「もう卒業、、か・・・」
正門の前で、目に映る大きな学校を見ながら、私は卒業証書を手にし、そっと呟く。
3年前の入学式。あの時正門から見た景色とは、全く違う。
なんだか、何処か切ない気がした。
その時、後ろから優しく誰かが肩に触れている。
誰かなんて、すぐにわかった。
振り返らないわけがない。
私はドキドキしながら振り返る。
やっぱりそこには——
「よっ」
いつもと変わらない彼がいた。
私の大大大好きな彼が。
「卒業、おめでとう」
大きな花束を私に渡す彼。
にっこりと、目が無くなるような笑顔で私を見つめていた。
嬉しくて、嬉しくて、涙が溢れそうだった。
こんな嬉しい卒業式、初めてだから。
でも彼にはせっかく持ってきてくれたんだから、笑顔にさせなきゃ。
ゆっくりと私は花束を受け取る。
いい香りのその花は、まるで私の切なさを埋めてくれているかの様だった。
「ありがとう」
涙を堪えながら震える声で答える。
彼は、またにっこりと笑った。
そして、急に目線を逸らす。
「今日は満開の桜だね」
目の跡を追うと、彼は1枚1枚の桜の花びらを見つめていた。
彼の花を見る表情は、いつも丁寧で美しい。いつもの倍くらい儚さが増している。
私は、その1枚の花びらを取って、彼の頭に乗せた。
またニコリと笑う彼。潤った瞳が物語っている。
「大好き」って、言ってくれてる。
「どう?似合ってる?」
その瞳で、彼はポーズをとりながら言う。
彼は何もかも完璧な彼氏だ。
「すんごい似合ってるよ、本物のお花になったみたい」
私も笑顔でそう口にする。
彼の頬は、少しずつ桜色に染まって行っている様だった。
「ふふっ、照れてるの?」
意地悪で言ってみる。
可愛くて愛おしい彼は、もしかしたら妖精さんなのかな。
「うるさい!照れてなんかないし・・・」
さっきの儚さは嘘みたいに消えていく。
逆に、桜と同色すぎて消えていきそうだ。
すると彼は、私の頭に自分の乗せていた花びらを乗せてきた。
「お返し」
蕩けるような声が耳元で響き渡る。
いつしか私は、見えなくなってしまう彼の背中を必死で追いかけていた。
「あー!待って!」
「ここまで来れるなら来てみな〜」
「もう・・・!待ってよ!」
やっとの事で彼には追いついた時には、もう私の頭にあった花びらは何処かへ消えてしまっていた。
それでも良いんだ。
桜の花びらが落ちるまでに、彼に追いついたから。
ギューっと彼に抱き寄せられる。
桜は、まだ、
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こんなことするのは……………ろんたんかにゃ?!
えもい(?)うん。えもい