テラーノベル
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泉でひと休みしたあと、わたしは金色の卵をそっと持ち上げた。冷たい水のおかげで、もうあつあつじゃない。
でも…なぜか、表面の模様が少し変わっていた。
さっきまではただ金色に光っていたのに、
よく見ると、小さな星の形がいくつも浮かびあがっている。
それは、空にある星座みたいに並んでいた。
「ふしぎ…」とつぶやいたとき、
胸の奥に、あのときと同じようなやさしい声がひびいた。
『ミナ、よく守ってくれましたね』
まわりを見ても、やっぱりだれもいない。
でも声は、あたたかくて、包みこまれるようだった。
『その卵には、星のかけらが眠っています。
それは、あなたが歩く道を照らす光になるでしょう』
星のかけら…?
わたしは卵を胸に抱きしめた。
そのあたたかさは、ただの光じゃなくて、
わたしを信じてくれる心みたいに感じられた。
丘の上のお祭り飾り場に着くと、
みんなが「よく運んだね!」と拍手してくれた。
わたしは卵をそっと台座に置く。
夕暮れになったら、この卵は飾りのまんなかで輝くんだって。
──そのとき、きっと星のかけらも一緒に光るはず。
わたしは胸の中で、そっとつぶやいた。
「星の女王さま…わたし、会いに行くからね」
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