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「ああぁっ……何か……きっ……来そう…………んんっ……はうっ……」
奏は眉間に皺を寄せながらも、感じた事のない快楽に顔を蕩けさせていた。
指先の律動を徐々に速めていくと、比例するかのように奏の中心に潜む艶玉が硬度を増し、彼女の声も色を帯びてきた。
「怜……さん…………怖いっ……身体が……変になっちゃっ…………ううぅっ」
「それは、奏の敏感な所を俺に触れられて……身体が気持ちいいと感じている証拠だ。大丈夫だ。怖くない……」
大きなうねりのように襲いかかる甘ったるい刺激に耐え、彼女はベッドのシーツをギュっと握りしめる。
「大丈夫だから。奏……大丈夫だ。俺に……身を委ねていればいい」
怜は奏を見下ろしながら、下着の上から花芯を小刻みに撫で付けた。
「奏。俺だけを見てくれ……」
「っ……はあぁっ……ああっ……何か来る……! こ……怖い……! 変になるぅっ……!!」
怜に指先で導かれながら眼差しを絡ませると、彼は色香に染まらせた瞳の色で、ショーツ越しに奏の珠玉を素早く律動させている。
「何か……来ちゃう……! ああぁっ…………変……に……なっちゃっ——」
身体を撓らせた後、硬直して震えると、奏は事切れたように力が抜け、ベッドに沈み込んだ。
ぐったりとした彼女の身体を抱き起こし、怜は奏の顔を覗き込む。
「イッたようだな」
快楽の残滓を纏わせた表情で、奏は怜に質問した。
「今の感覚が…………イくって感じ……なんですか?」
「奏が言ってた『何か来る』というのはイくって事だ。イッたって事は、奏の身体が最高に気持ちよくなったという事だ」
初めて『イく』感覚を知った奏に、怜は艶髪を撫でながら、唇を寄せる。
「今日は……ここで終わりにしよう」
彼に愉悦の波を華奢な身体に刻み込まれ、奏は惚けた顔を見せながら涼しげな奥二重の瞳を捉えると、覚束ない様子でコクンと頷いた。
彼に導かれて絶頂を迎えたはずなのに、奏の甘い疼きはなぜか収まらない。
物足りない気持ちを、持て余しているような感覚。
(怜さんに触れられるのは、不思議と嫌じゃない。もっと触れてほしいと思うのに……)
奏にも分かっている。
怜が愛撫だけに止めるのは、彼女の過去を踏まえて、という事も。
奏が怜に抱かれたいと思った時に、彼は彼女を抱きたいと思っている事も。
しかし、奏の中にあるキャンドルに灯された欲情の炎が、怜の吐息でフッと消されてしまい、心も身体も寂しいと思う自分がいた。
***
この日以降のデートでも、怜による『淫らなお稽古事』は続けられている。
無骨な手で奏の華奢な身体に触れ、彼女の悦楽を引き出していく。
怜に身体中を愛撫されていても、奏の中に蔓延っていた辛い記憶や、元カレの幻影を思い出す事はなかった。
寧ろ、彼から与えられる愉悦の波に、声を上げて夢中になってしまうほどだ。
奏が怜の指先で絶頂を迎えると、彼はその先の行為をする事はない。
恐らく、『蛇の生殺し状態』の怜は、相当我慢をしているだろう。
それでも彼は、奏の色欲の灯火を、自ら吹き消してしまう。
彼の気遣いが嬉しい反面、奏は申し訳なさと、気の抜けたような寂しさに襲われてしまうのだった。