テラーノベル
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信愛は龍河を真っ直ぐ見つめ、強い意志を宿した瞳で訴えた。
「馬場さん!私も一緒に連れて行ってください!」
龍河は思わず目を見開く。
「はぁ!?何言ってんだ!」
信じられないというように声を荒げ、険しい表情で続ける。
「状況分かってんのか? 今から敵の本拠地に
乗り込もうって、そんな状況なんだぞ?」
それでも信愛は一歩も引かなかった。
「わかってます!」
小さく息を吸い、言葉を続ける。
「けど・・・お母さんの事が心配なんです!」
その必死な想いに、龍河は苦い表情を浮かべる。
「そりゃ気持ちは理解できるが・・・」
しかし信愛は首を横に振った。
「黙って家で待ってる
だけなんて私には出来ません」
その言葉に、焔垂が前へ出る。
「俺たちも一緒にお願いします!」
続いて茜も力強く頭を下げた。
「お願いします!」
龍河は思わず額を押さえた。
「お、おい、お前らまで・・・」
やがて真剣な眼差しで全員を見渡す。
「何が起こるか分からねーんだぞ?
最悪、命の危機に直面する可能性だってある!」
静まり返った部屋の中で、龍河の言葉だけが重く響く。
「それでも行くって言うのか?」
迷いはなかった。
「覚悟してます!」
信愛の言葉に続き、朝陽も拳を握り締める。
「ぼ、僕もです!」
自分のために危険を承知で立ち上がってくれる仲間たち。
その姿を見つめた信愛の瞳には、熱い涙が浮かんでいた。
「みんな・・・」
龍河は大きくため息をつき、肩をすくめる。
「連れて行ってやりてーが・・・」
少し考え込んだあと、現実的な問題を口にした。
「編集長と俺が車に乗って、君たち5人を
乗せたら7人になっちまう。ウチのハイエースは
6人乗りだから、全員は連れて行けねーぞ」
すると編集長の忍が穏やかに笑った。
「なら俺が残ろう」
龍河が驚いたように顔を向ける。
「へ、編集長が!?」
忍は静かに頷く。
「多摩雄さんを病院に連れて行く人間が必要だろ?」
その言葉を受け、美月も口を開いた。
「車なら私が乗って来た車がありますから」
白縫家の玄関先には美月が乗ってきた、ホンダのフリードが停めてある。
龍河は腕を組み、顎に手を当てながら考え込む。
「うー・・・ん」
しばらく沈黙が流れたあと、ようやく決心したように頷いた。
「はぁ〜・・仕方ねーな・・・」
信愛が期待を込めた眼差しを向ける。
「それじゃあ馬場さん・・・」
龍河はその言葉を遮るように真剣な声を発した。
「いいか?これだけは約束してくれ」
全員が息を呑む。
「今から向かうのは教団の根城かもしれない
さっき言ったように命の危機に直面する
そうなる可能性はゼロじゃ無い・・・」
龍河は一人ひとりの顔を見渡しながら続けた。
「俺が危ないと判断したその時は車の中で
待機しててもらう。それが条件だ。
それを約束できるなら全員連れて行く!いいか?」
静寂の中、信愛はゆっくりと頷いた。
「はい・・・約束します」
信愛の返事を聞くと、龍河はようやく肩の力を抜いた。
「・・・・わかった」
短い一言だったが、その声には彼なりの覚悟と信頼が込められていた。
部屋に安堵の空気が広がる。
信愛は胸に手を当て、小さく息を吐く。張り詰めていた緊張が少しだけ解けた。
しかし、これから向かう先が危険な場所であることに変わりはない。
誰一人として、その事実を忘れてはいなかった。
焔垂は静かに拳を握り締め、朝陽は唇を結ぶ。
茜とさくらも真剣な表情で仲間たちを見渡す。
編集長の忍はそんな若者たちを眺め、穏やかに微笑む。
それぞれが役割を果たし、それぞれが守るべきもののために動こうとしている。
龍河は全員の顔を一人ずつ見回した。
誰も恐れていないわけではない。
それでも、一歩も引くつもりはない。
その覚悟を確かめるように頷くと、龍河は静かに口を開いた。
「準備を済ませたら出発するぞ」
その一言を合図に、怪異探求倶楽部の面々は、天縁教団の根城かもしれない新開村跡地へ向けて動き出そうと決意する。
◇ ◇ ◇
すると龍河は、思い出したように多摩雄に近づいていく。
「では、お父さん?」
多摩雄はゆっくりとうなずく。
「はい・・・」
龍河は丁寧に頭を下げた。
「申し訳ありませんが、しばらくの間
スマホをお借りしてもいいでしょうか?」
その言葉に、忍が首をかしげる。
「スマホをですか?」
龍河は静かに説明を続けた。
「GPSアプリを頼りに動きたいんです。
その為には、お父さんのスマホが必要になります」
多摩雄は迷うことなく答えた。
「わかりました」
龍河は念のため確認する。
「念の為に暗証番号をお聞きしても?」
「暗証番号は7108です」
「ありがとうございます」
龍河はスマホを受け取り、大切そうに胸ポケットへしまうと、振り返って忍と美月を見た。
「じゃあ編集長、それから赤迫先生
お父さんを病院までお願いしますね」
忍は力強くうなずく。
「ああ、まかせろ」
美月も静かな眼差しで龍河たちを見つめた。
「馬場さん・・・みんなをよろしく
お願いします。大切な教え子なんです」
龍河は真剣な表情で深くうなずく。
「はい・・・もちろんです」
その声には迷いがなかった。
「必ずお守りします」
美月は安心したように微笑み、今度は信愛たちへ向き直る。
「みんな・・・無茶したらダメよ?
絶対だからね?分かったわね?」
信愛は真っ直ぐに頷いた。
「はい、わかってます」
その返事を聞いた龍河は仲間たちを見渡し、小さく息を吸う。
「なら、みんな」
静まり返った部屋に、その一言が響く。
「行こうか」
信愛は決意を胸に、力強くうなずいた。
「はい・・・」
そして、その瞳に覚悟を宿したまま、もう一度はっきりと言った。
「お願いします」
その言葉を合図に、一同は天縁教団の手掛かりを求め、未知の危険が待つ目的地、新開村跡地へと歩みを進めた。
コメント
1件
美月ゆめかだよ〜🌸✨ 第281話、読了したよ!もうね、信愛ちゃんの「お母さんが心配なんです!」って台詞にグッときた😭💕 龍河さんの「連れて行くけど条件がある」ってリーダー感がめっちゃかっこいいし、編集長が自ら残るって決めたのも温かいなって思った! みんなで決意を固めて新開村跡地へ向かうラスト、すごくドキドキしたよ…! 絶対に無事で帰ってきてほしい! 次話も楽しみにしてるね⋆♡
#ボカロ
ありあ
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ありあ
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