思い出してしまった……
無意識にしまっておいたはずの記憶を……
別に陽夏と静花が悪いと思っている訳ではない。いつかはこれを取り出さなければならないときが来るのも分かっていたことなのだろう。でも、少し早すぎた、と思う。もう少し、何も考えず過ぎていく日常を過ごしてみたかった。今まで抱えてきたものを全て放り出して、ただ昇る朝日を、沈む夕日を、眺めていたかった。そう望んでしまうのは自分勝手だろうか?……そんなこと聞くまでもないのかもしれない。だってこの思い出の引き出しはどうせ一人じゃ開かないんだと、私一人のものじゃないんだと知ってるから。この思い出は、陽夏と、静花と、今まで出会った人たちが一緒に創ってくれたものだから。もちろん、いいものばかりじゃない。辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、そんなものも数え切れない程あるんだと思う。でも、そのマイナスをプラスにするくらいの楽しいことが、嬉しいことが、この引き出しには詰まっている。……あれ?なんで私、こんなに思い出を閉じ込めていたんだっけ?辛いことがあれば、誰かに相談すればいいのに。ひょっとして、そんなことを忘れちゃってたのかな?まぁいいや、とにかく今は助けてくれる人がいるんだから、一人じゃないんだから、前に続いている“路”を歩いていけばいいはずだ。
誰かが私を呼ぶ声がする。
「……る…」
誰かが手を伸ばしてくれている。
「は……‼」
“もう一度、一緒に路を歩こう”と。
「晴!!」
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