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「そんなに今の彼女の方がいいの?」
「何がだ」
怪し気な流し目をしながら、元カノは嘲笑する。
「セックス。それと彼女のカ・ラ・ダ」
豪の怒りの炎に油を注ぐ、優子の言葉。
奈美を侮辱されているようで、目の前の女を殴りたい衝動に駆られた。
彼の手が拳を作り、ギュっと強く握りしめると、僅かに震えているのが分かる。
確かに、豪と奈美はエロ系SNSで繋がり、口淫だけの関係から始まった。
だが、彼女と一緒に時間を過ごすともに、気付くと豪は、ますます奈美を好きになっていたのだ。
偶然とはいえ、身バレして彼女の職場で再会し、真摯に仕事に取り組む姿を始め、表情が豊かなところ、恥ずかしがり屋で真面目な性格、豪の事を第一に考えてくれる。
何よりも、アーモンドアイの目尻を僅かに下げた可愛い笑顔に魅かれた。
身体だけじゃない。
奈美の全てに、豪は惚れ抜いているのだ。
(ここで俺もキレたら、この女と同類になってしまう……)
「いい加減にしろ! お前が俺の事を侮辱したいんだったら、いくらでもすればいい。だが、彼女を侮辱するのは誰であろうと、俺が許さない!!」
冷静を装い、地を這うような低い声音を放つ。
豪は伝票を掴んで会計を済ませ、店の外へ出ると、録音停止ボタンをタップした。
優子が慌てて豪の後を追い掛け、スクランブル交差点で信号待ちしてる時に追いつかれてしまった。
「ねぇ待って!私、本当にあなたの事が好きなの! 今の彼女よりも、私の方があなたの事が好きよ!!」
優子が、彼の腕をギュッと掴む。
「お前さ、人の彼女を侮辱しておいて、マジでいい加減にしろよ? 寄りを戻すつもりは一切ないって何度言ったら分かるんだ?」
あまりの言い草に、豪は冷笑しながら唇を歪めた。
優子に呆れた口調で放った時、どこからか視線を感じる。
彼は、辺りを見回すと、反対側の歩道で、よく見知っている女性が信号待ちしていた。