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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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僕には、大嫌いな両親と、優しい兄がいる。

両親は僕を殴ったり蹴ったり、ものを買い与えてくれなかったりした。

俗に言う虐待だ。

兄はそれを知らない。

うちの両親は跡取りのことを考えている。

だからこの家で僕に権利は無い。

物心ついた時から殴られて蹴られて、ご飯もまともに貰えない。

身体中傷アザだらけで痩せこけた僕が学校に行ったらそりゃあ虐められるに決まってる。

そして不登校になった僕を両親は特に責めたりはしない。

「あんたが行事に参加しないおかげで教育費は消えるけど積立金は戻ってくるのよ〜」

との事らしい。

どちらにせよ払うのだったら少しでも戻ってきた方が親は嬉しいらしい。

虐待されることに変わりは無いけど。

「こいつがずっと家にいてくれるからな!ムカついた時はサンドバックが常にあるってもんよ!」

僕は毎日どうやってこの人生を終わらせるかをずっと考えていた。

でも……

「│歩斗《りく》!」

『兄さん…』

兄は生まれつき目が見えない。

しかも親は兄が見てない時に虐待をするから、兄はここを幸せな家庭だと思っている。

僕のこの傷なんて見えていないんだ。

「聞いて!俺、今度目の手術することになったんだ!」

『手術?』

「そう!成功したら、目が見えるようになるんだってさ!」

『そうなんだ…頑張ってね』

「おうよ!」

とても期待している兄には悪いが、目が見えるようになったら目の前にある地獄を見ることになるだろう。


そして手術は無事に終了。

兄に恨みは無いため、病院へ行って見舞いをすることにした。

街を歩いていると、視線を感じる。

それもそうだろう。

傷アザだらけの少年が歩いていたら、気にはなる。

そんな事は気にしないで病室へ行くと、そこには兄の姿。

『兄さん!』

「あ!り──」

「…く?」

兄は唖然としてこちらを見つめている。

(やっぱり、兄さんもこの体見て引いたんだろうな…)

そう思うと、僕はそこに居られなくなった。

『ごめん…果物、置いとくから…食べてね…じゃあ…』

僕は泣きそうになりながら家に逃げ帰った。

その夜。

僕は親に蹴られたり殴られたりしていた。

「お前!何も知らなかったりつに変なこと吹き込んだな!」

「これであたしたちのこと軽蔑したらどうするつもりなのよ!」

もちろん吹き込んだりなどはしていない。

聞いていると、どうやら僕の姿を見た律が親に事情を聞いたようだった。

親は僕を虐待していることは隠したみたいだけど、バレるのも時間の問題…と思っているようだった。

それから親は前よりも虐待が酷くなっていった。


1週間ほど経って、僕はいつものように殴られていた。

兄が今日帰ってくるから、早めにストレス発散をしておきたいのだろう。

「なぁ、これ殺したらどうなるかなぁ?」

今日はいつもよりも酷く殴られ蹴られ、刃物も使われた。

「ちょっとぉ〜殺さないでよ〜?児童手当お金貰えなくなっちゃうじゃないの〜」

「それもそっかー!ははははっ!」

「あははははっ!」

ふと視線を感じて扉の方を見ると、そこには兄が立っていた。

『に……さ…』

僕が呟くと両親は態度をゴロッと変えた。

「り、律?!帰ってこれたのね…! 」

「す、すまんなぁ迎えに行けなくて…」

「確か迎えの時間は1時間後のはずだったんだけど…!」

両親が慌てふためく間、兄は僕をずっと見つめていた。

そして、口を開いた。

「……」

「父さん、母さん、俺お腹すいたよ、外食行かない?」

「え……えぇ!そうね!行きましょう!」

「は、ははは!すぐに車を出すぞ!」

両親は急ぎ足で玄関の方に行き、兄は地面に這いつくばってる僕に口を動かした。

【に・げ・ろ】

そう伝えると兄は車に乗りこみ、両親と一緒に出かけた。


僕は車の音が聞こえた後、家から飛び出してひたすら走っていた。

どこに行こうか、どこまで行こうか、考えながら。

殴られ蹴られ切られた痛みがずっと痛み、まともにご飯を食べていないせいで足元がふらつく。

それでも、一生懸命走った。

死んでもいいからあの家から逃げる

そんな決意を持ちながら。

ただ、やはり限界が来ていた。

家の近く川沿いを走っていると、急に立ちくらみがして、柵にぶつかった。

(やばい…!ここで足止め食らったらまた…!)

何とかしがみつこうとしたが力が出ず、抵抗も無駄となり、川に落ちた。

この時に靴が脱げてしまったが今はそれどころでは無い。

(死ぬ……!)

そう思った瞬間、僕は意識を失った。


──い、おーい

「おーい」

『!!』

目が覚めると、そこには神社と、1人の少女がいた。

「あ、起きたあ」

『ここは…』

「ここは麗流楼水!居場所のない人が集まる町だよ!」

『居場所…』

「そう!君も心当たりあるでしょ?」

『……』

「良ければ話してみて」

僕は今まであったことを話した。


「なるほど…お兄さんは助けてくれたんだね」

『うん』

「じゃあ、お兄さんのためにもここで幸せになろう!」

『うん…!』

「実鳴 歩斗くん、君を麗流楼水に歓迎します!」


「この靴…玄関にあった…しかもボロボロで…」

「まさか…歩斗……?」

麗流楼水〜過去編〜

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