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少年死刑囚69

【第7話】理不尽な『死』に予告はない

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2021年10月23日

#ホラー#グロテスク#殺人

「XX年。高層マンションの15階から、

ひとりの男児が投げ落とされました。

それからXX年には、監禁された数名の男女が、

電気による拷問と虐待によって、

無残にも命を奪われました…。」

神妙な顔で事件の概要を淡々と語る水鶏(くいな)。

しかし――。

「ここでは、被害者の痛みを体験しちゃおう~!」

次の瞬間、水鶏は舌をペロッと出して、

裏ピースを決めるのだった。

すると、その様子を呆然と眺めていた受刑者達が、

一斉に目を剥き、モニターに向けて石を投げつけ始めた。

「なにが体験よ!ふざけないで!」

「こんなの死ねって言ってるのと、ほとんど同じだろーが!」

それを水鶏が心底呆れたといった様子で切り捨てた。

「はぁ?なに堂々と戯言言っちゃってくれてんの?

つーか、自分達の立場忘れてない?」

「そもそも被害者の痛みって知ってる?

私はそれをアンタ達に届けたいだけ。

蜘蛛の糸のような細い希望を手にするか、

真っ逆さまはアンタ達次第じゃね?

それで生まれ変われるなら、登る価値があるでしょーが!」

「でも…こんなのイカれてる。」

ブツクサと文句を零しつつも、

水鶏の迫力に押されて、

石垣に次々と手を伸ばす受刑者達。

その様子を静かに見つめていたあとりが、

累(るい)に視線を投げかけた。

「蜘蛛の糸、つかむ?」

「…ああ。でも、カンダタになるのだけは勘弁だけどな。」

あとりに頷き返し、

石をがっしりとつかみ体を持ち上げる累。

それに続いて、鶫(つぐみ)や雲雀(ひばり)達も石垣を登り始めるのだった。

※  ※  ※

蒼空に吸い込まれるようにそびえる石垣。

その根石から天端石までの距離は、

せいぜい20メートルほどでしかなかったが、

隙間なく組まれた石は、

石垣にしがみつく累や受刑者達の握力やスタミナを、

容赦なく奪い続けていた。

「はぁっ…はぁ…!みんな…大丈夫か?」

どうにか力を振り絞り、即席チームの面々を目で追う。

真っ先に返事を寄越したのは、涼しい顔の雲雀だった。

「うーん、ちょっと限界かも…。」

それにあとりが無表情で続く。

「キミが落ちたら婚約者も…グシャッよ?

だって、すぐ真下にいるんだから。」

「ふふっ、その時は天国で式を挙げることになっちゃうね♪

でも、そうしたほうが手っ取り早いかな?

だって神様に直接誓えるでしょ?

ふたりが永久に愛し合うってことを…。」

「(なにを楽しそうに語ってんだよ…。

つーか華奢なくせに、雲雀も鷹巣(たかす)も体力あるな。

俺と似たようなのは…鶫だけか?)」

「ダーリン…まってぇ~!

はぁっ…はぁっ…!うぅ…こんなのマジ最悪だよぉ~!

だって…下でいっぱい人が死んでるもん~!」

鶫の声を合図に全員が同時に地上に視線を落とす。

するとそこには、足を複雑骨折している受刑者や、

絶命している受刑者が重なり合うようにして倒れていた。

「ひっ…あううっ…。し、死にたくない…死にたくない。」

「アイツ…さっきの強姦魔だよな?

うっ…足と手が変な曲がり方してるぞ。それに内臓が…。」

今にも飛び出さんばかりに見開かれた眼。

そこから涙と血が、とめどなく流れ落ちている。

そしてグチャグチャに混ざった肉の塊から、

骨の断片と共に、ホカホカと湯気を立てる

ピンク色の臓物が溢れ出しているのが視認できた。

「ふふっ♪婦女暴行好きの森田くん…死んじゃうね。」

「うぅ…あーし、あんな風になりたくないよ~!」

「だったら、登るしかねーだろ!ほら、あと少しだ!」

累は励ましの言葉を投げかけ、

石垣の頂上に手を伸ばした。

しかし、その時――累の指先が鉄線に触れ、

身体に高圧電流が流れ込んだ。

「あぐっ…うぅ…!」

激痛と共に全身が焼けるような感覚が駆け巡り、

累の意識が消し飛んだ――刹那。

「…木葉梟(このはずく)くん!」

煙をあげながら石垣から離れてゆく累の腕をあとりが掴み、

どうにかその体を支えた。

「くぅぅっ…!」

それを認めた鶫がヒステリックに声をあげる。

「ちょっと!ヤバイんじゃないの!」

しかし雲雀は表情を崩さない。

「なるほど、人が落ちてきた理由は、電線のトラップだったんだ。 」

「ダーリン!落ち着いてる場合じゃないって~!」

クールな眼差しで状況を把握する雲雀と、

筋力が限界を迎えていることも忘れて取り乱す鶫。

そんなふたりの声に反応するように、

累が薄っすらと瞼を開く。

「鷹巣…?」

「…気づいた?だったら…早くいっちゃってー!」

最後の力を振り絞り、累の体を石垣に引き戻すあとり。

自分の身に何が起きたかようやく理解した累は、

沈んでいた思考と体を上へ上へと持ち上げ――。

「はぁっ…はぁ…!」

「…ふぅっ…くぅっ…!」

ふたりはもつれ合いながら、地面に倒れ込んだ。

「助かったよ…鷹巣。」

「さっき助けてくれたから…。」

累の体からそそくさと離れ、頬を赤らめるあとり。

遅れて、雲雀や鶫達も登りきる。

だが――。

「木葉梟くん、いい雰囲気のところ悪いんだけど…。」

ここまでずっと落ち着き払っていた雲雀の表情が、不意に曇った。

と同時に鶫の絶叫が塁とあとりの合間を駆け抜けた。

「ルイルイ!あとりっち!後ろ後ろ!」

「…後ろ?」

雲雀達の双眸に映り込んでいたのは、

無事を確かめ合う累とあとりの姿ではなく、

角材を握る、日焼けした浅黒い肌の少年、

『受刑者番号27 難波 了(なんば りょう)』だった。

「落ちて死んでりゃ良かったのによぉ…!」

難波はぼそりと呟くとギリリと角材をかまえた。

「えっ…?」

…シュッッッ!!!

風を切る音と共に、あとりの顔に角材が迫る。

あまりに突然すぎて体が反応しない。

あとりはスーパースロー撮影のように動いて近づく

土や泥で汚れた角材を、ただ眺めていた。

少年死刑囚69

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