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その後撮影隊一行は三沢家具店を出発した。

次はカフェでランチを取りながら岳大にインタビューをするらしい。

撮影場所に選ばれたカフェはこの間優羽が行った駅前のカフェだった。撮影今日は取れていたので一行は車を降りてカフェへ向かう。インタビュー撮影後はスタッフもそこで休憩するようだ。


カフェは一階にパン屋を併設していたが二階にはパスタやドリアなどのメニューもある。

岳大はパルメザンチーズのボロネーゼを頼み保坂やカメラマンと窓際の席へ座る。優羽達スタッフはそれぞれが好きなメニューを頼んで通路を挟んだ隣の席へ座った。

窓際の席では既にインタビューが始まっていた。


インタビューが終わると、料理が運ばれてきたのでそれぞれ食べ始める。

優羽がエビとアボガドのバジルソースパスタを食べていると突然兄の裕樹がやって来たので優羽が驚く。裕樹は市役所の職員を二人連れていた。


「お兄ちゃん!」


優羽の声に皆が一斉に振り向いた。

すると裕樹が言った。


「お取込み中申し訳ありません。ディレクターの保坂さんはいらっしゃいますか?」

「私ですが」

「どうも、初めまして。私、市役所に勤務しております森村と申します。先日お電話をいただいた」


裕樹は保坂に名刺を渡した。


「ああっ! あの時は撮影許可をいただきましてありがとうございます」


保坂も名刺を出して裕樹に渡す。そしてしばらく二人で談笑した。

話が一段落すると保坂は優羽を見て聞いた。


「森村さんのお兄さんですか?」

「はい」


そこで保坂が裕樹に言った。


「撮影には妹さんにもご協力をいただき感謝です」

「とんでもないです。妹がちゃんとお役に立てているかどうか」


そこで岳大が口を挟む。


「優羽さんがいてくれてとても助かっていますよ」

「あ、佐伯さん、ご無沙汰しております。こちらに移住して来られたと聞いてとても嬉しいです。落ち着いたら今度ゆっくり飲みに行きましょう」

「ええ是非!」


その時裕樹が連れて来た二人の市役所職員のうちの一人が咳ばらいをしたので裕樹は「あっ!」と思い出したように二人を紹介した。二人は総務部と観光課の職員だった。


有名番組の『ネイチャーストーリーズ23』に町が取り上げられる聞いて二人は市長からくれぐれもよろしくお伝えするようにと言われて来たようだ。

しばらく立ち話をした後裕樹達三人は市役所へ戻って行った。

帰り際兄の裕樹は優羽に言った。


「じゃあ頑張れよ!」


裕樹達の後ろ姿を見ながら保坂が言った。


「森村さんのお兄さんは役所にお勤めだったんだね。妹思いのいいお兄さんですね」

「はい、うちは母子家庭だったのでずっと兄が父親代わりをしていてくれたので」


保坂は一瞬驚いていたがその後すぐにうんうんと頷いた。


食事が終わると保坂が最後にもう一店舗くらい寄って撮影したいが何か良い店はないかと皆に聞く。

スタッフ達は地元の人間じゃないのでわからないと口を揃えて言う。岳大もホームセンターやスーパーくらいしかまだ行っていないのでわからないと答えると保坂が優羽に聞いた。


「お知り合いの店とかでどこかありませんか? 出来れば若い人がいいかな? 若者がこの町で頑張っているんだぞっていう雰囲気を撮りたいかなと」


そこで優羽はピンときた。


「東京からUターンして戻って来た女性が素敵な雑貨店を営んでいます。そこはいかがでしょうか?」

「いいですね。お願いします」


保坂がすぐに同意したので優羽は慌てて桜井美和にメールを送る。


「びっくりー! 全国放送のテレビ番組でしょう? 緊張するけどうちなんかでよろしければどうぞ。お待ちしています」


美和からOKを貰ったので一行は雑貨店へと向かった。


そして早速美和の店の取材の準備が始まる。

撮影前に優羽が美和に「突然でごめんなさい」と謝ると、美和は宣伝になるから逆にありがたいわと言って笑った。


撮影クルーが準備をしている間岳大と優羽は先に店に入り中の様子を見て回る。美和はレジの前で保坂に説明を受けていた。


「佐伯さんは雑貨屋にはあまり来ないですよね? ここで良かったのかな?」

「普段こういう店には来ないので逆に興味深いです。折角ですから事務所で使う物を少し購入しませんか? 優羽さんのセンスで選んで下さい」

「私がですか?」


優羽がびっくりして聞き返すと岳大は笑顔で頷いた。


この店には食器も豊富に揃っていたので事務所で使うカップを購入する事にした。二人が真剣に選んでいるといつの間にか撮影が始まっていた。

そこで美和が二人に説明する。


「こちらの器は全て地元の若い陶芸家が作った器なんですよ」


岳大はその器に俄然興味を示した。なぜなら岳大は夢に向かって頑張る若者達を常に応援するようにしていたからだ。

器を手に取ってみるとどれも味わいがあり手に馴染む。


「この中から選ぼうか?」


優羽は頷いた。


二人で相談した結果、全て違う作家のカップを5客買う事にした。ソーサー付きの来客用にも使えるデザインだ。

どれもあたたかみのある作品でそれぞれ違う作家の器なのに不思議と統一感がありしっくりくる。これで飲むコーヒーはきっと美味しいに違いない。

その他にも事務所で使うスリッパも揃えた。


二人は買い物に夢中になっていたのでカメラの存在をすっかり忘れていた。そのお陰で二人の自然なやり取りがカメラに記録されていった。


自分の勘が正しければこの映像は後にきっと役に立つはず…….保坂はそう確信していた。



撮影を終えたスタッフが外の歩道で機材の片づけをしている間、優羽と美和は店に残り立ち話をしていた。


「今日は急だったのに本当にありがとうございました」

「いえいえこちらこそお店を有名にしてもらえて感謝よ」


美和は嬉しそうに笑った。


「ところで優羽さんと佐伯さんはお付き合いしているの?」

「え? ううん、していないわよ」


びっくりした優羽は慌てて否定する。


「ふーん、そうなんだ」


と何か言いたげな様子だ。


「どうしてそんな事を聞くの?」

「だって佐伯さんの目から優羽さんの事が好きで好きでたまらないっていうビームが出ているもの」


美和の言葉に優羽が驚く。


「そんな、気のせいよ」


優羽は顔を赤くしながら必死で否定した。そこで美和が諭すように優羽に言う。


「私達はバツイチで子供もいるけれど恋はしてもいいんだからね」

「えっ? 美和さんって恋人いらっしゃるのですか?」

「もちろん! 子供がいたって独身なんだもん、恋愛は自由でしょ?」


美和が笑顔で言ったので優羽は驚いて何も返せなかった。

そこへスタッフが来て言った。


「森村さん、そろそろ車が出ますよー」

「あ、はい、今行きます!」


スタッフが出て行くと、美和はまたニッコリ笑って言った。


「今度飲みに行こうよ。その時またゆっくり話しましょう」

「はい、是非!」


優羽は笑顔で約束するとバスに乗り込み雑貨店を後にした。


バスに戻った優羽は隣にいる岳大を急に意識し始めていた。


『だって佐伯さんの目から優羽さんの事が好きで好きでたまらないっていうビームが出ているもの』


優羽の頭の中には先程美和が言った言葉が何度もこだましていた。

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