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花月夜れん
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柴田
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#バイオハザード
そまもんた@ペア画募集
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シオンは気絶したミユを、平たい木製のベッドへと運んで寝かせる。俺はみんなを動けるように治癒してやり、辺りを見回した。シンがランプに火を付けると、岩のテーブルや簡易的なキッチン、木の板で仕切られた個室がよく見えるようになる。
なるほど、洞窟暮らしにしては、よくできた家だな。俺とカグアはテーブルに案内されるがままに座った。シオンがキッチンへと向かい、湯を沸かし始める。
「一時休戦、かしらね。いいかしら、『天子』君?」
「あぁ、構わないぞ。どのみち、お前たちのことはよくわかった。それより教えてくれよ! 『狂奔』って、なんなんだ?」
そう言うと、アリスは悩ましい顔でみんなを見る。しばらく見つめ合ったあと、はぁ、とため息をついた。
「教えないって言ったら?」
「わかるまで研究する!」
「そうよね⋯⋯いいでしょう、『天子』⋯⋯いえ、アステル君。君を信用してみるわ」
そう言うと、アリスの語りが始まる。
「『狂奔』は、私たち異邦人特有の現象でね。わかりやすく言えば、力の暴走よ」
「原因は?」
「極度のストレスや、感情の昂り。魔力の器を持って召喚された通常の転移者と違って、異邦人は大気中の魔素を身体に通して、そのまま事象として出しているのよ」
「なるほど、魔力の器か⋯⋯」
「魔術師たる君なら知っているでしょうけど⋯⋯魔力の器は、魔素を魔力に変えて体内に溜め込むための、大切な機関。それがない私たちは戦闘時、呼吸で無理やり魔素を取り込んで、そのまま事象として解放するの。余裕がなくなって慌てたミユは、魔素を取り込みすぎて暴走したってわけ。それに、異邦人は魔素の影響を受けやすいこともあるから⋯⋯ほら、この髪だって魔素の影響で変色してるのよ」
う⋯⋯それは悪いことをしたなぁ。あれ? でも⋯⋯。
「要するに、魔力の器がないから、魔素をコントロールしきれていないってことだよな?」
「ええ、そうなるわね。私たちだって、万全ってわけじゃないわ。そうでなきゃ、シンが触れただけで爆発するなんてことはないし、ディランも話すことすべてが『呪言』になったりしないもの」
確かになぁ。みんな微妙に操れてなかったかも。だがまぁ⋯⋯おかげで解決策はわかったぞ!!
「なぁ、手を握ってくれないか?」
パチリと目を覚ましたミユは、慌ててベッドから飛び起きる。小さな木の扉を開けて外を覗く。戦闘の音は消え失せ、すっかり明かりがついている。温かな料理の匂いと人の笑い声がした。
「おっ、起きたか、ミユ!」
「シン! これって、いったい⋯⋯」
「腹、減っただろう? 今、シオンが夜食作ってるから⋯⋯」
そう言ってシンはミユを席につかせる。そして、ミユの目の前にいたのは⋯⋯。
「おっ、大丈夫か? 無理させてごめんな」
「『天子』!? なんでみんなとご飯食べてるのさ!? てゆーか、それボクの服だし!!」
「しょうがないだろー、お前に燃やされたんだから。原型は残ってるけど、所々破れちゃったしな⋯⋯身体はどうだ?」
そう言って俺は、ミユにローブを脱いでみるよう促す。
「⋯⋯変態?」
「違うよー。鎖が勝手に出ないか、確かめてくれって言ってるんだ」
「フフッ、アステル君が私たちに、魔力の器を作ってくれたのよ!」
酒瓶を片手に、アリスは手をひらひらとさせる。アリスの片手の甲には、アラベスク模様の術式が刻まれていた。シンにはトゲトゲマークを片肩に。シオンは首に雪結晶のマークを。ディランの目元には、渦を巻いた闇を連想させる模様が。
「擬似的な器だがな。機能は本家とまったく同じだよ。魔素を魔力に変換できるし、ちゃんと魔力も溜まる。力もコントロールできる。お前にも、背中に刻んでるぞー」
それを聞いたミユは、ローブを脱いで鏡を振り返る。天使の翼のような形がハッキリと見えた。
「ホントだ! ローブを脱いでも、鎖が出てこない⋯⋯!」
「よかったなぁ、ミユ。これならいろんなオシャレができるぞ」
ミユの警戒していた声色も明るくなり、シンが高い高いをして共に喜ぶ。
「それに、ほら! ディランも喋れるのよ! まだ慣れてないみたいだけど⋯⋯」
「元々恥ずかしがりやだったんだなぁ、ディランは。ワタシも、ローブを脱いでも霧になったりしないぞ!」
「わあっ、ホントだ! 今度、体重計ってみようよ、シオン!」
俺は串焼きを食べながら、はしゃいでいるみんなを眺める。よしよし、全員大丈夫だな。
「それにしても、なんでミユは屋敷に侵入してきたんだ?」
カグアが俺から鶏肉を1つ受け取りながら、みんなに聞いている。確かに⋯⋯なんで家にきたんだろ。
「うっ、それは⋯⋯」
「馬鹿みたいに強い魔剣が完成したとか、新しく『天子』っていう魔術の天才が現れた、とか噂があったから⋯⋯」
「てっきり戦争準備でもしてるのかと警戒して、偵察を⋯⋯」
なるほどなぁ。そういえば、戦争がなんとかって、密会のときにミユが言ってたっけ。
「あのなぁ、戦争なんかこの人がするわけないだろ! 魔剣作ったのも、ここまで来たのも、アステル様のただの魔術研究だ!」
「研究でここまでやる貴族の子供なんて、ボク聞いたことない!! それに、翼がある狸も! なんか可愛いし⋯⋯」
「まあまあ。早く食べないと、なくなっちゃうわよ〜? ミユ」
「ンもう! アリスはお酒しか飲んでないでしょ!」
「今日はラッキーな日だから、無礼講よ〜」
そう言うと、シオンに酒のおかわりを催促していた。シオンは、身体に悪いし貧乏なんだからと、頑なに断っている。これがいつもの暮らしか⋯⋯家族って感じだ。
「それに⋯⋯アステル様には、いろいろと迷惑かけちまったからな⋯⋯このことは話しておくべきだろう」
⋯⋯なんかめんどくさそうになってきたな。
「私も賛成よ。アステル君なら、この現状も打開してくれる気がする」
⋯⋯いや、俺はお前らの研究を⋯⋯。
「ワタシもアステル様を信じるよ。話してもいいんじゃないか?」
「あぁ、そのつもりだ。アステル様⋯⋯少し長い話になるが、聞いてくれ⋯⋯」
「いや、いいって⋯⋯」
「聞いてあげましょうぜ、アステル様!」
ええい、うるさいぞ、カグア。
「1つ⋯⋯頼みごとがあるんだ。そのためには、まずは話さなきゃいけねぇ。この『ノクス協会』ができた経緯と⋯⋯この組織を作った、俺たちの唯一のリーダー⋯⋯」
はぁ、もう帰ろ⋯⋯。
「『瞬時空間転移』というスキルを持って召喚された異邦人⋯⋯『黒空のユウマ』についてを!!」
そう言うとシンは、1枚の手配書を見せる。そこには少し長い髪をウルフカットにして、コチラを横目に見る男の似顔絵が。
「⋯⋯? アステル様?」
俺はワナワナと震えた。それはもちろん、帰りたいからなんて理由じゃない⋯⋯。
『 瞬 時 空 間 転 移 』だと⋯⋯?
空間属性自体がスキル化した!? それも瞬時に可能だって!? 魔術でさえ、その領域には至っていないというのに!!
そんなのって⋯⋯そんなのって⋯⋯。
さ い こ う じ ゃ な い か ! !
これは放ってはおけない。ぜひとも研究したい⋯⋯!
「もちろん、聞こうじゃないか」
コメント
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うわっ、この第21話、めちゃくちゃ良かったです! まず「狂奔(オーバードライブ)」の仕組み説明、なるほど〜って納得。魔力の器がない異邦人の特性が伏線になってたんですね。その解決策としてアステルが擬似的な器を作っちゃう展開、天才すぎます。 個人的に一番グッときたのは、ディランが喋れるようになったシーン。元々恥ずかしがり屋って設定が表に出てきて、キャラに深みが出ましたね。 そして最後のユウマの手配書…!瞬時空間転移スキルに食いつくアステルの研究馬鹿っぷり、最高に好きです。これは続きが気になる!