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第10話:黄金の飛翔(前編)
格納庫内に響く火花の散る音と、重厚な金属の打撃音。
昨夜から一日経過した昼間の事。
ガドルフは巨大なクレーンを操り、プロト・ウイングエックスのコクピット周辺の装甲を大胆に解体していた。その横で、ゼロは顔をオイルで汚しながら、ガドルフから手渡された旧式の回路図と格闘している。
「おい、ジジイ! このバイパス、出力が安定しねえぞ。本当にこれでサテライトシステムとかゼロシステムに耐えられるか?」
「黙って手を動かせ、若造。お前が握っているのは、あの廃都で失われたはずの『思考伝達型(サイコ・フィードバック)』の予備パーツだ。それがなければ、お前の脳は次の戦闘で焼き切れる」
ガドルフの言葉は厳しかったが、その手つきには老練な技術者としての誇りが宿っていた。今回の改修の目玉は、暴走を繰り返す**「ゼロシステム」の制御装置**の組み込みと飛行システムの復旧だった。これがない限り、ウイングエックスは乗り手を選ぶどころか、乗り手の精神を食い潰すだけの化け物でしかない事に加え、いつまで経っても空を飛ぶ事はできないのだ。
格納庫の奥、分厚い遮光シートに覆われた「何か」を指差し、老兵は静かに告げる。
「いいか、小僧。あのシートの中にあるのが、この機体の本来の姿……失われた姿だ。だが、まずはその制御装置を馴染ませ、機体を御せるようになるのが先だ。システムと魂を真に共鳴させた時、初めてその翼を授けてやる」
ゼロは、カバーのかかった巨大な制御装置のシルエットをじっと見つめた。
「……ふん、出し惜しみしやがって。まあいい、まずはこの脳ミソを焼かれないようにしてやるよ」
静寂を破ったのは、霧の奥から響く、不気味なジェット・エンジンの重低音だった。
ミラが弾かれたように顔を上げ、格納庫の入り口を指差す。彼女の瞳には、かつてないほどの警戒の色が浮かんでいた。
「……来た。二つの影。あの子を……殺しに来る」
ガドルフが即座にモニターを確認する。霧の中に、二機の高機動型MS**『リーオー改』**の機影が浮かび上がっていた。敵は執念深く霧の谷まで追跡してきたのだ。
「ちっ、嗅ぎつけやがったか! ジジイ、ここはまだバレてねえな?」
「ああ、岩壁のジャミング装置が生きている。だが、時間の問題だ」
ゼロは即座に決断した。彼はまだ調整の終わっていないプロト・ウイングエックスのコクピットへと飛び乗り、ミラを隣のシートへと引き寄せる。ハッチが閉まる直前、彼は格納庫に残るガドルフに向かって不敵に笑い、言い放った。
「ジジイ! そいつに傷一つつけさせるなよ! 外のゴミ共を片付けるまでは、その翼……あんたに預けとくぜ!!」
ガガォォォォン!!
プロト・ウイングエックスが、まだ装甲や翼を持たぬまま霧の中へと飛び出した。
「…………若いのに賭けるのも、悪かないな」
ゼロはあえて格納庫とは逆の方向へスラスターを噴射し、派手な熱源を撒き散らす。霧の中を疾走し、敵の注意を自分一人に引き付けた。
「おい、こっちだハイエナども! 霧の中で迷子になる前に、俺が地獄へ案内してやるよ!」
視界の悪い霧の中、二機のリー・オー改がゼロの挑発に乗り、格納庫から離れた平原へと誘い出される。
霧を切り裂き、地上戦が始まった。
敵の一機が放つロング・ライフルの光軸が、プロト・ウイングエックスの肩をかすめる。ゼロは取り付けたばかりの制御装置を介し、ゼロ・システムをあえて「予測」ではなく「回避」に特化させ、霧の深淵を縦横無尽に駆け抜けた。
「ミラ、あいつらの位置を教えてくれ! 霧で見えねえなら、心で捕らえるだけだ!」
「……右。三秒後に、上から来る」
ミラの静かな先導に合わせ、ゼロはシールド・バスターソードを振り抜く。
ガギィィィン! と火花が霧を白く染めた。
翼なき獅子は、霧に包まれた谷間で、二機の猟犬を相手に孤独な奮戦を続ける。
背後に残した「真の翼」を手にする資格を証明するために、ゼロの闘志が霧を赤く染め上げていく。
**次回予告**
霧を払い、ついに黄金の鼓動が鳴り響く。
ゼロの決死の覚悟が、眠れる翼を呼び覚ます。
大空を舞う白き影。その名は、ガンダム・ウイングエックス!
次回、『遺された残光:黄金の飛翔』
**「これが……俺たちの本当の翼か、 行くぜ、ミラ!」
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