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#古代
眠狂四郎
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#ドラマ
眠狂四郎
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#ドラマ
眠狂四郎
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#戦国時代
眠狂四郎
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「あそこにいるの、バルカ将軍だってよ」
荷車を押していた兵士が小声で言った。
「嘘だろ」
隣の兵士が笑う。
「本当だ。誰にも言うなよ」
「秘密なのか」
「ああ。表向きは、グランの内戦には関与しないってことになってる」
兵士は周囲を見回し、さらに声を潜めた。
「でも実際はこうして食料を運んでる」
「どっちにだ?」
「どっちにもだ」
「は?」
「我々はブルートゥースとかいう将軍の所へ向かってるらしい」
「じゃあアントンには?」
「別の隊商が行ってるそうだ」
兵士は肩をすくめた。
「女王様も商売上手だな」
「違いない」
二人は笑った。
そして前方を見る。
荷車の列は地平線まで続いていた。
その中央を、一人の男が馬上で進んでいる。
粗末な旅装束。
護衛も少ない。
だが背筋だけは妙に伸びていた。
「あれがバルカ将軍か」
「しっ」
「聞こえるぞ」
「まあいいさ」
兵士は欠伸をした。
「よその戦争だ」
「巻き込まれなきゃ、それでいい」
「本当だったんですね」
眼下に続く荷車の列を見ながら、チャールズが感心したように言った。
「アントンは戦争に関しては鼻が利く」
スピリタスは腕を組んだまま答える。
谷間の街道には、何百台もの荷車が連なっていた。
食料。
武具。
家畜。
十万の軍勢を養うための命綱だった。
「ブルートゥースは十万の兵を集めた」
「その補給をどこかから引っ張ってこなければならん」
「でも体よく追い出されちゃったような気もしますけどね」
ジョージが苦笑した。
「アントンは指揮系統の違う俺たちを、
補給部隊を叩く名目で遠ざけたんじゃありませんか?」
「そうかもしれんな」
スピリタスは否定しなかった。
「信用されてないんですね」
チャールズが言う。
「逆だ」
スピリタスは小さく笑った。
「警戒されている」
兄弟は顔を見合わせた。
「それって同じでは?」
「少し違う」
スピリタスの視線は遠くの補給隊へ向いていた。
「信用していない相手は無視する」
「警戒する相手は能力を認めている相手だ」
ジョージが肩をすくめる。
「ずいぶん前向きな解釈ですね」
「まあな」
スピリタスは笑った。
「だが重要な任務だ」
その目が鋭くなる。
「十万の軍勢も食わねば戦えん」
「補給を絶てば、兵はただの空腹な人間になる」
兄弟も笑みを消した。
眼下では、長大な補給隊がゆっくりと進んでいる。
その中にいるはずの獲物を知らぬまま。
南の国随一の名将――バルカが。
「隊長! あ、あそこに!」
見張りの兵士が悲鳴のような声を上げた。
隊長が丘の上を見上げる。
そこには――
無数の騎馬。
朝日を背負い、槍が森のように並んでいた。
グラン軍だった。
「て、敵襲だ!」
「荷車を捨てろ!」
「逃げるぞ!」
隊長が叫ぶ。
その時だった。
「ちょっと待て」
背後から落ち着いた声がした。
振り返る。
粗末な旅装束。
マントとフードを被った男が立っていた。
「この食糧、敵にくれてやるのか?」
「な、なんだお前は」
男は呆れたようにため息をつく。
「バルカだよ、お前んとこの将軍」
そう言ってフードを外した。
日に焼けた顔。
鋭い眼光。
隊長の顔から血の気が引いた。
「し、失礼しました!」
慌てて敬礼する。
南の国最強の将軍。
その本人だった。
「ですが将軍!」
「相手は軍隊です!」
「こちらは護衛しか――」
「だからどうした」
バルカは荷車へ歩み寄る。
袋から麦をひとつ掴み上げると、軽く放り投げた。
「燃やせ」
「は?」
「全部だ」
「敵に食わせるくらいなら灰にしろ」
隊長は唾を飲み込んだ。
「で、ですが我々は補給部隊で――」
「知っている」
バルカは腰の剣に手を置く。
そして丘の上の騎兵たちを見た。
まるで獲物を見つけた猛獣のように。
口元がわずかに歪む。
「あとは……」
静かな声だった。
だが兵士たちは背筋を震わせた。
「どうしてくれようかな」
丘の上では、スピリタス軍の軍旗が風にはためいていた。
「おーい」
バルカは近くの兵士を手招きした。
「お前と、お前と、お前」
突然指をさされ、兵士たちは慌てて駆け寄る。
「はっ」
「後ろにいる守備兵を集めろ」
バルカは丘や林を指差した。
「あそこと、あそこと、あそこだ」
「そこで待ち構えろと伝えろ」
「バルカ将軍の命令だぞ、と付け加えるのを忘れるな」
「はっ!」
兵士たちは駆け出していく。
「合図は後でする」
そう言うと、バルカは再び丘の上を見た。
整然と並ぶグラン騎兵。
槍。
軍旗。
鎧。
どれも上等だった。
「それにしても……」
感心したように呟く。
「いい騎兵を持ってるな」
敵軍を見ているとは思えない口調だった。
まるで市場で名馬を眺める商人のようだ。
隊長は青ざめた。
「将軍」
「なんだ」
「相手は我々の何倍もおります…」
バルカは首を傾げる。
「わかってる、だから、逃げんなよ、逃げたら殺されるぞ」
そして笑った。
「さあこい」
補給物資から火の手が上がった。
黒煙が空へ昇る。
「あちゃー」
スピリタスは額に手を当てた。
眼下では荷車が燃え、
兵士たちが慌てて逃げ回っている。
だが――
それだけではなかった。
林の中。
丘の陰。
街道脇の岩場。
逃げた先がいい場所押さえてた。
騎兵が突撃しやすい場所だけが綺麗に塞がれている。
「行きますか?」
チャールズが尋ねた。
「マジで?」
スピリタスは呆れた顔をした。
「あれ見ろよ」
チャールズは目を凝らした。
「あ……」
「迎撃する気満々だろ」
ジョージも苦笑する。
「確かに」
「あそこに馬入れるの?」
スピリタスが指差す。
細い谷。
左右の林。
前方の槍兵。
そのさらに後ろに弓兵。
「ダメダメ」
首を振った。
「すごいな、南の国は」
「補給隊でこのレベルなのか」
兄弟は黙り込む。
あれは補給隊ではない。
補給隊の皮を被った軍隊だった。
「まあ」
スピリタスは馬首を返した。
「目的は達したしな」
背後では荷車が燃えている。
十万の軍勢を支える食糧は灰になる。
「帰ろうか」
「いいんですか?」
ジョージが聞いた。
スピリタスは肩をすくめた。
「補給を焼かせた時点で勝ちだよ」
「わざわざ戦う必要はないよ」
そう言って去っていく。
一方その頃――
丘の下ではバルカが腕を組んでいた。
「帰るのか」
少し残念そうに呟く。
「賢いな」
バルカは笑った。
「普通なら来るんだけどなあ」
「補給隊を見れば、皆そうする」
黒煙の向こうでグラン騎兵が離れていく。
「だがあいつは来ない」
「面白いな」
隊長が尋ねる。
「知り合いですか?」
「いや」
バルカは首を振った。
「だが名前は知っている」
そして丘の上の軍旗を見る。
「スピリタスか」
「なるほど」
バルカは小さく笑った。
「惜しかったな」
「もう少し馬鹿なら戦えたのに」
コメント
1件
うわっ、このバルカ将軍、めっちゃ強キャラのオーラ出てる……!笑 補給隊を燃やして迎撃態勢整えてるところ、完全に頭脳プレイで痺れた。 スピリタスが「馬鹿なら戦えたのに」って冷静に撤退するところも好き。二人の「賢い者同士の駆け引き」がじわじわ来る回だったな。 次、本当に戦うのか、それとも別の形で交わるのか気になる〜🤍🔥