テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「美花さん……」
ストレートロングの明るい髪色から香り立つ、花のような匂いに、圭の鼻腔がそっと撫でられると、美花に気付かれないように、小さく息を吐き切る。
「…………俺の……彼女に…………なって欲しい」
「…………っ……」
多くの人たちが二人の周囲を交差する中、圭は憚る事なく率直に想いを告げる。
「君の事が…………美花さんの事が…………好きなんだ」
「…………」
美花はまだ、無言のままでいる。
喧騒も聞こえず、一枚の写真のように二人が切り取られた感覚に陥る圭は、この一瞬を慈しむように美花を掻き抱き、滑らかな首筋に顔を埋めた。
「…………しい……」
声にならないような声音が、美花の唇から零れる。
圭の腕の中に閉じ込められた彼女が、身じろぎさせながら、ぎこちなく彼と向かい合った。
「おにーさん…………私…………うれ……し……い……」
顔を赤らめた美花が、笑みを滲ませながら、圭に眼差しを絡ませてくる。
「私もずっと…………おにーさんの事…………好きだっ…………たか……ら……」
互いに同じ想いを抱いていた事を知った圭は、美花の腰と後頭部に腕を回して抱き寄せる。
「これからは…………一緒に…………二人だけの時間を……刻んでいこう」
「…………うんっ」
「それから…………」
圭は、抱きしめていた腕を解き、小さな肩に両手を添え、大きな瞳に眼差しを辿らせる。
「もう…………『おにーさん』なんて…………呼ばせない」
薄く開いた美花の唇を見やりながら、圭の喉元がキュッと締め付けられていくと、彼女の顎(おとがい)に筋張った指先を掛けていく。
「…………美花……」
愛おしい女の名前を囁きながら、圭は、美花の腰に腕を絡ませ、顔を傾けさせながら彼女の顔を引き寄せると、そっと唇を重ねた。
***
185