テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
38
74
如月 未澄斗
216
#刑事もの
鬼霧宗作
1,117
第8話 女子中学生
橋本優太の拘留期限は、刻一刻と迫っていた。
捜査本部では、焦りが広がっている。
「橋本以外の線も捜査すべきです。」
若い刑事が口を開く。
「証拠が少なすぎる。」
「殺害方法も分からない。」
「人格の問題だけで犯人と決めつけるのは危険です。」
会議室では、別犯人説を唱える声が日に日に増えていた。
「別班を編成します。」
上司の一言で、新たな捜査班が動き始める。
だが。
「俺は反対です。」
坂田だけは首を横に振った。
「橋本優太以外に、この事件を説明できる人物はいません。」
静まり返る会議室。
「証拠がないだけです。」
「真実は、橋本の中にあります。」
⸻
会議が終わると、坂田は一人資料室へ向かった。
机いっぱいに並べられた事件資料。
三人の女子中学生殺害事件。
満島凛一失踪事件。
そして、小学生時代の生活指導記録。
「……。」
もう何度読み返したか分からない。
それでも坂田は、一枚ずつ丁寧に目を通していく。
ふと、赤いペンが止まった。
「……女性。」
藤堂が顔を上げる。
「何かありましたか。」
「被害者だ。」
坂田は資料を並べる。
「小学校時代。」
生活指導記録には、
『女子児童と喧嘩。』
『女子児童への暴力。』
『女子児童への暴言。』
似たような記録が何件も残されていた。
「中学校では。」
今度は事件資料を見る。
三人の被害者。
全員、女子中学生。
「偶然……ですかね。」
藤堂が呟く。
坂田は否定する。
「偶然にしては出来すぎている。」
⸻
二人はホワイトボードの前に立つ。
坂田はペンを走らせた。
【小学生時代】
・女子児童とのトラブル多数
【中学生】
・女子中学生三人殺害
その間に一本の線を引く。
『共通点 女性』
藤堂は腕を組む。
「女性だけを狙っている……?」
「まだ分からない。」
坂田はさらに資料を見直した。
橋本優太の学校。
男子校。
「……。」
坂田の目が細くなる。
「どうしました?」
「橋本は男子校だ。」
「はい。」
「普段、制服姿の女子中学生と接する機会はほとんどない。」
坂田は事件当日の行動記録を開く。
一件目。
下校中の女子中学生と接触。
二件目。
駅前で女子中学生と接触。
三件目。
公園で女子中学生三人と接触。
坂田は静かに言った。
「事件の日だけだ。」
「事件の日だけ、制服姿の女子中学生と関わっている。」
藤堂はハッとする。
「つまり……。」
「制服姿の女子を見たことが。」
坂田はホワイトボードへ新たな文字を書く。
『制服姿の女子』
「人格を呼び起こした?」
部屋が静まり返る。
誰も答えられない。
だが。
今ある情報を並べると、それが最も自然な仮説だった。
⸻
坂田は椅子へ腰を下ろす。
「もし、この仮説が正しいなら。」
「なぜ制服姿の女子なんだ。」
「なぜ女性だけを狙う。」
「何があった。」
藤堂も資料を見つめる。
「理由がありますね。」
「ああ。」
「橋本優太が、制服姿の女子に反応する理由。」
「そこが分かれば。」
「人格の正体にも近づける。」
坂田は三人の被害者の写真を見る。
「この三人には。」
「まだ何か、隠された共通点がある。」
その時、坂田の携帯電話が鳴った。
「坂田です。」
電話の向こうで何かを聞くと、表情が変わる。
「……分かりました。」
電話を切り、藤堂を見る。
「橋本優太のもう一人の親友。」
「鈴木大知。」
「新しい情報が入った。」
「会いに行くぞ。」
坂田は資料を閉じた。
制服姿の女子。
それが本当に人格のトリガーなのか。
その答えは、橋本優太の過去にある。
コメント
1件
美月ゆめかだよ〜🌸 第8話、一気に謎が深まったね…!!「制服姿の女子」がトリガーって仮説、ゾッとするけど確かに辻褄が合いすぎてる…😭💦 坂田刑事の執念がひしひし伝わってきて、橋本くんの過去に何があったのか、もう気になって仕方ないよ…!! 次、鈴木大知に会いに行くって展開、続きが待ちきれない🥺💕 早く最新話読みたい〜!!!