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comi
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ばたっちゅ
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coco🌹🫶
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第八章 闇が帰る月夜
第一話 朝の光の下で
朝の光が、白いカーテン越しに静かに差し込んでいた。
柔らかな温もりに包まれながら、サフィアンはゆっくり目を開ける。
「……ん……」
ぼやけた視界。
身体を動かすと、ふかふかの感触が背中を沈めた。
知らない天井だった。
しばらくぼんやり見つめて、そこでようやく思い出す。
――帝国。
――教会。
――魔物。
――暴走しかけたジオ。
「……っ!」
半分跳ね起きるように身体を起こしかけて、頭に鈍い痛みが走った。
「いって……」
昨日の怪我だ。
けれど思ったより痛みは軽い。
どうやら手当てはちゃんとされているらしい。
そこまで考えて、ふと隣へ視線を向ける。
「……」
寝息。
すぐ傍から聞こえた。
そこには、静かに眠るジオの姿。
黒髪がシーツへ広がり、長い睫毛が白い肌へ影を落としている。
規則正しい呼吸。
苦しそうな様子はない。
その姿を見た瞬間、胸の奥に張り付いていた緊張が少しだけ緩む。
「……よかった」
小さく呟く。
そして次の瞬間。
「……ん?」
サフィアンは固まった。
いや待て。
なんでこんな近い。
というか。
「なんで同じベッドで寝てんだ!?」
思わず声を上げそうになって、慌てて口を押さえる。
昨日、部屋へ入った時。
ジオは確か、隣のベッドへ倒れ込むみたいに眠ったはずだ。
なのに今。
ジオは、サフィアンの隣で丸くなって眠っていた。
しかも結構ぴったり寄っている。
「お前……」
呆れたように呟きながらも、サフィアンは小さく笑った。
眠っているジオは、どこか幼く見える。
昨夜の、壊れてしまいそうだった姿が嘘みたいだった。
思わずじっと見つめる。
綺麗だな、と。
そんなことを考えてしまって、サフィアンは慌てて視線を逸らした。
「……何考えてんだオレ」
少し赤くなった顔で小声でぼやく。
ジオを起こさないよう、そっとベッドから降りようとした時だった。
「……ん……」
小さな声。
ジオの睫毛が揺れる。
ゆっくりと黒い瞳が開いた。
けれど、すぐには起き上がらない。
ぼんやりとしたまま、宙を見つめている。
「ジオ」
サフィアンが静かに声を掛けた。
「……眠れた?」
少し間が空く。
やがて
「……夢を見た」
掠れた声。
サフィアンはベッド脇へ座る。
「夢?」
ジオはゆっくり瞬きをした。
「黒髪黒眼の女の子がいた」
「……泣いてた」
静かな声だった。
「すごく悲しそうで」
「でも、触れられなくて」
黒い瞳が、少しだけ揺れる。
「なんか……すごく苦しくて」
そう言って、ジオは小さく唇を噛んだ。
サフィアンは何も言わなかった。
代わりに、そっとジオの頭へ手を乗せた。
さらりと黒髪を撫でる。
「……っ」
ジオが少しだけ目を見開く。
何度か優しく撫でられるうちに、強張っていた表情が少しずつ緩んでいく。
その様子を見て、サフィアンは小さく息を吐いた。
「……ところでさ」
「?」
「なんでオレのベッドで寝てんの?」
空気が止まる。
「え?」
ジオが固まる。
サフィアンは少しだけ意地悪そうに笑った。
「昨日、隣のベッドに寝てただろ」
「なのに朝起きたら、なんでこっち来てんの?」
「…………」
ジオの顔が、みるみる赤くなる。
「お、おれ……?」
「覚えてないの?」
「……全然……」
耳まで真っ赤になったジオは、慌ててシーツを引っ張り上げて顔を隠そうとする。
「ははっ」
サフィアンが吹き出した。
「なにそれ」
「笑うな……!」
くぐもった抗議。
「いや、お前それ普通に怖いわ」
「知らない……」
「しかもめっちゃ寄ってたし」
「っ!!」
ジオが勢いよく顔を上げる。
「言うな!!」
「はははっ!」
久しぶりに、心から笑った気がした。
ジオは拗ねたみたいに顔を逸らす。
そんな、穏やかな朝だった。
――コンコン。
不意に扉がノックされる。
「失礼いたします」
静かな声と共に、召使い達が数人入ってくる。
サフィアンとジオは同時に固まった。
「湯浴みのご準備をさせていただきます」
慣れた様子で、部屋の一角へ次々と準備が進められていく。
大きな桶。
湯気。
着替え。
整えられた布。
「湯浴みが済みましたら、こちらをお召しください」
丁寧に畳まれた衣服が置かれる。
「また、お食事のご用意も整っております」
「お着替えが済みましたら、こちらのベルでお呼びくださいませ」
最後に恭しく一礼し、召使い達は部屋を出て行った。
「…………」
「…………」
二人は顔を見合わせる。
そして。
「すげー……」
サフィアンが思わず呟いた。
ジオもまだ呆然としている。
「城ってこんなんなんだ……」
どこか落ち着かなさそうに、白いローブへ視線を落とす。
サフィアンは少しだけ笑った。
「ジオ先入れよ」
「……うん」
少し立ち上がりかけて、ジオがじろりと睨む。
「……見るなよ」
「見ねーよ」
「絶対だぞ」
「信用なさすぎだろオレ」
笑い声が漏れる。
そうして。
湯浴みを終え、着替えを済ませた二人は、召使いに案内されながら城の廊下を歩いていた。
着慣れない柔らかな服。
ジオの黒いローブの代わりに用意されていたのは、白を基調としたゆったりした衣装だった。
白い布地が、黒髪をより際立たせている。
眩しそうに目を細めながら、ジオは豪華な廊下を歩く。
隣ではサフィアンが、きょろきょろ辺りを見回していた。
「すげぇな帝国……」
小声で感嘆する。
やがて案内された先は、小さな客間だった。
召使いが静かに扉を開ける。
そこには既に、三人の姿があった。
アクセル。
クロード。
ラスタ。
席に着いていた三人が、同時にこちらを見る。
そして
「おはよう」
アクセルが笑った。
まるで朝日みたいな、眩しい笑顔だった。
「よく眠れたか?」
客間の中央には、大きな丸テーブルが置かれていた。
白いクロス。
磨き上げられた銀食器。
そして、並べられた料理の数々。
焼き立てのパン。
香草の効いたスープ。
色鮮やかな果物。
卵料理に、肉料理まで並んでいる。
部屋へ入った瞬間。
「……うわ」
サフィアンが思わず声を漏らした。
隣でジオも完全に固まっている。
そんな二人を見て、ラスタが吹き出す。
「反応おもろすぎやろ」
「いやいや、これは驚くって!」
サフィアンが即座に言い返した。
「朝飯だよな!?」
「わかるけど」
ラスタが肩を揺らして笑う。
「そんな田舎来た子供みたいな顔せんでも」
「誰が田舎者だ!」
「いやラディスやろ?」
「帝国よりは田舎だけど認めたくない!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ始める二人。
その横で、アクセルが堪えきれないように笑った。
「安心しろ」
「俺達も毎朝こんな食事じゃない」
「えっ」
サフィアンが真顔になる
「そうなの!?」
「今日は客人が増えたからな」
アクセルが穏やかに答える。
「厨房が張り切ったんだろう」
「なんや〜」
ラスタが椅子へもたれ掛かる。
「オレ、帝国って毎朝こんなん食うてんのかと思ったわ」
「ちょっと夢見たわ」
「お前もじゃんか!」
サフィアンが即ツッコミする。
「絶対今、住み込みたいって思っただろ!」
「思ってへんわ!」
「顔に書いてあったぜ!?」
「書いてへん!!」
サフィアンとラスタが、完全に同じテンポで言い合う。
クロードが静かに紅茶を飲みながら、ぽつりと呟いた。
「騒がしいな」
「クロ助けてや!」
「断る」
即答。
ラスタが大袈裟にショックを受ける。
「冷たっ」
「いい気味だ」
サフィアンが笑う。
「お前達、昨日会ったばっかと思えないな」
アクセルが口元を緩めた。
「確かにな」
クロードも静かに頷く。
その空気の中で、ジオは少しだけ戸惑うように瞬きをしていた。
昨夜まで、世界中が敵のように思えていた。
なのに今は、温かな匂いと笑い声がそこにある。
現実感が、少し薄い。
召使い達が料理を取り分け始める。
ジオは慌てて身を引いた。
「え、あの、自分で……」
「お気になさらず」
恭しく返される。
ジオはさらに困ったように視線を揺らした。
サフィアンが隣で吹き出す。
「めっちゃ困ってる」
「……落ち着かない」
「顔に出すぎなんだよ」
ジオはむっとしてスープへ視線を落とした。
その様子を見て、ラスタがにやりと笑う。
「ジオって、思ったより表情出るんやね」
「昨日最初見た時、もっとこう……人間離れしたタイプかと思っとったわ」
「ラスタ」
クロードが静かに低い声を出す。
「あ、ごめんごめん」
ラスタは頭を掻きながら笑った。
「でもほんま、普通の兄ちゃんやん」
「赤なるし、拗ねるし。全然普通やな〜って」
ジオは少しだけ目を見開き、そのあと小さく視線を逸らした。
「……そういうこと、あんまり言われたことない」
静かな声。
サフィアンがパンを齧りながら笑う。
「こいつ昔からこんなんだぜ」
「人見知り激しいだけで」
「サフィはうるさい」
「なんでだよ!」
即座に返す。
「オレ、何も変なこと言ってないだろ!?」
「朝から声が大きい」
「ラスタのせいだ!」
「オレ!?」
「絶対お前だ!」
「濡れ衣やわ〜!」
また騒がしくなる。
クロードも、ほんの少しだけ口元を緩めていた。
そんな光景を見ながら、アクセルは静かに紅茶へ口を付ける。
そしてふと、ジオを見る。
ジオは少し困ったようにしながらも、先ほどより柔らかい表情をしていた。
昨夜、あれほど怯えていた少年。
闇に飲まれかけていた存在。
それが今は、仲間達の騒がしさに囲まれて笑っている。
アクセルは、ほんの僅かに目を細めた。
――記録にあった月蝕の子とは違うのか。
そんな考えがよぎる。
だが同時に、昨夜見た黒い瘴気の光景も脳裏を離れない。
静かな葛藤を胸に沈めながら、アクセルは何も言わなかった。
窓の外では、朝の光が帝国の城を静かに照らしていた。
コメント
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ああもう…第17話、めっちゃ良かった…🥺💘 サフィアンが起きたらジオが同じベッドにいて、しかも自分からくっついてたっていう発覚、尊すぎてやばい…無意識に近づいちゃうの、めっちゃジオらしいし、サフィアンの「なんでオレのベッドで寝てんの?」って意地悪な笑顔もたまらん…! 朝食のシーンも温かくて、ラスタとの軽快な掛け合いとか、「クロ助けてや!」「断る」の流れ、めちゃ笑った。 ジオが「そういうこと言われたことない」って呟いたところ、胸がじんわりしたよ…本当に少しずつだけど、彼の世界がほぐれていってるのが感じられた回だった🌙 次も楽しみにしてます、co-miさん!