テラーノベル
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シャーウッドの森には、
愉快な仲間たちが暮らしていました。
毎日、笑ったり、
食べ物を分け合ったり、
楽しく暮らしていたのです。
――ところが、
今日は少し様子が違います。
焚火を囲んだ仲間たちの前で、
青いマントを羽織った、
片腕の男が声を張り上げていました。
「この悪政の元凶は、
すべてカルド王のしわざだ!」
「あと、あいつには毎回ひどい目に遭わされている!」
「そんなやつが王をやっているから、
国がおかしくなるのだ!」
「今こそ立ち上がれ!」
「王を倒し、
エスカリオに愛と平和を取り戻すのだ!」
子供たちは、
「おおーっ!」
と大盛り上がり。
しかしロビンとマリアンは、
なんとも言えない顔で互いを見つめました。
「……あれ?」
「俺たち、そんな話してたっけ?」
ユンナは頭を抱えながら、
小さくつぶやきました。
「どうしてこんなことになっちゃったの……?」
お話はこの3週間前に
さかのぼります
「えー、いやだよ」
「でも、せっかくのお誘いですし」
「ユンナだけ行けばいいじゃないか」
「そんなわけにはいかないでしょ」
サイラスは、
心の底から嫌そうな顔をしました。
「でも知ってる?」
「カルドのところの食事って、
肉に胡椒をかけただけとか、
魚とジャガイモを揚げただけとか、
そんなのばっかりなんだよ」
「出汁の概念がまったくないんだ」
ユンナは、
なんとも言えない顔になりました。
あらあら。
どうやらこの男の人、
王様に会うのが嫌なだけでは
ないみたいですね。
「じゃあ、こうしましょう」
「ノッテンガムのおば様に、
お見舞いがてら会うついでに」
「カルド王のところへ
寄るというのは?」
「……わかったよ」
サイラスは、
とても嫌そうにうなずきました。
「じゃあ、パンとワインだけは
こちらから持っていこう」
「わかりました」
ユンナは、
くすっと笑いました。
ちょっとエスカリオの食事って
そんなにひどいですか
失礼しちゃいますよね
海を渡り、
馬車に乗り、
ノッテンガムのおばさまの
お見舞いをすませた二人は、
帰りの馬車へ向かっていました。
その時です。
いきなり、
黒い布が目の前をおおいました。
「むぐっ!?」
サイラスもユンナも、
大きな黒い袋へ入れられると、
そのままどこかへ
連れていかれてしまいました。
「違うような……気がする」
「いや、あやしいよ」
「だって代官の家の近くの道に止まってたんだぞ」
「じゃあ決まりだな」
「悪い奴の仲間だ!」
どうやら子供たちが、
二人を誘拐したみたいです。
でも、サイラスもユンナも、
状況がよくわかっていません。
それにサイラスは、
痛いのが大嫌いです。
そのため、
おとなしく縛られ、
目隠しをされていました。
「だれが悪い奴だ!」
「わあっ!」
「びっくりした!」
ユンナが縄と目隠しを外すと、
目の前には、
子供たちがずらっと並んでいました。
サイラスは袋を見ながら、
うんざりした顔で言いました。
「まったく……」
「この黒い袋、どこで売ってるんだ」
「怖い女王様を思い浮かべたぞ」
一番年上らしい少女が、
震える手で短剣を構えました。
「じっとしていてください!」
「動かないで!」
少女は子どもたちを背中へかばいながら、
必死な声で叫びます。
「王都の役人でしょう!」
「みんなから集めたお金を、
持っていくために来たんでしょう!」
サイラスは、
その様子を見て小さく息を吐きました。
「わかった」
「もう一回縛っていい」
「何もしない」
そう言って、
隣のユンナへ目配せします。
ユンナは鞄からパンを取り出し、
子どもたちへ渡しました。
子どもたちは夢中でかじりつきます。
よく見ると、
服は汚れ、
ところどころ破れていました。
サイラスは少女へ視線を向けます。
「君は食べないのか?」
「名前は」
少女は小さく首を振りました。
「……マリアンといいます」
少女はぽつりと名乗りました。
そして少しづつ話をし始めました
「もとは、この土地の領主の娘でした」
「でも父は前の王に仕えていたので、領地を取り上げられたんです」
今は小さな畑を耕しながら、
なんとか暮らしているという。
「それだけなら、まだよかったんです」
マリアンは俯きました。
「森が“王様の森”になって、みんな追い出されることになりました」
「新しく来た代官、ノッテンガム卿は
“森を守る法律”を理由に、
村人たちへ重い罰や税を押し付けてきたのです」
「そんなとき」
「ロビンは……森で王様の鹿を鹿を射ったんです」
「戦争で孤児になったこの子たちを、食べさせるために」
「それで追われる身に……」
その時、
扉の向こうで人影が揺れました。
サイラスは気づきましたが、
あえて何も言いません。
マリアンは不安そうに続けます。
「私、怖いんです」
「ロビンがいつか、取り返しのつかないことをしそうで……」
「ごめんなさい。縛って悪かったです」
「明日にはこの森を出ていきます」
すると扉が開き、
緑の服を着た少年が姿を現しました。
背には弓。
鋭い目でサイラスを睨みます。
「悪かったな」
「でも、もう限界なんだ」
少年は低い声で言いました。
「畑まで取り上げられようとしてる家もある」
「重い税で、娘を売ろうとしてる家まである」
「逆らえば盗賊扱いだ」
「だからもう奪うしかないんだ」
「悪い役人や金持ちから」
その瞬間。
サイラスは、
いつの間にか縄を外して立ち上がっていました。
「そうだ」
「すべてカルドが悪い」
ユンナが呆れた顔になる。
「エスカミオで起こる犯罪の半分は、あの男のせいだ」
「安心しろ」
「この私に任せておくのだ」
サイラスは、
妙に楽しそうな笑みを浮かべ
子どもたちの前で演説を始めました
その顔を見たユンナは、
小さくため息をつきます。
――ああ。
また面倒なことになりそうです。
エスカミオ王宮――
食卓に並んでいたのは、
驚くほど質素な夕食だった。
黒パン。
薄い豆のスープ。
そして小さな干し魚が一匹。
カルド王はしばらく無言で眺めたあと、
隣の王妃エレノアを見ました。
「あれっ?」
「エレノア、今晩のごはんこれだけ?」
「そうですよ」
エレノアは涼しい顔で答える。
「これはないんじゃないの」
「厩舎の馬だって、もっといいもの食べてると思うよ」
「税が上がったのです」
「だってうちら取るほうでしょ」
エレノアはじろりと夫を見る。
「国民のお財布は、私たちのお財布と同じです」
「リチャードの帰国パーティーも延期しましたし」
カルドは露骨に嫌そうな顔になった。
「あれ楽しみにしてたのに……」
「贅沢は禁止です」
「王ってつらいなあ」
他人事みたいにぼやきながら、
カルドは干し魚をつつく。
その様子を見ていたジョン王子が、
小声で呟いた。
「でも税を上げなければって言ったの父上ですよね」
「国の金庫が空だから仕方ないだろ!」
「戦争ってお金かかるんだぞ!」
するとエレノアが、
ふと思い出したように言った。
「ところで、サイラスさんはいついらっしゃるのかしら」
「ああ、それなんだが……」
カルドは少し表情を曇らせた。
「どうもノッテンガムあたりで、消息を絶ったらしい」
「あらまあ」
エレノアは口元に手を当てる。
だがカルドは、
それほど深刻そうではなかった。
「まあ、あいつのことだ」
「心配はいらんとは思うが……」
そう言いながら、
机の端へ置かれていた報告書へ視線を落とす。
そこには、
ノッテンガム地方の徴税調査について、
びっしりと文字が並んでいた。
“徴収額と王都への納入額が一致しない”
“複数の村で不自然な失踪者あり”
“代官による私兵の増強を確認”
カルドは報告書を閉じ、
ぼそりと呟いた。
「……まさかね」
だがその顔は、
少しだけ険しくなっていた。
コメント
1件
あっ、読み終わったよ〜!!😭💕 まず冒頭の「愉快な仲間たち」って雰囲気からの急展開、好きすぎる…! しかもロビンとマリアンの「俺たちそんな話してたっけ?」って顔、完全に萩の月じゃんwww サイラスが楽しそうに演説始めるところ、もう何この尊いトラブルメーカー様…🥺💫 王様側の質素メシ描写もツボ。続きが気になりすぎる〜!✨
立秋 芽々(りしゅう めめ)