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星のおまつりまで、あと四日。村じゅうの空気が、なんだかキラキラしている。
広場では大きな木のてっぺんや屋根の上に、
赤や青、金色の布がひらひらとかけられ、
金色の卵もそのまんなかできらきら光っていた。
わたしは、うっとりしながら見上げた。
あんな高いところに、自分の手で飾りをつけられたら──
きっと、すごくうれしい。
お兄ちゃんにそう話すと、
「ミナは小さいから、届かないよ」って笑った。
その笑いはやさしくて、頭をぽんぽんと撫でてくれたけど、
わたしの心は、むくっと小さな反抗をはじめた。
──わたしだって、とべるはず。
小さいからって、できないなんて、いや。
その日の夕方、丘の上まで登ってみた。
空はすこしずつ群青に変わって、
西のほうがオレンジ色に染まっていた。
高い空をツバメがひゅんひゅん飛び、
そのあとを小さな虫たちが追いかける。
あんなふうに羽があれば、
星の女王さまのところへだって行けるかもしれない。
「とんでみたいな…」
思わずつぶやいて、両手を大きく広げた。
風がスカートをふわっと持ち上げて、
ほんの一瞬だけ、地面から浮いたような気がした。
そのとき、どこからか光がふわりと舞いおりてきた。
ひとひら、ふたひら…それは雪みたいに軽くて、
でも溶けないで指先に残った。
よく見ると、小さな粉がきらきら輝いている。
金色でも銀色でもない、不思議な色の光。
「…星の粉?」
粉はわたしの手のひらから風に乗り、
空へ戻っていった。
その残り香のような光が、
なんだか「こっちへおいで」と呼んでいるように感じられた。
わたしは胸の中で、小さく決意した。
──紙のつばさを作ってみよう。
それで、この粉の道を追いかけるんだ。