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「死にたいです」
こう店長に問いかけたのは若い男客だった。
「どうしてそんな」
店長は面倒ながらもわけを聞いた。
「会社作って倒産して麻薬やって捕まって
みんなに見放されて、そんで…英雄になりたいんです」
「英雄?」
英雄とはこれまた変である。
馬鹿に真面目にそんな子供じみた憧れを抱いているもんだ。
「死んだらみんな悲しむじゃないですか、たとえ僕みたいな男でも…
凄惨な死に方をすれば必ず新聞やテレビが悲劇のように報道する。
そんでみんな僕の命を惜しむ…親も、隣人も…あんたも…。
例えば三島由紀夫はどうですか、あの人は自衛隊駐屯地に襲撃して、
もう国家転覆テロじゃないですか。それなのに日本を救おうとした英雄ですよ。」
店長はそんな三島…なんたらなんか知らぬ。
「それに…タコピーの原罪の雲母坂まりなだってあのまま死なずに
のうのうと生きていたらきっと読者からえらい反感を買ったでしょうね。」
「でもわざわざ死ななくても…」
「死ななくてはダメなんです。だってどうせだったら親に
僕の借金全部なすりつけたいじゃないですか。」
彼は今、一人の男性から英雄どころか極悪人と烙印を押された。