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「俺と結婚してくれ」
「えっ…?」
突然の告白に、私は固まった。
「な、なんで…私を?」
「なんでって…俺がお前を好きになったからに決まってるだろ。
「ええっ!?私何か好かれることしましたっけ?」
「!?、まさか…アレは無自覚だったのか?」
…いや、アレって何…?
驚くサイラス王子を見て、私は口に手を当ててこれまでの自分の行動を振り返った。
すると、サイラス王子は顔を真っ赤にして早口に捲し立てる。
「俺の隣で寝たり、ゴミを払うときにひっついてきたり、
ニコニコ笑顔で花束を持ってきてくれたり、
王子、王子って俺を追いかけてきたりしただろう!?
それに、なんと言ってもお前は俺の家に住んでもいいと言っていたじゃないか!」
「いや、寝たのは王子の看病の疲れが溜まって寝てしまっただけだし、
ひっついたのは肩についたほこりに触ろうと
背伸びをした時にふらついたから
そうなっただけだし、
花束はジャックとユリアの
みんなで作ったものだし、
追いかけるのは王子が逃げるからで、
お嫁になっていいというのは嫁ができないと
愚痴って酔っ払っていた貴方に
「よかったら紹介しますよ?お礼は王子の別荘でいいです」って冗談を…」
「そんな!俺は本気にしてたんだぞ!
お前が住むための家も作ったのに!」
「ええぇえ!?税金がもったいない!
…ていうか、私、王子には嫌われてると思ってたんですけど。」
「なっ…?なに?」
「いや…だって、お洋服がかっこいいですねって言ったらお世辞にしては下手くそだなって
言ってきたじゃないですか、
ユリアには何にも言わなかったのに」
「そ、それは…お前にあんなダサい服見せたくなかったら、その…恥ずかしくて」
「八つ当たりってことですか?」
「違う!照れ隠しだ!
この俺が惚れた女に八つ当たりなんかするかないだろう!
俺はお前がずっとずっと前から好きだったんだぞ!」
「ええ…。」
…そ、そんな。
私が頭を抱えながらひとつひとつを丁寧に説明していった後、
王子は驚いてそう言い返した後、ゆっくりとしぼんでいった。
数時間前はかっこよく召喚獣を召喚していた彼といまこうして膝をついている男が同一人物だなんて、きっと誰も信じてくれないだろう。
…恋のことになると、こんな風になるんだ。
そう思いながら、
私は王子を立たせようと近づいた。
すると彼は、ぽつりと少し乾いた声で呟く。
「…そうか、お前には恋人がいるんだったな、アルベルトという、立派な恋人が」
「!」
あ、その設定完全に忘れてた。
王子の言葉に私はハッとして彼に差し向けようとした手を口に当てた。
「……ルナは、その男のことを好いているのか?」
「えっ、えっと…。」
王子の問いかけに私は目を泳がせて必死に模範解答を考えた。
もし、好きですと言えば私はずっと彼に嘘をつき続けることになるし、
正直に「実はアルベルトという恋人はいない」といえば、捕えられてしまう。
どちらを答えても、私の行き着く先は明るくなさそうだ。
「…。」
「ルナ…?どうしたんだ?」
黙り込む私を見て、何か重い事情があると考えたのかサイラス王子は優しい声で私に近づいた。
私は、彼の手が私の頬にゆっくりと近づいていることに気づかないくらい、
頭の中で必死に答えを考えていた。
頭の中がどうしようの羅列でいっぱいになり、
思考回路がまとまらない中、
ふと、私はあることに気がついた。
カタカタ…
!?
ま、またアルベルトの本が…!