テラーノベル
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「さて、兵たちの準備は整ったが、どこから手を付けたものか⋯⋯」
エルシア家の中庭では、着々とアステル捜索隊の準備が進められていた。取り仕切るのはルカ、そこにミオンとスノウフェンリルのフラン、ハイベアのモフ、そしてクラリスが加わっている。
「俺は『ノクス協会』とやらがどこにいるかなんて知らねぇぜ?」
「私は何人かと戦ったことがありますが⋯⋯さすがにアジトの場所までは分かりませんね」
ミオンとクラリスはそう答えてから、少し考える。隣ではフランとモフが仲良くじゃれ合っていた。それを横目に見たルカはハッと気づく。
「そうだ! フランとモフに探してもらうのはどうだろうか?」
「おっ、いいな! 確かに、フランは鼻の利く優秀な相棒だぜ!」
「アステル様の匂いがあれば、そのまま追跡できるでしょう」
「よし、決まりだな! これより、捜索隊を動かす! くれぐれも、アステルだけは怪我させないように気をつけてくれ!」
「「了解!」」
「ウォーン!」「フォフ!」
こうして、エルシア公爵家から捜索隊約200名が出動した。そのうち、精鋭が3名と2匹。火山の洞窟に到着するまで、あと1時間⋯⋯。
火山の山頂、火口付近にて。突然現れた巨大な屋敷をみて、ノクス協会の5人は唖然としていた。最初にその沈黙を破ったのはシンである。
「っどう、思う⋯⋯?」
「どうって⋯⋯」
「屋敷、だな⋯⋯」
「それも、凄く荘厳な⋯⋯要塞に近いか?」
「軍事的⋯⋯」
アリス、ディラン、シオン、ミユは率直な意見を言い合い、状況をまとめていく。
目の前にあるのは、石造りの塀、鉄の門、広い敷地。そしてこれまた頑丈そうな屋敷が建っている。窓は最小限、見張り台などもあることから、かなり軍事に使えるであろうことが見て取れた。つまりここに住まうは、常に戦が身近にある者。
「ねぇ、もしかしてこれって⋯⋯」
ミユがそう言いかけた瞬間に、答えは出された。
ギィッと音を立てて、鉄の門が開く。そこから出てきたのは、1人の青年。長く伸びた黒い髪には、青色が混じっている。異邦人特有の魔素による変色。そして、ミユと同じ黒い瞳⋯⋯日本人。一刻も忘れることがなかった、その顔は⋯⋯。
「──ユウ⋯⋯マ?」
5人は歓喜と困惑をないまぜにしたような顔をしながら、そうつぶやいた。なぜ困惑しているのか──その理由を、この時の彼らはまだ理解していなかった。
そして⋯⋯貴族のようなきらびやかな衣服に身を包んだ人物は、ニコリと笑みを浮かべて、ホロリと涙を流した⋯⋯。
「ただいま」
洞窟に1人残った俺は、テーブルの上に座り、足をブラブラとさせていた。カグアがこれを見たら、行儀が悪いと言って叱ってくるだろうな。
⋯⋯暇やなぁ⋯⋯。
そのまま鉄棒で前回りするようにして、机の下を覗き込んでみる⋯⋯ただの気まぐれだ。別に意味なんて⋯⋯。
「ん? なんだ、この紙」
テーブルの下にあったのは、荒々しく破られた跡のある紙切れ。誰にも見つかることがなかったらしい。いつからあるのか。僅かに残っている、魔力の残滓⋯⋯。俺の知らない術式だな。消えかかっていて、読むことはできない。『空間属性』に似ているが⋯⋯。
ひょいと前回りして、紙切れを拾う。1回折られただけの紙切れを開いてみると、これまた荒々しい文字で⋯⋯たった3文字の言葉が書かれていた。
「にげ て 」
「は⋯⋯⋯⋯?」
「ただいま」
「っ⋯⋯! ユウマ⋯⋯!」
5人は涙を浮かべて、ユウマへと歩み寄った。手指は震え、歓喜が表情に、声に、にじみ出ている。
「ユウマ⋯⋯? 髪、伸びたね」
「さすがに半年帰ってなければ、こうもなるか」
「今度切ってあげるよ!」
「それにしてもどうしたの、その服? 凄くキラキラで、まるで貴族⋯⋯」
ディラン、シン、ミユ、アリスが口々に話しかけ、再会を喜んでいる。シオンだけは、一歩下がった位置を保って見るだけだった。そしてユウマも、口を開く。
「ん? あぁ、そうだね⋯⋯取り敢えず、みんな中に入りなよ! 紅茶でも飲んで、それから⋯⋯」
「待て! ちょっと待ってくれ⋯⋯」
シオンが片手で顔を抑えながら、ユウマの言葉を遮った。
「? どうしたの、シオン⋯⋯」
ミユは自分たちとは違う反応を見せているシオンを、心配そうに見つめる。シオンの額には、冷や汗が浮かんでいた。
「いきなりすぎて、頭が混乱してるんだ⋯⋯なぁ、ユウマ」
「⋯⋯なに?」
「いくつか、質問してもいいか?」
「⋯⋯僕を疑ってるの?」
ユウマは先程から、ニコリとした笑みを崩していない。シオンにとっては、それが異質に感じた。
「っまず⋯⋯この、屋敷、というか⋯⋯要塞はなんだ? 突然現れたように思うんだが⋯⋯」
「あぁ、それは僕の『瞬時空間転移』だね。この屋敷は『グレイレーゼ侯爵家』だよ」
──操れるように、なったのか? 一体、どうやって⋯⋯。
驚愕の表情を浮かべる5人を他所に、ユウマは言葉を続ける。
「そして、今日からこの屋敷が、僕たちの新しいアジトさ! どうだい、嬉しいだろう?」
「⋯⋯感想は後で言う。まずは質問を続けさせてくれ⋯⋯2つ目。後ろにいるヤツラはなんだ? 執事、衛兵、メイドまで⋯⋯お前に従ってるのか?」
「そうだよ? グレイレーゼ一族の暗殺に成功して、僕がこの屋敷の新たなる主になったんだ! ここの人たちは、喧嘩の強さで上下関係を決めるからね」
ユウマは笑みを崩すことなく、確かにそう言った。
「「「「「っ⋯⋯」」」」」
さすがにここまでくると、他の4人も警戒心を強めている。いつの間にか屋敷の使用人たちも、門から出てきて、5人を取り囲んでいた。逃げ道がない。
「もう、みんなどうしたんだよ〜。ほら、おいでよ! 久々の再会なんだから⋯⋯」
「ッ最後の質問だ!」
まるで決死の覚悟を決めたかのような声色で、シオンは叫ぶ。うっすらと、気づき始めていた⋯⋯気づいてしまった。震える声で、聞く。
「お前⋯⋯いや、アンタは、誰だ」
「⋯⋯⋯⋯」
「アンタ今、魔力があるよな? それも、魔力補助の器具じゃない。肉体の方に⋯⋯。異邦人には、魔力なんてないんだ。擬似的な魔力の器を作れない限り! ワタシが知る限り、そんなことができるのは、アステル様だけ⋯⋯」
「⋯⋯それがどうしたの?」
「アンタ、いつもの挨拶はどうした?」
「いつもの?」
「ワタシたちのところに帰ってきたら、毎回言っていたじゃないか。どんなに疲れていても、うるさいほどの大声で、ハイテンションで⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
「『たっだいまぁ』ってな⋯⋯」
しばしの沈黙が続いた。5人は警戒態勢を取る。まったく足りないと言っていいが、否定できる材料は揃ったようなものだった⋯⋯明らかに、おかしい。異質で、いびつ。
「あ〜あ、これだから勘のいい小動物は⋯⋯」
ユラリとユウマが動く。髪の青は禍々しくなり、周りの使用人たちの目が変わった。
「『跪け』⋯⋯そして、『動くな』」
「「「「「っ⋯⋯!?」」」」」
5人は、ユウマの発した言葉通りに動く。片ひざをついて、しゃがんだ。それは『呪言』⋯⋯。
「な、んで⋯⋯」
「あー、最初からこうすればよかったな〜。あんな『やかましいヤツ』の演技なんて、この『俺』にできるわけないだろ⋯⋯」
「「お見事な『呪言』で御座います、イルヴァ様!」」
パチパチと拍手をし、口々に使用人たちが褒める。その目は焦点が合っておらず、光の一筋すらなかった。
「『たっだいまぁ!』だったかな? すっかり忘れていたよ。まさかこんなことでボロが出るなんてなぁ⋯⋯ま、結果は変わらん」
コツ、コツ、と歩を進め、『イルヴァ』と呼ばれた人物は、5人を見下ろした。
「ハジメマシテ、かな? 挨拶はこれで合っているのかい? 『ノクス協会』⋯⋯俺の名は『イルヴァ』。残念ながら、お前たちのリーダー⋯⋯ユウマは死んだよ」
──俺が殺したから、な。
Et Nox Accelerat.
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花月夜れん
2,065
柴田
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#バイオハザード
そまもんた@ペア画募集
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コメント
2件
最後のラテン語は日本語訳で「そして夜は加速する。」という意味です
ちょっと待ってめっちゃエモくなった後に絶望のどんでん返し来たんですけど!?!?!?😭💦💦 「ただいま」で涙腺崩壊しかけたその直後に「ユウマは死んだよ」って......イルヴァって誰なん!?しかも呪言で動けなくなったシオンたち5人の絶望感が画面越しに伝わってきてマジで胸が痛い、、、😢 それに机の下にあった「にげ て」のメモもめちゃくちゃ不穏で気になる!これ本物のユウマが残したやつなの!?!?続きが気になりすぎて夜しか眠れないレベルで待ってます、、!!🔥🔥