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コメント
6件
ちょうど同期コンビの切ない お話見たかったんです!見つけられて幸せ...... めっちゃ刺さる、、
あ"ぁ"…ッ阿部ちゃ〜ん…泣 ふっかぁ…切なすぎるよぉ゙…
またまた神作やって参りましたよ!!!!!!たのしみすぎるやーん!!!たくさんの神作アリガトね!!!!
『息をする理由』
hikaru iwamoto × tatsuya fukazawa
医師 × 患者
ー
あの日も、空気は少し湿っていた。
季節の変わり目
喘息持ちにとっては最悪のタイミングだ。
深「ひゅ”ーッ、……」
胸の奥がザラザラして、
息を吸うたびに喉の奥が音を立てる。
もう慣れたはずなのに、
苦しさにはどうしても慣れなかった。
吸入器を口にあて、静かに吸い込む。
深「俺、なんでこうなんだろ。」
ふとした瞬間に、そんな考えが頭をよぎる。
人混みに長くいられない。
運動も思い切りできない。
『普通に息が出来るって、
そんなに特別なことなのかな。』
そう思ったりもした。
ー
喘息だと診断されたのは、幼稚園の頃。
「…喘息ですね。」
「気管支がかなり敏感になっています。」
その言葉が、
幼い辰哉の胸に、重く落ちた。
「じゃあ、運動とかもしない方が…?」
「激しい運動は控えた方が良いですね。」
深「……」
帰り道
車の後部座席で、外を見つめながら 呟いた。
深「僕…弱い子になっちゃったのかな、」
返事はなかった。
ただ、助手席の母が小さく
ため息をついたのが聞こえた。
胸の奥が、咳とは別の理由で、痛かった。
ー
深「……」
ソファに背中を預けると、
天井がやけに遠く感じた。
深「…なんで俺だけ、」
誰に言うでもない呟き。
誰も答えてはくれない。
親も医者も、薬も、
全部“当たり前”に症状を処理していく。
でも、自分の中に積もっていく孤独や
苛立ちは、どうにもならなかった。
深「……はぁ、」
少し眠ろう。
明日も病院だ。
また、いつもの医者に
『様子見ましょう』
と言われて帰るだけ。
特別な何かが変わるわけでもない。
深「…おやすみなさい、 」
深「亮平。」
ー
中学2年の春。
空気はまだ冷たくて、
桜の花びらが風に舞っていた。
阿「ねぇ、辰哉。」
深「ん?」
阿「今日の放課後、寄り道しない?」
そんな何気ない言葉に笑って
頷いたのが、 最後だった。
亮平とは、小学校からずっと一緒だった。
同じ喘息持ちで、体育の授業は
いつも並んで見学してた。
吸入器も薬も、全部一緒。
共に苦しみ、共に笑って、
他の誰よりも気持ちがわかる、
そんな関係だった。
あの日も、たいしたことないと思ってた。
放課後、河原のベンチで二人。
阿「けほっ、」
深「…ん、大丈夫?」
阿「…あ、うん。」
阿「喉乾いただけっ、」
深「そっか、」
阿「ちょっとジュース買ってくるね。」
深「俺も一緒に行こっか?」
阿「ううん、」
阿「俺が辰哉の分も買ってきてあげる 笑」
深「え、マジで?」
深「亮平が奢ってくれるとは…笑」
阿「ふふっ 笑」
阿「待ってて、すぐ戻る。」
亮平はそう言い残して、
ベンチから離れた自販機へ向かった。
__ほんの数分だった。
気づいたときには、
亮平は地面に倒れてた。
胸を押さえて、息が吸えなくなってた。
深「…亮平っ、?」
深「亮平、!!…大丈夫っ?!」
深「吸引器はっ…!薬は、?!」
阿「…きょう”…わすれた”、」
亮平の声はかすれていて、
その目には、はっきりと
“死の恐怖”が浮かんでいた。
阿「…たつや”っ、ごめんね”…」
阿「おれ”…っ、もうダメかも”、泣」
深「やだっ、!!…亮平、やめて!泣」
救急車を呼んだ。
でも、間に合わなかった。
阿「…ごほ”っ、はぁ”…はっ”、泣」
深「…亮平”っ、!やだ”…!泣」
阿「…ひゅ”ーッ、ひゅ”っ…ごほ”、泣」
阿「っ…たつ”ッ、ありがと”…泣」
亮平が目を閉じた。
深「…うそ、っ…泣」
深「亮平”っ…!お願い”…息して”、! 泣」
何度も何度も叫んだ。
でも、亮平が目を開けることは無かった。
喘息による呼吸困難。
気道が完全に塞がれていた。
医者が言った言葉を、辰哉は一生忘れない。
「もし、吸引器があったなら
助かる可能性は高かったでしょう。」
自分が持ってれば、貸せていた。
一緒に居たのに、守れなかった。
“あの日の亮平みたいにはなりたくない”
けど、何よりも、
“あの日の俺みたいに、誰かを救えなかった
後悔を、もう二度としたくない”
そんな思いだけが、胸の奥に根を張っている。
ー
深「…おやすみなさい、」
深「亮平。」
俺は、亮平を忘れたくない。
そして、亮平にも忘れて欲しくない。
亮平の分まで、幸せに生きたい。
明日も、明後日も、
幸せに生きられますように。
ー
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