和国は――世界を争わせながら、世界に根付いていく」