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「おはようございます」
「おはよう。今日も清掃かい」
「はい」
「大変だね。無理しないでね」
「ありがとうございます」
宿の女主人に挨拶をした後、旦那さんである料理人の美味しいご飯をいただいた。ここのご飯は他のところよりも美味しい。
「お嬢さん頑張ってね」
「いってらっしゃい」
首都付近の住人は私が清掃活動を行っていることを知っている。だが、誰もが元通りにできることなど諦めていた。『そんなことできるはずがない』『子供の戯言だ』『変わった子だね』『早くこの地から出た方がいいよ』など希望を捨てている。
(…諦めないでほしい)
清掃を始めてからまだ3日だ。確かに空き家である家は何年も使われて居らず扉を開けるのも困ったものだ。軽く触れただけで壊れるものや錆びて動かないものがほとんどであり壊滅的だった。窓もガラスが割れているものや割れてしまい窓ガラスが無いものもあった。この量どう見ても一人でできることではない
「…だけど私には私のやり方がある」
この3日間は30家の扉、窓全てを開け念の為、人がいないのを確認しどこに何があり危険なものがないかを細かく確認してきた。また、この辺一帯を住人が入らないように立ち入り禁止にした。呼びかけでは心配なので一応、結界も張った。
(用心は大事)
結界は鏡のようになっており天気や周りの景色を映し出しているので変に怪しまれる心配はない。なので、今からやることを誰にも知られず見られずにできる。鞄に入れてある水連の花を取り出し手に乗せる
「開花…朝日照らし幻炎よ咲き誇れ…泰山木」
花が力に包まれ紅い火のようになった。床に優しく置いた。その瞬間、木に変わり葉が生え花が開花した。家に収まるギリギリのサイズの大きな泰山木が生えた。木に手をかざし
「…去れ」
ふゎーーーーーーー
その一言で開花していた花が一気に風のように舞い花びらになって扉、窓から去っていった。残っていた花びらがこの家を舞い聖浄していく。家中ほこりをかぶり真っ黒かった場所が花びらが通るごとに全て綺麗になっていく。他の家も同様に窓や扉から入り花びらが家中をすみずみ綺麗にしていく
「ふぅ…」
綺麗にできる場所は聖浄した。だが、家が丈夫な所はそのままでもいいが腐りきっているところや半壊している所は建て直す必要がある。
(…あと、壊した扉も戻さないと)
鞄から水連の花を5つ取り出し両手に乗せた
「開花…朝日照らし幻炎よ咲き誇れ…白木蓮」
花が力に包まれ白い火のようになった。
「フゥーーー」
今度は息をかけ手に乗せた花がその風で舞うように落ちていく。
5つの花はそれぞれ木が生えそこから頭、体、足、手へと形を変え人型へとなっていった。頭には白木蓮の花が咲いており、花が開いている間だけ動くことができる。見た目は木が人の形になっただけで目や口もないので傍から見れば不気味だ。白木蓮はその場で跪き命令を待った。私はこの家にあったテーブルと鞄から見て回った時に作った地図を出した
「命令を下す…この地図にあるここと、ここと、ここを立て直すからあなた達は木材を運んで残りの子達は家を建てなさい。見取り図はこれよ。私は、瓦礫を運ぶから」
命令を下された白木蓮は颯爽と動き出した。
事前に用意した頑丈な木であるヒノキを使い家を建てていく。私は指示を出しながら家を
壊した際の瓦礫などを細かくし運んでいく。
離れた空き地にまとめて置いておく。
カァカァ
カラスが鳴く。気づいたら夕日が沈みかけていた。
「ふぅ…今日はここまで」
夜になるとこの子達の花は蕾に戻り本体が動かなくなる。
「念の為、結界はそのままにしよう」
私は、宿に戻り今日中にできたことを紙にまとめていく。これを元に明日、やるべきことをまとめる。この調子なら1週間で終わらせそうだ。正直、もっと白木蓮を出しすぐに終わらせたいが この子たちを動かしながら行動するなら5体が限界だ。あまり無理をすると倒れてしまう。
「…私もまだまだだな」
疲れた…どうしたらもっと効率よく力を使えるかな
『いい…絶っ対に無理はしないでね。貴方は頑張り屋さんだけどすぐに無茶をするんだから』
昔のことを思い出した。よく無理をして怒られていた。でも、頑張ったらよく頭を撫でて褒めてくれた。
「…会いたいな」
明日も作業の続きをしないと…約束守ら…な…いと…
(おやすみなさい)