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その日、僕はご飯も喉に通らないまま部屋に篭っていた。
いつ、さとるくんから電話がかかってくるか分からない。
あの化け物を見た以上、みこに渡すわけにもいかなくなった…ああ、もう!
やっぱり行くべきじゃなかった…。
ベッドにくるまってあの化け物の言っていたことをふと思い出す。
「…”3”って何のことだろ…。」
さとるくん には、この数字に関連する何かしらの情報は無かった。
…やっぱりもう一度調べてみよう。
ベッドから出て、本棚から一冊の本を取り出す。
“都市伝説百科”、みこに無理矢理渡された本のひとつだ。
確か、このページ……あった!
プルルルルルル プルルルルルル
「ひっ……」
僕が調べようとした瞬間、ガラケーが音を立てる。
電話がかかってきたのだ。
放っておくわけにもいかず、僕は恐る恐る携帯を手に取り、画面を見た。
着信元 ”みこ”ーーー
「…はあああぁぁぁ、びびったーーー!!」
安心して電話に出る。
「もしもし…」
『あ、やっと出たわね。…聡、大丈夫?』
「みこ…うん、僕は大丈夫…そっちは?」
『大丈夫よ…聡はお母さまが仕事よね?』
「うん…まあ、問題ないよ。」
僕の家は母子家庭のため、母がいつも遅くに帰ってくる。そのため、この時間はいつも1人なのだ。
『そっか……ところで、答えづらかったらいいんだけど、聡は何を見たの?』
ビクッと肩が震えてしまう。
僕が見たあの怪物…あれが”さとるくん”なのだろうか?
でも都市伝説じゃ、子供の霊だって書いてあることもあるのに…
…いや、そもそも
“姿を見られたら殺している”わけだから、記録なんてあって無いようなものなのかもしれない。
「…何も見てないよ、ごめん心配かけて…。」
申し訳なさそうに言うと、みこは慌てて僕を元気付けようといつもの話題に戻る。
僕を公衆電話に連れてきたことを悔いているのかもしれないな…
…それにしてもおかしい。今までは心霊スポットを巡ってもこんなことには一度も会わなかった。
何で今回はあんなのと出会ったんだろう…
考えることが多く、ぐるぐると思考を巡らせているが何も分からない。
『…聡、ごめんね…私が聡を連れて行ったか ら…』
少しだけ静かになっていたからか、みこが心配そうにそう言った。
やっぱり気にしていたのか…まあでも、あんな怪物に会うのがみこじゃなくて良かったって思ってるし…
「…ううん、大丈夫だよ。気にしなーー
ツーツー
「…みこ?」
……………
急に電話が切れて画面が暗くなる。
どこかボタンを押してみるが、何も反応しない。
…嫌な予感がする。
急いで携帯から手を離そうとしたその時
画面に光がつき、見たくもない文字が僕の目に入ってきた。
非通知ーー
「…っ!……け、携帯捨てなきゃ……あれ?」
手を離そうとしても何故か手が思うように動かない。
それどころか勝手に親指が電話の応答ボタンを押そうとしている。
「い、いやだ…いや、いやだ…やめろ!!
止まれよ!!このっ……ぐぅ…」
何度も引き離そうとするが、全く制御の効かないままだった。
そして遂に…ボタンに指が触れる。
「あ……」
『……………』
電話からは何の声も聞こえない。ここで何か行動を起こせば、変わることもあるのかもしれないが、僕にそんな余裕は今ない。
どのくらいの時間が経ったのか…
何も言わずに携帯を握りしめていると、何かの囁きが聞こえてきた。
『……”2”………。』
「……!!?」
数が…減った…?
それにこの声はあの化け物の…
ツーツー
「…おかしい、普通ならさとるくんは自分の位置を伝えてくるはずだ。」
僕は電話の中で感じた違和感を拭いきれずにいた。
…いや、こんなことを考える前にまず自分の安全を確保しないと…
携帯の電源を切って、床に放り投げる。
これで電話はかかってこなーー
ブーブー
「な、なんで…電源切ったのに…」
恐怖で動くことができなかった。
ただ、ベッドの上で震えて電話が止まるのを待っていると、着信音が鳴り止み、またあの声が僕の耳に侵食する。
『……”1”………。』
「………誰か助けて…。」
切実にそう呟く。
確かに…思い出してみれば、僕はあの時点で、
あの化け物の姿を見てしまったのだ。
あれが”さとるくん”ならば僕はこれから…
体の震えが止まらない。
誰か…誰か…
ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
……ガチャ
ギィ…ギィ…ギィ…
階段を少しずつ上がる音が近づいてくる。
普段聞いているはずのその音が、今は死のカウントダウンのようなものに聞こえた。
「……ああ、やっぱりやめときゃよかった…」
覚悟して、僕は目を瞑る。
「…聡!」
「……え?」
目を開けると、目の前には息を少し荒げた
みこがこちらを見ていた。
「み、みこ…?なんでここに…」
「何でって…聡がいきなり電話切るから心配で見にきたのよ…ピンポン押したのに出ないし、扉は開いてたし…」
…扉が開いてた…?僕は鍵はちゃんと閉めたはずだ。
まさか…!?
「みこ、!今すぐここから逃げーー
「 ”0”……。」
その声は電話からでは無く、僕の真後ろから聞こえた。
振り返れない、体が全く動かないのだ。
目の前のみこは腰を抜かして、地面に尻餅をついている。
“あいつ”の姿を見たのだろう。
あの黒い肌に、長い手足、目が無く、笑うような口の怪物を…
このままではみこも僕も殺されてしまう。
少しでも…みこが逃げる時間を稼ぐんだ…!
「…”お前は誰だ”……。」
僕はその禁忌の質問をさとるくんにした。