車が動き出すと雪子はハンドルを握る俊を見る。俊は今日も素敵だった。
きちんとしたジャケットスタイルも似合うが今日のようなカジュアルスタイルも野性的でドキッとしてしまう。
色落ちしたデニムにVネックの白Tシャツ、その上にざっくり編まれたグレーのカーディガンを羽織っている。
カジュアルな服装は俊の筋肉質の体型を更に魅力的に見せ俊の男らしさを見せつけていた。
左腕には高級時計、そして右手には男性に人気の高級シルバーブランドのブレスレット、首にはサメの歯がトップについた革ひものネックレスを着けている。おそらくハンドメイドの一点物だろう。
高級ブランドにナチュラル素材のハンドメイドを持ってくるところが心憎くてなんともお洒落だ。
緩くパーマのかかった髪は後ろへ撫でつけ愛用の薄茶色のサングラスをかけている。
そのこなれた抜け感のあるコーディネートが男の色気を一層露わにしている。傍にいるとクラクラするほどだ。
きっと平日のデパートへ行ったら人目を引く事間違いなしだ。そんな俊の隣を歩くのだと思うとドキドキする。
この日偶然にも2人は同じ色味の服を着ていた。そのお陰で二人並ぶとしっくりくる。
雪子はこのワンピースを買って良かったと心から思う。あとは雪子がいかに堂々と振る舞えるかが鍵だ。
もしかしたら俊之やみなみには会わずに済むかもしれない。しかし最悪の事態を想定して心の準備だけはしておきたかった。
その時、雪子の鼻にふわっとシトラスの香りが漂ってきた。俊がつけている香りだ。思わず雪子の心臓がドキドキと高鳴る。
今日は雪子は強く俊を意識していた。会っていきなりキスをされたせいだろうか?
雪子は自分が俊の『男』の部分を強く求めているような気がした。なぜ急にそんな風になったのかはわからないが俊の『男』の部分に触れてみたいと思っている自分がいた。
こんな気持ちになったのは初めてだ。俊之と付き合っていた頃にも感じなかった感覚だ。
そこで雪子は一度フーッと深呼吸をすると俊との会話に集中しようと気を引き締める。
車の中で雪子は元夫から息子宛てに来た手紙の事を話した。
手紙の内容、息子和真の反応、そして息子との面会に元夫が愛人を連れて来ていた事等を話した。
「和真君は父親がいなくてもちゃんと育ってる。立派じゃないか。それはきっと君と君のお父さんが沢山の愛情を注いだからだよ。和真君自身もそれがわかっているみたいだし感謝の気持ちもある。だからきっともう大丈夫だ。逆にこれからはお母さんを守ってくれる頼もしい存在になるだろうな」
俊の言葉に雪子は嬉しくなった。
「それにしても君の元ご主人はやってはいけない事をやってしまったね。子供との面会の場に愛人を連れて来るなんてもってのほかだ。例え小さくても子供は全てわかってるよ。そして深く傷ついたんだろうな、可哀想に」
「ええ、決して許せません。だからあえて今日は行く事にしたんです」
力強く言う雪子を見て俊は母親が子供を守る強さのようなものをひしひしと感じた。
___母は強し
母性とはとても尊いものなのだなと俊は思った。
「で、元ご主人の不倫相手の顔は知っているの?」
「離婚原因になった河合さんは新人の頃に同じフロアで働いた事があるので知っています。でも最近の愛人の方は全く知りません。婦人服売り場で働いているみたいですが」
「そっか。じゃあ今日行くフロアにいるかもしれないんだね。もし元ご主人や河合っていう人がいたら俺の腕を掴んで合図をしてくれる?」
「わかりました。なんかドキドキします」
「スパイ映画みたいだね」
二人は声を出して笑った。
雪子の笑顔を見た俊が言う。
「その笑顔があるなら大丈夫だ。俺が傍にいるから安心して」
俊はそっと雪子の頬を撫でた。その瞬間雪子の胸の中がジーンと熱くなる。
萌香が滝田に感じている感情もきっとこんな感じなのだろうか?
誰かに守られているという安心感に雪子はほんの少しくすぐったさを覚えた。
やがて車はデパートへ着いた。
駐車場で車を降りた二人はしっかりと手を繋ぐと颯爽とデパートの中へ入って行った。
コメント
3件
お互いの装いにいつも以上に惹かれている2人❤️💗💕 それ以上に雪子さんが大切な俊さんに守られながらも元夫に挑む気持ちで本店に出向く勇気を持てたのも和真くんや俊さんのおかげ🥹🎉 この修羅場を乗り越えた後に新しい2人の関係になれる気がする〜🤭❣️💕🎉
らびぽろちゃんと 同感です🥰 お互い男と女として 惹き付け合ってるし、意識もしているよね....💏♥️ もう和真君にも報告済みで、 彼は母親の幸せを心から応援してくれてるし👍️♥️ あとは二人次第だね~💝✨ 恋人として次のステップに進む ための記念すべき一歩になると良いね~🙏🍀
そっと雪子さんの頬を撫でる俊さんに₹ゅƕ🫧🩵🫧 今日は、今後の2人にとって次のステップへ進む大事な日になるかもしれないね🚪 お互い男と女を感じてるから…୨୧ᵕ͙·̮ᵕ͙)✩.°