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#普通
野々さくら
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ありあ
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東亰都田園調布。
大正時代に渋沢栄一が発起人となり、イギリスの田園都市をモデルに開拓された街。
美しい放射状に広がる道路と、整然とした区間が特徴の、全国的にその名を知られる日本屈指の高級住宅街。
しかし近年では相続税問題や、厳格な景観維持規定『田園調布憲章』を背景に、空き家や空き地増加が徐々に問題視され始めている。
しかし、そのような問題を抱えていてもなお、いまだに高級住宅街としての高いブランド価値を維持し続けている。
「やっぱ大きいお宅が多いわね・・・」
銚子は田園調布を歩きながら、物珍しいそうに、軒を連ねる高級住宅を眺める。
「ああ、なんだか歩いてるだけで
ソワソワしてくるな〜・・・」
多摩雄は場違いだとでも思っているのだろうか、若干萎縮したように、縮こまりながら歩く。
「というか信愛はこんな場所に呼び出して
何を企んでるのかしらね?」
「確かにな・・こんな場所に
知り合いの家なんてある訳無いもんな」
「あの子ったら、また変なことに首
突っ込んでるんじゃないでしょうね」
銚子はやれやれと言った様子で頭を抱える。
「まぁ、信愛は銚子に似て
無鉄砲なところがあるからなぁ」
「無鉄砲で悪かったわね」
二人がそんな会話しながら歩いていると、手を振りながらこちらに向かってくる信愛の姿があった。
「あ♬二人とも♬こっちこっち♬」
信愛は二人を確認すると、手を大きく突き上げて手招きする。
突然呼ばれた銚子は、不思議そうな表情で信愛を見る。
「信愛?」
隣を歩く多摩雄も首を傾げていた。
銚子は周囲を見回しながら尋ねる。
「あんたこんな場所で一体何やってんの?」
信愛は答える代わりに二人の手を取り、ぐいぐいと前へ引っ張った。
「いいからいいから!早く来て来て!」
戸惑う両親を連れ、信愛は足早に歩いていく。
「ちょ、おい! 信愛。一体どこに行こうって」
多摩雄の声にも振り返らず、信愛は笑顔で手を振った。
「いいから着いて来て」
やがて信愛は立ち止まり、大きく前を指差す。
「ここだよここ」
その先には、堂々とした佇まいの豪邸が夕日に照らされていた。
銚子は思わず息を呑む。
「なに!?この豪邸!?」
多摩雄も感心したように見上げる。
「立派なもんだな」
信愛は門の前へ駆け寄ると、二人を手招きした。
「入って!入って!」
しかし銚子は慌てて首を振る。
「な、何バカな事言ってんのよ!
勝手に入っちゃまずいでしょ!
誰のお宅かも分からないのに!」
信愛はくすりと笑いながら答えた。
「嫌だなぁ〜勝手じゃないよ」
「勝手じゃない?」
多摩雄が聞き返した、その時だった。
豪邸の扉が静かに開き、哲哉が姿を現す。
穏やかな笑みを浮かべたその人物は、二人へ軽く頭を下げた。
「白縫さんのご両親ですね?」
突然話しかけられた銚子は戸惑う。
「え? あなたは・・・」
隣で多摩雄が目を見開き、声を上げた。
「ぁあああ! こ、この人!」
興奮気味に指を差す。
「こ、小諸哲哉だよ!小諸哲哉!」
銚子も驚きに目を丸くした。
「え!?あの小諸哲哉!?」
あまりの出来事に、二人はしばらく言葉を失う。
信愛は不思議そうに首を傾げた。
「二人とも小諸さんの事知ってるの?」
銚子は呆れたように笑う。
「知ってるも何も、有名な音楽プロデューサーよ
私たちの世代で知らない人居ないわよ」
信愛は照れくさそうに頬をかいた。
「そんな凄い人だったんだ。全然知らなかった」
銚子は苦笑しながら娘の肩を軽く叩く。
「まったくこの子ったら」
そして哲哉へ向き直り、深く頭を下げた。
「すいません小諸さん。無知な娘で」
哲哉は穏やかに笑う。
「わはは、構いませんよ。まぁ
私の知名度もまだまだって事ですよ」
その柔らかな物言いに、場の空気が少し和らぐ。
多摩雄は改めて哲哉へ尋ねた。
「しかし、なぜ小諸さんがウチの娘と?」
哲哉は信愛へ優しい視線を送りながら語り始めた。
「前々から目にかけていた
歌手がいましてね
その子が娘さんの怪異探求倶楽部に
救われた事があったんですよ」
銚子は納得したように頷く。
「まぁ、そんな事が・・・」
哲哉は静かに微笑んだ。
「それがキッカケなんです」
「そうだったんですか」
多摩雄も感心したように頷く。
哲哉は門を開け、二人へ手を差し伸べた。
「さぁ、お上がりください」
銚子は豪邸を見上げながら尋ねる。
「ここ小諸さんのご自宅だったんですか」
哲哉は首を横に振る。
「別宅として使用している物件なんですがね」
その一言に銚子は思わず固まった。
「このレベルの豪邸が別宅・・・」
あまりのスケールに、口が半開きのまま塞がらない。
それでも銚子は疑問を口にした。
「でもなぜ私たちを招いてくれたんです?」
哲哉は意味深に微笑む。
「まぁ、とりあえず入ってください
詳しくは中でご説明致しますので」
銚子は状況を飲み込めず、小さく相槌を打つ。
「は、はぁ・・・」
突然の展開に戸惑いながらも、銚子と多摩雄は顔を見合わせ、小さく頷いた。
そして信愛に導かれるまま、二人はゆっくりと豪邸の敷地へ足を踏み入れた。
コメント
1件
×××さん、今回もありがとうございます。田園調布の高級住宅街の描写が細かくて、銚子さんたちの場違い感がすごく伝わってきました。特に「このレベルの豪邸が別宅…」って銚子さんの驚きに思わず笑っちゃいました。哲哉さんの登場で話がどう動くのか気になります。信愛ちゃんの無邪気な引っ張りっぷりが可愛かったです。次も楽しみにしてますね🌷