早朝奈緒が目を覚ますと、奈緒は省吾に腕枕をされながらピッタリと寄り添い寝ていた。
省吾の肌の温もりと安らかな寝息を感じながら、奈緒は安心したようにまた眠りにつく。
その後数時間経ってから、再び奈緒は目覚めた。
朝の眩しい光が窓から降り注いでいる。空は青く澄んで今日も快晴だ。
ふと隣を見ると、省吾の姿はなかった。
(あれ? どこに行ったのかな?)
そういえば、明け方奈緒が眠っている間に、額にキスをされたような感覚があった。
てっきり夢だと思っていたが、あれは先に目覚めた省吾のキスだったのだろうか?
奈緒はベッドから起き上がると、椅子の上に置いてあった衣服を身に着ける。
その際、腕と足が筋肉痛で少し痛かった。
昨夜はあの後も省吾に何度も愛された。
省吾は奈緒の事を抱く度に新しい感覚を植え付けていく。その情熱的な愛の手ほどきに、奈緒はすっかり翻弄されっぱなしだった。
昨夜の事を思い出したたけで、奈緒の身体の芯の部分が疼く。
着替えを済ませた奈緒は、寝室を出てリビングへ向かった。
しかしリビングにも省吾の姿はない。
その時、玄関で物音がした。
奈緒が廊下へ行くと、手に袋を提げた省吾が玄関から入って来た。
「起きたね、おはよう!」
「お、おはようございます。どこへ行ってたの?」
「下のコンビニで朝食を買ってきた」
省吾は微笑むと手に持った袋を持ち上げる。
「ありがとうございます」
「シャワーを浴びるならそこのドアがバスルームだからどうぞ」
「シャワーは家に帰ってからにします」
「じゃあ顔を洗っておいで」
「はい……」
奈緒はリビングに置いていたバッグから化粧ポーチを取り出すと洗面所へ向かう。
省吾が出勤する時間が迫っていたので、あまり時間がない。
省吾は既にシャワーを浴びたようで、ほんの少し髪が湿っていた。
昨夜省吾はあんなにも奈緒に尽くしてくれたというのに、疲れは全く見せずにパワーに満ち溢れている。
奈緒は洗面所へ行くと、素早く顔を洗ってから軽くメイクをする。
そして、
「フーッ、なんだか恥ずかしい」
そう呟くと、頬をペチペチッと叩いてから気合を入れた。
それからリビングへ戻ると、部屋にはコーヒーの香りが漂っていた。
省吾がコーヒーを淹れてくれたようだ。
(いつもと逆だわ……)
奈緒はクスッと笑う。
一方、省吾は買って来たものをテーブルの上に並べながら考え事をしていた。
奈緒との身体の相性はバッチリだった。
40歳になる省吾は、これまで様々な女性を抱いてきた。
しかし奈緒ほど自分の身体にしっくりくる女性はいなかった。
それほどまでに、奈緒とのセックスは素晴らしいものだった。
ベッドの上での奈緒の色っぽい視線、艶のある喘ぎ声、省吾のテクニックに素直に反応する感度の良さ。
ベッドの上の奈緒を思い出しただけで、省吾の身体が熱くなる。
普段はおとなしくて控えめな奈緒が、省吾の腕の中で乱れる姿は見ていてたまらなくなる。
(もう奈緒を手放せないな……)
省吾はフッと微笑むと、ドリップが終わったコーヒーを取りに行った。
その時省吾は部屋に入って来た奈緒に気付く。
手持ちの化粧品だけでメイクをしたからだろうか?
薄化粧の奈緒はいつもより若く見え、ピュアな雰囲気で美しかった。
肌は透き通るように白く滑らかで、頬と唇は薄ピンク色をしている。
愛らしい大きな瞳には、昨夜省吾に見せた妖艶な雰囲気はなく、どこか清らかな感じさえする。
(なんて可愛いんだ……)
省吾はもう一度奈緒をベッドへ押し倒したい衝動に駆られるが、その気持ちをグッとこらえた。
「じゃあ食べようか」
「はい」
二人はテーブルに向かい合って座り、朝食を食べ始めた。
奈緒はサンドイッチをもぐもぐしながら窓の外を見て言う。
「朝の景色も素敵ですね」
「うん。朝、昼、夜と時間帯によって雰囲気が変わるからね」
「凄いです。都心のホテルに泊まったような景色が毎日見られるなんて。羨ましいです」
その時省吾は片眉を上げて当たり前のように言った。
「奈緒もそのうち毎日飽きるほど見られるよ」
奈緒は一瞬その意味がわからなかった。
「え?」
しかし省吾はそこで話題を変えた。
「それにしてもこの組み合わせはやっぱりテッパンだなぁ」
「あ、また卵サンドと鮭おにぎり?」
「俺の中ではこの組み合わせがテッパンなんだ!!!」
「フフッ、飽きないの?」
「うん、全然」
思わず奈緒はクスッと笑う。
省吾は奈緒には卵サンドとフルーツサンドを買ってきてくれた。
以前奈緒が秘書室でフルーツサンドを食べていたのを覚えていてくれたようだ。
そんな省吾の気遣いが嬉しくなる。
省吾と迎えた初めての朝は、穏やかで楽しくてとても幸せな朝だった。
奈緒は全身が幸福感に包まれているのを感じる。
(この幸せがいつまでも続くといいな……)
奈緒はそんな風に思った。
「奈緒は今日は何時に出るの?」
「お昼前くらいに出ようと思います」
「そっか。帰りは金曜日だったよね?」
「はい。土日は母も仕事があるので」
「奈緒は兄弟は?」
「一人っ子なんです」
「じゃあ東京に来る前は、お母さんと二人暮らしだったんだ」
「はい」
「ちょっと変な事を聞いてもいい? 奈緒のお父さんは?」
「父と母は私が幼稚園の頃に離婚したんです。離婚の理由は父の浮気です」
省吾は少し驚いているようだった。
「そっか。じゃあお母さんは一人で奈緒を育ててくれたんだね」
「はい。母はずっと働きっぱなしで私を大学にまで行かせてくれました。だから母には凄く感謝しているし、余計な心配はかけたくないんです。それなのにあんな事になってしまって……」
「うん。まあ起きてしまった事は仕方がないさ。大事なのはこれからだ。これから奈緒がうんと幸せになってお母さんを安心させてあげればいいんじゃないか? とりあえずは三日間親孝行をしておいで」
「はい」
そこで、今度は奈緒が質問をした。
「深山さんのご家族は? あ、お姉様以外の……」
「うちは実家が吉祥寺で、兄弟はもう一人弟がいて5人家族なんだ」
「そうでしたか」
「弟さんとはおいくつ離れているのですか?」
「弟は今35だから5つ違いだな。数年前に結婚して、今は1歳になる子供がいるよ」
「へぇ、そうなんですね」
1歳と言えば可愛い盛りだろう。思わず奈緒の顔が綻ぶ。
「奈緒は子供は好き?」
「あ、はい。でも私には甥も姪もいないから、ちょっと羨ましいです」
そう答えながら奈緒は何気なく時計に目をやる。
「あっ、深山さん、そろそろ出かけないと会社に遅れちゃいますよ」
「おっと、もうこんな時間か」
奈緒は残りのサンドイッチを慌てて口に入れると、コーヒーを飲み干す。
省吾は奈緒を車で送ると言ったが、奈緒は丁重に断る。
送ってもらうと省吾が遅刻してしまうので、電車で帰る事にした。
奈緒が帰る時、省吾は玄関まで来てくれる。
別れ際、省吾は奈緒をギュッと抱き締めてキスをした。
「じゃあ、気を付けて行っておいで」
「はい。お邪魔しました」
そして奈緒は省吾のマンションを後にした。
コメント
56件
そのうち飽きるほどこの景色を眺められるよ なんてさりげない省吾さんのプロポーズ❤️奈緒ちゃんへの愛を感じます
キャッヾ(*´∀`*)ノ 毎日飽きるほど見られるよ🤭だって⤴️⤴️⤴️それは…👰🤵💍🤭🤭🤭🩷🩷🩷
身体の相性もバッチリとは奈緒ちゃんに増々惚れちゃうし手放せないね(*ノ∀`)ノ"アヒャヒャ 幸せいっぱいの朝💕💕