テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
しばらくして、颯介が先に目を覚ました。
腕枕をしたまま、まるで凛を守るように抱き寄せて眠っていたらしい。
たくましい腕の中で、凛はまだ安らかな寝息を立てている。
その穏やかな寝顔を見つめながら、颯介は思った。
(見事に堕とされたな……まさかここまで惹かれるとは思わなかった)
胸に湧き上がる感情は、これまでの恋愛とはまったく違う。
戸惑いながらも、その新しい感覚が妙に心地よかった。
凛をカフェで見かけたときから、こうなることを望んでいた気がする。
そして、その想いが一時の気まぐれではないことも分かっていた。
颯介はただ恋人を求めているわけではない。
胸の奥に、初めて『結婚』という二文字が浮かんでいることに気づく。
(おふくろが喜ぶだろうな……)
ふっと笑みをこぼしたとき、凛が目を覚ました。
「あ……」
間近にいる颯介に気づいた凛は、恥ずかしくて思わず声を漏らした。
その仕草が愛おしくて、颯介はそっと頬にキスを落とした。
「おはよう。ぐっすり寝てたね」
「おはようございます。今、何時ですか?」
「もうすぐ11時だ」
「もうそんな時間……」
三時間以上眠っていたことに、凛は驚く。
すると、颯介がふいに口を開いた。
「後悔はない?」
突然の問いに、凛は一瞬戸惑ったが、迷わず答えた。
「ないです。でも、どうしてそんなことを?」
「君の意思をちゃんと聞いておきたくてさ」
颯介は穏やかに微笑むと、観念したように言った。
「君が言った通り、見事な完堕ちだ」
その言葉を聞いた途端、凛の顔がぱっと明るくなる。
「やった~!」
無邪気に喜ぶ凛を見て、颯介は少し表情を引き締めた。
「でも、ひとつ言っておく。俺は『恋人』を作る気はない」
「え?」
凛は衝撃を受けた。
(ということは……一夜限り?)
ショックで頭が真っ白になった凛は、必死に平静を装った。
「で、ですよね……。大丈夫……私なんかが本気で相手にされるなんて思ってませんから……」
ぎこちない笑顔を浮かべる凛を見て、颯介は首を傾げた。
「それって、どういう意味?」
「……つまり、『恋人』じゃないってことは、『遊び』ってことじゃ……」
言い終わる前に、颯介は吹き出した。
「あははははっ」
「な、何がおかしいんですか?」
「ああ、悪い……だっておかしくてさ……」
笑いをなんとか抑え込むと、颯介は真顔で言った。
「何か勘違いしてないか?」
「勘違い?」
「うん。『恋人を作る気はない』の意味をだよ」
凛はきょとんとする。
「俺は君の気の強いところが好きだし、仕事のパートナーとしても申し分ない。おまけに体の相性も最高だ。そんな相手を手放すわけないだろう?」
「……?」
「まだ分からない?」
「ええと……はい……」
「俺が求めているのは、『恋人』じゃなくて『妻』なんだ」
その言葉に、凛の目が大きく見開いた。
「ええっ! つっ、妻?」
「そう、『妻』だ。その様子だと、プロポーズしなきゃダメか?」
「だっ、ダメじゃありません、すみません、すみません……」
動揺する凛に、颯介はまっすぐ視線を向けた。
「凛。俺と結婚してくれないか?」
「けっ、結婚……」
突然のプロポーズに、凛は完全に固まった。
「そう。俺の嫁になれ!」
「ちょっ、ちょっと待ってください。冗談ですよね?」
「冗談じゃない。俺は本気だ」
颯介の瞳を見た瞬間、凛はその言葉が真実だと悟った。
だが、あまりにも急すぎて、どう答えればいいのか分からない。
そのとき、紅子の言葉が脳裏に浮かんだ。
『自分に嘘をついたりごまかしたりせず、相手に誠実に向き合うこと。それだけで、ちゃんと相手に伝わるわ』
凛は小さく息を吸い、颯介に尋ねた。
「本当に……本当に私でいいんですか?」
「もちろん。君がいいんだ」
「私、気が強いし、けっこう優柔不断だし、真壁さんがまだ知らない嫌なところも、たぶんいっぱいあります。それでもいいんですか?」
「ああ。凛の知らない部分を、ひとつずつ知っていくのも楽しそうだ」
颯介は余裕の笑みを浮かべる。
(ああ……人生経験豊富なイケオジには何を言っても通用しないんだわ……)
凛は観念し、素直な気持ちを口にした。
「分かりました。プロポーズ、お受けします」
彼の目をしっかり見て答える。
すると、颯介はほっとしたように微笑んだ。
「ありがとう、凛。一生大切にするよ」
「よろしくお願いします」
凛が恥ずかしそうにぺこりと会釈をすると、颯介はこの上ない優しい眼差しで見つめる。
「これで婚約成立だな」
「ふふっ……ですね」
「初めて君を見たときから、こうなる気がしていたんだ」
「初めて見たとき? ああ、会社でですか?」
「いや、違う。会社で会う前に、俺たちは一度会ってる」
その言葉に、凛は目を丸くした。
「どこでですか?」
「カフェで、インテリ風のメガネの男を振ってただろう?」
「あっ……」
凛は、マッチングアプリで知り合った北川のことを思い出した。
「あのとき、いたんですか?」
「隣のテーブルにいた」
「全然気づきませんでした」
「だろうな。君は男を振るのに必死だったから」
颯介はくすっと笑い、凛の唇に軽くキスをした。
優しいキスを受けながら、凛は人と人が出会う縁の不思議を感じていた。
もしかしたら、二人は最初から出会う運命だったのかもしれない。
「俺たちが結婚すると知ったら、おふくろが泣いて喜ぶな……」
その言葉に、凛はハッとした。
「そういえば、お母様、大丈夫でしたか? それに、沢渡さんも……」
「大丈夫だよ。彼女を家まで送り届けたあと、家に戻っておふくろに全部説明した。君のこと、すごく心配してた」
「ご心配をおかけしてしまって……で、沢渡さんは?」
「家まで送っただけで何も話してない。今は変に刺激しない方がいいだろう。明日、田辺さんと会うから、そのとき全部話すよ」
「分かりました。でも、お母様がご無事でよかったです」
母親を気遣う凛の姿を見て、颯介はさらに愛おしさを募らせる。
実は颯介は、母親から毎日のように『凛さんをまた招待したら?』とせがまれていた。
「凛」
「はい?」
「もう一度抱きたい」
「えっ、でも、もう、お昼ですよ」
「俺たちには、昼も夜も関係ないさ」
颯介の熱を帯びた瞳に捉えられると、凛はまるで魔法にかかったように身動きが取れなくなる。
そのまま二人は、互いの想いを確かめ合うように、再び燃え上がるような濃密な時間を、ゆっくりと重ねていった。
コメント
23件

今日は、とっても幸せな気持ちで何回も読み返しています^_^ さぁ、明日からは、西奈美へ逆襲がはじましますね!どう、料理するのか、超楽しみ😊
完堕ちの颯介さんの本気のプロポーズ🎉🎉㊗️ 紅子ママのアドバイスの通り凛ちゃんの素直な返事で結婚🔜妻へ〜〜💖 お母様も大喜びだねo(^▽^)o💓💓
イケオジ颯介さんが完堕ち♡(´艸`))) 恋人どころかプロポーズして妻になって欲しいだなんてカッケー(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑💛🧡 公私共に相性バッチリ💕 お母さんに紹介する時は婚約者としてになるね👏👏