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色白で滑らかな奏の背中。
今の怜にとってそれは、厳選された素材で作られた、純白の真っ新な和紙のようだ。
誰も触れた事のない最高級の和紙に、これから怜が唇で淫らな華を至る所に描こうとしている。
しかし彼は、唇の動きを止めた。
(もしかしたら……奏は本当は嫌なのか? 嫌なのに、俺に言えないでいるのか?)
不意に怜の中で、そんな思いが過ぎる。
『いっ……やぁ…………恥ずか……し……い……』
先ほど、奏は言葉を途切らせながら、こう言っていた。
もし本当に彼女が嫌がっているのだとしたら、奏の気持ちを無視している事になる。
怜は、様子を伺うように、恐る恐る彼女に聞いた。
「奏。本当は俺にキスマーク付けられて…………嫌だったんじゃないのか?」
奏は鏡越しに怜を見つめ返すと、怜の眼差しは、どこか不安げな色を映し出し揺れている。
「嫌じゃないです。キスマーク付けられたのは初めてだったので……ちょっと驚いただけです」
「そういえばさっき、『嫌』みたいな事、言ってたよな?」
怜が奏の身体を後からそっと包み込むと、首筋に顔を埋める。
「私、過去にあんな事があっても……じっくりと時間をかけて、こういう行為をするのは怜さんが初めてなので……よく分からないですけど……」
奏が怜の腕に両手を添えながら、彼の頭に顔を寄せた。
「怜さんがさっき聞いてきた『嫌』というのは、もしかしたら…………恥ずかしい、の裏返しかもしれません。私が本当に嫌だと思ったら、そこはしっかりと意思表示するので……。それに……」
「それに?」
怜が顔を上げ、奏の眼差しを交差させる。
「私の気持ちを第一に考えながら触れてくれるのも……すごく嬉しいし、キスマークも最初はビックリしたし恥ずかしかったけど、私も怜さんの事が好きだから……すごく…………嬉しい……です……」
尻すぼみに言葉を返してくれる奏に、彼女を抱きしめる腕の力が、更に強くなった。
「奏が、そう思ってくれて…………俺もすげぇ嬉しい」
クールな奥二重の瞳を細めながら、怜は安堵したように口元を綻ばせる。
「奏の背中に……俺の証…………咲かせてもいいか?」
「はい……」
控えめに返事をする奏がいじらしくも可愛い。
普段、気の強い奏が怜の前でだけ『女』の部分を見せる彼女が、どうしようもなく愛しい。
(なら、その滑らかな肌触りの最高級和紙に、『俺だけの奏』という証を、咲き誇らせるまでだ……)
怜は再び白磁の首筋に舌と唇を這わせ、柔肌の乳房を弄り始めた。