帰りは俊が車で家の前まで送ってくれた。
「ありがとうございました」
「では、水曜日の6時に!」
俊はそう言った後、軽く手を挙げてから車で走り去って行った。
雪子は車が見えなくなるまで俊を見送った後、ため息をついて門の中へ入って行った。
家に入ると、雪子はそのままソファーへ腰を下ろす。
そして、」
「ハァーッ!」
と大きなため息をついた。
それからすぐにスマホを取り出すと、優子へメッセージを送った。
するとすぐに優子から電話がかかってきた。
「キャーッ、いきなりどういう展開? 豊村悦司似のイケオジと食事に行くなんて?」
「自分でもパニックになってて思わずメッセージしちゃったよ」
雪子は深いため息とともにそう告げると、カフェでの一連の出来事について優子に話した。
俊がいきなり若い女性とカフェに入って来た事、
雪子がいつの間にか『隠し妻』役にされた事、
そのお礼に食事に誘われた事や、
俊の仕事が飲食店プロデューサーというなんだかクリエイティブな仕事だった事などを全て優子へ話した。
もちろん、俊が一緒にいた女性が若くてモデルのように美しい女性だった事や、その女性から『年増のオバサン』と言われた事
等もだ。
「それにしてもその女むかつくわね! 今どんなに若くて綺麗でもみんないずれ年増のオバサンになるんだからーって言い返し
てやりたいわ!」
優子は鼻息を荒くしてまくしたてた。
「で、そのお礼にディナーに誘われたんだねー! いいじゃん、行きなさい! 絶対に行けっ!」
「そう簡単に言わないでよー。相手は若くてモデルみたいな美女に告白されていたイケオジだよ? 今考えたら無謀過ぎる約束
をしちゃったなーって後悔してるのにー」
「なんでよ、そんなの気にする事ないじゃん。だってそのモデルみたいな女はバッサリ切られたんでしょう? 逆に痛快で気持
ちいいじゃない! 私その豊村悦司の事気に入った! それに友達になって下さいって言われたんでしょう? 友達なんだから
いいじゃん。この先老後にイケメンのおじーちゃん友達がいたらきっと豊かな日々を過ごせると思うよー」
優子はご機嫌な様子で言った。
今は電話だから顔が見えないが、もし優子が目の前にいたらきっとニヤニヤしている事だろう。
「でもね、着て行く服がないの。だってちゃんとした服って言ったら仕事の時のスーツしかないし、今から買いに行く時間もな
いし」
「キャッ、雪子可愛いっ! そんな事で悩んでたんだ。なんなぉーその乙女チックな心。思わずキュンとしちゃったわ。まさか
50にもなってそんな初々しい雪子が見られるなんて」
優子はからかうように言った後、こうアドバイスをした。
「この間私とのディナーに着て来たあのワンピースでいいじゃん。あれ、雪子にすごく良く似合っていて可愛かった。雪子は
さ、清楚な感じが似合うんだよね。あれにしなさい!」
「そっか。あのワンピースがあったか! わかった。じゃああれにする」
「そうそう、あれにちょこっとアクセサリーでもつけたらいいんじゃない? あ、それと、その相手の人なんて名前? 後でネ
ットで調べてみるよ」
「名前は一ノ瀬俊よ。でもさ、最悪な事に『シュン』の字は『俊之』の『トシ』の字と一緒なの」
雪子が少し暗い感じで言うと、
「えーそうなんだ。でも名前の文字なんて関係ないよ! そんなちっちゃい事は気にしないのー」
優子はそう言って雪子を励ます。
「うん」
「行ったらちゃんと逐一報告せよ! わかった?」
「わかった。ごめんね、忙しい時間に。じゃあまたね」
そこで二人は電話を終えた。
コメント
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優子さんが俊さんに負けず劣らずのノリノリ〜💃🪩🕺後押しも〜😆プッシュプッシュ🤭
優子さんが俊さんをとても気に入って雪子さんをけしかける様子が見えるようで笑えたよ〜🤭 この掛け合いがこの2人の流れを作ってるんだよね🌸 雪子さん、優子さんがそばにいてくれて良かったね😊💞