テラーノベル
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②
ー
駅のホームは、夕焼けで染まっていた。
ビルの影が長く伸び、
蝉の声だけが耳に痛いほど響いてくる。
病院に向かおうとしていた最中。
なんとなく胸が締め付けられる感じがした。
深「っ…はぁ、」
これ、ダメなやつかもしれない。
電車が来るまで、あと5分。
2駅先の病院まで、あと10分。
耐えられる気がしない。
でも、誰かに頼るのが怖かった。
中学の時、友達に
『喘息なんか甘えでしょ 笑』
『勝手に倒れとけばいいじゃん 笑』
と言われた時から、ずっと。
それでも、自分の中で何かが 確実 に
崩れていることには、もう気づいていた。
目の前が、ぐにゃりと歪む。
息を吸いたいのに、吸えない。
どんどん酸素が足りなくなっていく。
深「…はぁ”っ、ふ”…ぅ”、 」
(誰か…助けて、)
そう叫びたかった。
でも、
周りの人は見て見ぬふりをするばかり。
中学の頃のトラウマが蘇ってくる。
ー
深「っ、ひゅ”ー…ッ、ごほ”っ、」
「え、大丈夫?」
深「…はぁ”ッ、う”…」
「また喘息かよ 笑」
「それな 笑」
「ま、先生が助けるっしょ 笑」
深「…たす”、けて”ッ、」
「ちょっと、何してるの!!」
「げっ、先生来た。」
「深澤くん!大丈夫?落ち着いて!」
深「…かひゅ”ッ、はぁ”っ、」
俺の周りを囲むクラスメイト。
でも、誰も俺を助けようとしなかった。
助けを求めても、
助けて貰えないような気がした。
ー
深「ッ、う”っ…ぁ”、はぁ”、」
頭がぼんやりしてきた。
世界の音が遠のいていく。
目の前の景色が揺れて、膝が崩れる。
深「…ひゅ”ッ、はぁ”…は”ッ、」
駅のホームの地面が 頬に触れる
冷たさと同時に、視界が真っ白になる。
苦しい。
息ができない。
吸っても吸っても空気が足りない。
手を伸ばす。
誰に向けてかも分からない。
ただ、誰かにすがりたくて。
ごめん、亮平。
亮平の分まで…生きられなかった。
涙が頬を伝った。
俺はゆっくり、目を閉じた。
その時だった。
?「…おいっ、!!」
?「大丈夫か?…ゆっくり息しろ、」
?「すぐ助ける、落ち着いて…」
力強く身体が抱き上げられる。
ふわりと浮く感覚の中、 かすかに
嗅ぎ覚えのある、柔軟剤の匂いがした。
?「呼吸器持ってる?薬は、?」
深「…は”ッ、ふ”…かばん”の、中”… 」
?「ん、もうちょっと耐えろ、」
口元に呼吸器が付けられる。
?「ゆっくり…吸って、吐いて…」
深「…ひゅ”ー、ふぅ”ー…っ、」
?「そー、上手。」
耳元で囁かれる声。
それが誰なのか、分からない。
だけど、どこか安心する声。
ー
深「…はぁ”っ、、」
?「…落ち着いた、? 」
深「はいっ…」
深「ほんとに、ありがとうございました…」
?「いいえ、笑」
?「今度からは気を付けるんだよ。」
深「っ……」
何気なく見せた笑顔。
俺の心が少し蠢いた気がした。
?「じゃあ、またね。」
深「…あっ、あの、!!」
?「…ん?」
深「お名前、って…!」
?「…俺の?」
深「…(頷」
岩「岩本 照。」
深「岩本、さんっ…」
深「…ありがとうございました、っ」
岩「良いの良いの 笑」
岩「じゃあね、」(頭撫
深「っ…//」
岩「……」
岩「また、会えるといいね、”辰哉くん”。」
深「…えっ、?」
岩「今度は、元気な状態で。」
深「っ…!」
深「…はいっ、!!」
なんで…俺の名前を、?
ー
あの後、どうにかして帰宅したものの、
辰哉の身体は重く、胸は痛んでいた。
薄い布団を被り、天井をぼんやり見上げる。
__誰かが自分を支えてくれるなんて。
深「……岩本さん、」
名前を思い出すだけで、胸の奥が熱くなる。
酸素が足りていないわけでもないのに、
喉が詰まるような感覚。
腕の中で感じた体温
ゴツゴツとした大きな手
優しく囁く低い声
出会ったばかりの人に、あんなに真剣に
向き合われたのが、不思議で、温かかった。
深「っ…泣」
涙が一粒、頬を伝った。
それが何の涙なのか、
自分でもよく分からなかった。
深「また…逢えるかな、泣」
あの手の感触を思い出しながら、
辰哉はそっと目を閉じた。
ー
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再会
コメント
4件
最高すぎるよ♡
助けてください…胸が… はちさんは感動系も、そういう系も、とても上手で憧れます! 続き楽しみです!
ひーくん登場! いわふか始まるか…? ((o(^∇^)o))ワクワク