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それから一週間、朝昼夕で清掃、修理、片付けを繰り返していった。
「ここのドアをこうして…こう」
「道を整えて」
「街路樹をここに植えて」
「ここらは家一帯にして」
「井戸はレンガで作って」
白木蓮達は颯爽と働きそのおかげで少しずつ元の街並みが戻ってきた。
「あと少し…」
もとの美しい場所に戻る。
屋根は家づくりが終わった者から色塗り作業へと移ってもらった。そこら一面ペンキの匂いがする。ちょうど白木蓮の一人がペンキのバケツを木の枝に掛けていた時…
ゴン
「痛った」
街並みを見ながら歩いていたら木にぶつかり
ヨロっ
「おっと…」
ドン…ガシャン
ドバッ
「…や…やって…しまった」
ベト…ベト…ベト…
あれから一週間、そろそろあのガキはくたばった頃だろう。あそこは首都の中で特に荒れ果てた場所であり瘴気が溜まっている場所だ。3日で目眩、4日で体調不良、5日で吐き気、6日で呼吸困難を起こす。もし、回復薬を飲みながら作業しても2週間でできることではない。
これで痛い目にあえば自分の愚かさがわかるだろう。
『では、こうしましょう。2週間以内に広場の北側にある地区。住宅街を元の清潔で美しい場所へと戻しましょう。もし、できなければ罰として殺してください』
自信に溢れた目でそう宣言した。なぜ…無謀なことをする。なぜ…やろうとする。なぜ…あの者はあんな自信に溢れた目で見ることができる。ここがどんな場所でどんなふうに言われているのか知っているはずだ。
(…意味がわからない)
「ハァ…」
〘信じるな…どうせあのガキには不可能だ。信じても意味ない。〙
頭が痛い…
〘 信じない。信じない。信じない。〙
「くっ…うっ…」
魔力が暴れている。心臓が締め付けられるように痛む…苦しい…
ずっと、声がきこえる…
「うっ…はっ…」
コンコン…
「主様…あの子供がお会いしたいとどうされますか」
護衛騎士であるフェムルが呼んでいる。
「ハァ…ハァ…ハァ…ふぅ…」
「主様…どうかなせれましたか」
「…なんでもない…会おう」
あのガキもう、折れてしまったようだ。やはり無理なのは無理だ。
扉を開けあのガキに会いに行こう。情けない泣き顔を見に…
〘信じない〙
〘信じない〙
〘信じない〙
〘また裏切られるだけだ〙
〘あの者のように〙
「ご機嫌麗しゅうございます…陛下」
ニッコリ
(このガキ…)
「お前…なぜ汚い」
頭や服がところどころ赤茶色になっている。白い髪色だからこそ目立つ
「えっ…えっと…ペンキをかぶってしまいまして、落としたつもりなのですが…すみません」
(哀れみのつもりか…小賢しい)
「して何のようだ。もう折れたのか」
「残念ながら…違います」
「なんだ…もしや期間を延ばしてほしいのか」
「いえ、陛下に見ていただきたいものがあります。ぜひ、来てください」
「…見てどうする。意味がない」
「いいえ…これは意味のあるものです」
「言葉ではいえないのか」
「見ていただきたいのです」
「ハァ…つまらなかったら燃やす」
「はい!あっ…ぜひ騎士様も来てください」
「…私もですか」
「お前も来い…証人だ」
「…わかりました」
「では行きましょう」
(…信じない)
ガチャ
扉を開けたら外の光が差す。ここまで眩しいとは思わなかった。なにせ、ずっと室内にいたので仮面越しでも太陽の光が眩しすぎる。ずっと運動もしてこなかった。日差しの中で歩くのは疲れる。
「ふぅ…」
歩いて行くうちに目が慣れてきた。外を見れば荒れ果てた状況が一目瞭然だ。半壊した場所、空き家だらけで領民が見あたらない。
こんな場所…ゴミ溜めのようだ。必要ない…
〘お前が放棄したせいだ〙
もう捨てたんだ…
〘ありえない〙
期待しても仕方がない…
〘信じない〙
期待など意味がない。絶望するだけだ。
〘信じない。信じない。信じない〙
全てが意味などない。
「お前はなぜ…そんな目をする」
「どんな目ですか」
「俺の嫌いな…自信に溢れた目だ」
「自信に溢れているからですよ」
「答えになっていない…何を期待しているのか…」
「陛下も期待してください」
「そんなものに意味などない」
『「そんなことありませんよ」』
脳内に響く…古い記憶だ。
『貴方はすぐに難しく考えすぎです。たまには他の考え方もしてください。頭硬すぎますよ。ふふふ…硬いのは物理的だけにしてください』
『お前が楽観すぎるのだ…それに俺より硬いだろう。物理的に…』
『そうですね。それに楽しく生きるのはいいことですよ』
『そんなに期待に溢れてどうする…すぐに絶望するだけだ』
『…期待していいのですよ。私は貴方のこと期待してますよ』
『それは…だが…』
『照れて可愛いですね。では、もし信じれないと思ったのがほんとうになった時…なった相手にはこれから期待を溢れさせてください』
『なぜまた…』
『期待されて…嫌なことはありませんよ』
『……』
『「私はうれしいです」』
似てる。古い記憶の中にいた人物に似ていた。その女性は、楽観的に生きている人だった。笑顔溢れ自信に溢れた。逆の生き方をした人。太陽のような人…
(…期待か)
急にガキが止まった。
「…陛下こちらをご覧ください」
「なにを…」
「…戻っている」
俺とカルトは呆気に取られた。
まさか、この荒れ果てた場所を元にそれどころかもっと美しい場所へと変えていた。道には街路樹がある。家も新築にしか見えないほど清潔感溢れている。今にも、人が住んでいそうだ。
「…直したのか」
「はい。汚れを綺麗に取ったあと、壊れているところは家を建て直しました。屋根などもペンキを塗り街路樹を植えたりなど元の風景を再現しました。…どうですか」
「…元の風景どころではない」
あの日の場所に戻ってきたようだ。懐かしい。日差しが差し眩しく、領民の幸せな声が響くそんなありふれた場所だ。
「…主様これはすごいですね」
このガキ…まさかこれほどの事をやるとは
「陛下…私をこの地で働かせてください。決して、貴方様の期待を裏切ることはありません」
信じていいのか。ほんとうに…
「私は必ず…この地を美しい場所へと変えます」
領地開拓か…
『それに貴方は本当は誰かを信じたい…期待したい』
『何を…』
『信じない…信じたい…貴方をよく見てあげてください』
『本当はどうなのか…』
(信じない…信じたい…)
そうだな…
この者は不可能を可能へと…
誰も信じないことをやり遂げた…
「…いいだろう。約束は守る」
「では改めまして…私の名はアイリスと申します。これからどうぞよろしくお願いします。主様」
「 …レガリス・イプシロン・クロキスだ。一応、大公爵で魔術師…」
私達は握手を交わした。この者が何をするのかを実現できのかをみようではないか
「領地開拓許可ということでよろしいですか」
「勝手にしろ」
「はい、私なりに勝手にさせていただきます」
どこまでできるのやら…
「主様…いくつかお願いがあります」
「なんだ…」
「私に店を出す許可をください」
「部下として雇うのは分かるが…店は何に使う」
「私は薬屋では働きません。薬屋は陛下の場所です。それに、店番にはもう人がいますからね」
「…新たに店を出しても意味ないぞ」
(薬屋で雇えば監視の名目で一石二鳥だと思ったが…)
「ご心配無用です」
「…それでなにを企んでいる」
「私はここで喫茶店を営みたいです」
この者は何を言っているのだ。