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その頃、美月は夜のクラスの担当を終えて家に向かっていた。

時間は22時近くになっていた。


駅前の24時間営業のスーパーへ寄り、明日の朝食用のパンを買ってからアパートへ向かう。

角を曲がりアパートの前に差し掛かった時、二階の美月の部屋の前に人影が見えた。

男性が手すりにもたれかかっている。


(海斗さん?)


一瞬そう思ったが、今海斗はレコーディングの大詰めの時期でここにいるはずはない。

美月はもう一度暗闇に目を凝らしてみる。

その男性が誰だかわかった瞬間、血の気が引いた。

急に動悸がして吐き気がしてきたが、なんとか相手に気づかれなよう慎重に引き返す。

そして相手からは見えない位置に移動すると一度深呼吸をする。


そこに立っていたのは元夫の健太だった。


(どうしよう…)


美月は一対一で健太と話す勇気はなかった。

健太は美月にとってはもう過去の人だ。今更話す事などない。


そてにもし話したとしても、健太とは前向きな話など出来るわけがない。

いや、それ以前に別れた妻の家にこんなに夜遅く訪ねてくるのも異常だ。彼には婚約者もいるのだ。

美月は健太の異常な行動に恐怖さえ感じた。


何かトラブルになっても困ると思い、とりあえず美月は人通りの多い駅へ戻ることにした。

しかし駅前の喫茶店やカフェは既に閉まっているので、普段はあまり行かない駅の向こう側にあるコンビニのイートインコーナーで時間を潰す事にした。



その頃、海斗は打ち上げを終えてタクシーで自宅に向かっていた。

録音スタッフはまだこの後スタジオでの作業が残っているので、本格的な打ち上げは日を改めて行われる予定だ。

だからこの日は一次会で解散となった。


海斗はレコーディングを無事終えた事を美月に一番に報告したかったのでメールを送った。


【レコーディングは無事終わったよ】


その時美月はコンビニのイートインコーナーでコーヒーを飲みながら読書をしていた。

海斗からのメールを見た美月はホッとした。

海斗が一から作り上げてきた努力の結晶が、今日新たなアルバムという形になり完成したのだ。

美月はプロとして仕事を完璧にやり遂げた海斗を心から尊敬した。

そしてすぐに返信する。


【無事に終わって良かった。お疲れ様でした】


するとすぐに返事が来る。


【今どこ?】

【駅裏のコンビニです】


返信を見た海斗は違和感を感じた。

美月は普段駅の裏側にあるコンビニには行かない。帰りが遅い時は駅前の24時間営業のスーパーに寄る事がほとんどだ。

気になった海斗は聞いてみる。


【駅裏のコンビニって珍しいね。何かあった?】


海斗のメールを読んだ美月は、海斗に言うべきかどうか悩んだ。

レコーディングを終えたばかりの海斗は疲れているはずだ。だから困らせたくはなかった。


(どうしよう)


美月が悩んでいると美月の携帯が鳴った。海斗からの電話だった。


「もしもし、どうした? 何かあった?」

「うん…あのね、アパートのドアの前に元夫が立っていたの。だから駅に戻ってきてコンビニで時間を潰しています」


美月は海斗に心配させないよう、あえて明るく言った。

海斗は嫌な予感が当たっていたので、美月に電話してみて良かったと心から思う。


「俺、今タクシーでもうすぐそっちに着くから、俺が行くまでそのままコンビニで待ってて」

「うん、わかった」


美月はそう返事をすると電話を切った。



海斗はタクシーの運転手に「もう少し急いでもらってもいいですか」と頼んだ。

そしてタクシーの行き先を自宅から美月のアパートに変える。


五分後タクシーは美月のアパート前に着いた。

タクシーを降りた海斗はすぐにアパートの階段を上がった。


するとそこには健太が立っていた。



「そこで何をしているのですか?」


海斗が声をかけると、健太がびくっとして振り向いた。


「沢田さん…」


健太はその声に驚きバツの悪そうな顔をした。


「美月に何か用ですか?」

「用という訳では……」


健太は口ごもる。


「もう美月にまとわりつくのをやめていただけませんか?」


海斗はかなり強い口調で言った。


「別にまとわりついてなんて」


健太は言い訳がましく言った。


「先日も美月の職場まで来ていましたよね?」


海斗がそう聞くと、健太はなぜ知っているんだ? という顔をした。


「あなたには婚約者がいるんですよ! こんな事をしてもし相手の方が知ったら何と言い訳するつもりですか? その方をまた不幸な目に合わせるのですか? 大人なんですからもうちょっと考えて行動して下さい!」


海斗はさらに強い口調で言った。そして続ける。


「私は美月と結婚するつもりです。だから私の大事な人に付き纏うような事はやめていただけませんか?」


それを聞いて健太はハッとした。そして急に戸惑ったような表情になる。


「すみません、私がどうかしていました。大変申し訳ありません」


健太は慌てて海斗に一礼すると、逃げるように階段を降りて行った。


そこで海斗はフーッと息を吐く。


その後すぐに海斗は美月を迎えに行った。

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