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バケモノ

1 - 第1話

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26

2026年01月01日

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私には視える。あの気持ちの悪いものが。



“ばけもの”


小さい頃、そう名付けた。


それは時折姿を現しては、視界の端っこでしきりにうごめく。


それは、黒っぽいような、茶色っぽい

ような、赤黒いような、とにかくいろんな色がぐちゃぐちゃに混ざりあった色をしていた。

どす黒い色、そう言い表すのが妥当だろう


そして醜い見た目をしていた。


はっきりとした形では視えなくて、なんだかそれがいるところだけ、ぼやけて見えていた気がする。


“ばけもの” そう呼んだのは純粋に、それそのもののから受け取った印象からだろう。



今その名前でそれを呼んでも何ら違和感はない。

だって、本当にそれは化け物なのだ。


だから今でもそう呼んでいる。



_”化け物” と。


物心着いた頃からそれは、自分の日常の中に必ずあった存在で、当然、周りのみんなにも見えているものだと思って生きてきた。

だから、それが近くにいたりしても、親に、周りに言ったりするような事は一切しなかった。みんなそれについて何も触れないので、話題にしないのが普通なんだろうなぁと思っていた。


それは、時々現れては視界の端にいるだけで、向こうから何かを仕掛けてくるようなことは一度もなかった。

まぁ無害だったわけで、それにとっくの昔に見た目の気持ち悪さには慣れてしまっていた。

わたしは”ばけもの”に無関心だった。


_今となっては、何故あれ相手に平然としていられたのか気になって仕方がない。


事の発端は、小学二年生の夏休みに起きた。


一年生からずっと同じクラスで、仲がいい女の子がいた。紗衣ちゃんと言う。


夏休みのある日、紗衣ちゃんが「神社へ遊びに行こう」と言い出した。


『どこにあるの?』とたずねると、


「少し遠いんだけどね、私、行き方わかるから!面白そうだし、行ってみようよ!」

紗衣ちゃんはそう言った。


近所で遊ぶことばっかりで退屈だったし、なそれに”知らないところにある神社”というのは、当時好奇心旺盛だった私にとっては何か惹かれるものがあった。


近所には有名で大きい神社があったけれど、そこは飽きるほど行っていたので、興味は湧かなかった。

ここ一週間ら辺の間続けて放送されていた、”神様に纏わる秘密に迫る!!”みたいな特集を組んだ番組を見た中で、よく神社が紹介されていたのを思い出した。


神秘的だとかいう理由で、私はすっかりそこに行く気分になってしまった。


というわけで紗衣ちゃんからの誘いを、私は快く受け取ったのだ。





*




家を出る時、母に外出先を聞かれた。

そこで私は『紗衣ちゃんと神社に遊びに行く』とだけ言っておいた。


隣町の、しかも山奥にある神社に行くなんて知られたら、100%ダメだと言われるに決まっているからだ。


母は近所の神社に遊びに行くとでも勘違いしてくれたらしい。


_あぁ、紗衣ちゃんとね。 はい、これ。

水筒と帽子、忘れずに持っていきなさい。

5時までには帰ってくるのよ。


水筒を渡され、麦わら帽子を深くかぶせられた後、どうぞどうぞと言わんばかりに直ぐに家から送り出された。


このところ、ひきこもりっぱなしで、うるさい私が常に家に居る状態だったので、さすがに母もうんざりしていたのだろう。


帽子を浅くかぶり直してから、私は街の外へ向かって走り出した。








紗衣ちゃんと合流し、道の途中でアイスを買って一緒に歩きながら食べた。


買い食いなんて、生まれてこの方した事が無かった(ちなみに紗衣ちゃんのおごりだけど)私は、嬉しさに身を震わせた。


_おいしいね。


_うん。

     

    ありがとう、紗衣ちゃん。



_んー。じゃあ、これで”借り”イチね!!



最近『借り』という言葉を覚えたらしい彼女は、「なんか、友達っぽくていいじゃん」

と、楽しそうに笑っていた。



アイスを食べることに一生懸命だったせいで、しばらくの間、二人は黙っていた。



アイスを食べ終わり、ポツポツとお喋りをしながら歩いていると、神社がある場所の近くまで来ていた。



_やっぱりこの道で合ってたよ!


紗衣ちゃんは自慢げにそう言った。



健康的に焼けた小麦色の肌から、真っ白い歯が覗いていた。



*



目的の神社へ続く道は、薄暗い山の中にあった。人が手入れをしなくなったのだろう、少し周辺が荒れていた。


夏の真っ盛りだと言うのに、山の中はひんやりとしていて静かだった。

逆に涼しすぎるくらいだ。


セミの鳴き声すら聞こえない。


本殿に向けて足を進めるにつれ、辺りはどんどん異様な空気に包まれていった。


_なんかさぁ、不気味だね。


なんて言おうとしたが、やめた。


これは単なる私の勘で、この場で口にしてはいけないような気がしたからだ。


雰囲気に気圧されて、私は紗衣ちゃんの後をまた黙々と歩いた。



山の奥の方に、ひと一人が歩けるほどの、細い道が続いていた。

雑草は伸び放題で、道が覆い尽くされてしまっていた。


(うわー、雑草だらけ。虫除けスプレー持ってくるんだった。)


そう後悔しつつも、一列に並んで、草を掻き分けながら進む。


二人とも、また無言で本殿を目指した。




 


この妙な雰囲気に耐えかねて、ついに紗衣ちゃんが声を上げた。


「ねぇ、知ってる?」


紗衣ちゃんが切り出す。


「神社ってさぁ、神聖な場所じゃんかぁ。」


『うん』


「だからね、へんなのが入ってこれないように神社の周辺には結界?てやつが張ってあるんだって。」


「すごいよね。ばあちゃんから聞いた話なんだけどさ」


_うん、すごいね。初めて聞いた。


_だけど紗衣ちゃん、その、”へんなの”って、一体、何?




その前に、紗衣ちゃんが

「あ!お社だ!やっと着いたー!」と叫んだので、たずねることは叶わなかった。


小さな小さな本殿だった。


あちこちが壊れかけていて(というかもう半壊状態だったが)、昔は綺麗に並んでいたであろう石碑や石像やらが辺りに散乱しているのがわかる。


日頃から手入れをされていないのが丸わかりだ。


「こーんな荒れちゃってさーあ、一応神様が住んでるんだよー?こんなふうにされてかわいそうだよね」


紗衣ちゃんはむっとした顔でこちらに振り向いた。


そして周辺はさっきと変わらず暗かった。


背の高い木達がうっそうと辺りを覆い尽くしており、太陽の光がほとんど届いていない。 真夏の暑い暑い世界から切り離され、別世界に入り込んでしまったような気分だった。


「結界が張ってあるのって……

あ、えーと、ここら辺かなぁ」


ぐるぐるとそこら辺を動き回った後、紗衣ちゃんはピタリと止まった。


「そう!ここ!」


その時、急に風が吹きつけた。


「あっ」


ほんの一瞬で、風は私の麦わら帽子をさらって行く。


麦わら帽子が宙に浮かんだ次の瞬間。


紗衣ちゃんが大きく飛び上がり、麦わら帽子をがしりと手に掴んだのが見えた。


「あっぶなー!」


彼女の声がひびきわたる。

反射神経の良い彼女は、しっかりと地面に着地した。


彼女の顔は自信満々で、にこりとこちらに笑いかけた。


「え、どうしちゃったの?」


「ぁ……、…ぁ………、、………、……!!!!!」


声が出ない。


後ろからぬるりと現れたそれは、大きく口を開けたようにぱっくりと真ん中から裂けていった。


そして大きくからだをうねらせ、紗衣ちゃんをぱくんと丸呑みしてしまった。






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