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「そうだ! 寄りを戻せるまで、西国分寺駅で毎日待ち伏せしちゃおう!」
豪は目を見張ると、すぐに眉根に皺を寄せた。
「正直迷惑だ。やめろ。ってかお前、それ、ストーカーだぞ……!」
「何で? どうして!? こんなに豪の事が好きなのにストーカー呼ばわりされて……何で分かってくれないの!?」
「自分の事しか考えない自己中な女に、俺がまた好きになると思うか? お前から別れを告げられた時はショックだったが、今はお前と別れて良かったと、心底思ってる」
「ちょっと!! そんな言い方しなくてもいいんじゃない!?」
優子の声が店内に大きく響き、客が何人か豪たちの方をチラ見した。
「お前、もっと小さな声で話せ」
アホらしくなり、豪は大きくため息をつく。
優子と話していると、無駄に体力を奪われる気がした。
付き合ったばかりの時は、こんなヒステリックな女ではなかったと思うのだが。
豪と恋人同士だった三年間、猫を被っていたのだろう。
だとしたらそれは、ある意味すげぇな、と思うが。
優子が考えてた通りの言動を取っていた事に、怒りを通して呆れ返っている豪がいた。
グラスの表面には無数の水滴が付き、滑り落ちていくのを見ながら、時間が大分経っている事に気付いた。
しばしの間、豪と元カノの間に沈黙が降りる。
「とにかく、だ。俺は今の彼女が大切だし、将来の事も考えている。彼女は俺の事を第一に考えてくれる女性だ。何度も言うが、お前と寄りを戻す事は一切ない」
重苦しい雰囲気を破るように、アイスコーヒーの残りを一気に飲み干すと、彼は立ち上がり、その場を去ろうとした。
「俺からの話は以上だ。じゃあな。元気でな」
「豪! 待って!」
優子が、すがるように引き止める。
「まだ何かあんのか?」
豪はウンザリした表情で、かつての恋人を見やる。
すると、さっきまで悲しみと怒りの表情をコロコロ変えていた優子が、不気味な笑いを彼に向けた。