翌日陸と華子は日本へ向かう飛行機の中にいた。
慌ただしい日程だったが陸の家族と楽しい時間を過ごす事が出来たので華子にとっては思い出深い旅となった。
飛行機が離陸後、華子はスマホで撮ったハワイの写真を陸に見せていた。
ハイビスカスやプルメリア、ブーゲンビリアといった南国の花々を華子はいつの間にか沢山撮影していた。
「いつこんなに撮ったんだ?」
「フフッ、陸が電話している間とか会計をしている間とか? 隙間時間でも簡単に撮れるほどあの島は美しい花で溢れていたわ」
「なるほど。じゃあ今日から華子の『華』の字は、お花の『花』に改名だな」
「いやんっ、そこは変えなくていいわ」
「なんならカタカナにするか?」
「それじゃあテレビに出てるお笑いグループになっちゃうじゃないのぉ! もうっ!」
華子が陸の腕を叩くと陸が声を出したので思わず華子も笑ってしまう。
笑いながら前を見ると見覚えのある顔があった。
「栞ちゃん…」
華子が呟いたので陸が聞いた。
「知り合いか?」
「うん、前に話した元義理の妹よ」
陸が華子の視線の先を見ると、そこには華子よりも2~3歳若いキャビンアテンダントが立っていた。
華子の元義理の妹の栞は背筋をピンと伸ばし穏やかな笑顔で乗客の対応をしている。
陸は急に黙り込んだ華子に言った。
「俺が前に言った事を覚えてるか?」
「うん、思いやりを持って優しく接する……よね?」
「そうだ、頑張れよ! 神様が折角チャンスを与えてくれたんだからな。じゃあ俺はちょっとトイレに行って来るよ」
陸はそう言って席を立った。
(陸ったら気を遣って席を外してくれたのね)
華子は思わず微笑む。しかし心臓はドキドキさせながら栞が来るのを待った。
栞は華子の一列前の客の対応を終えると笑顔を浮かべ優雅にこちらへ向かって来る。
そして華子と目が合うとハッとした顔をした。その目はかすかに怯えていた。
そこで華子が少し上ずった声で言った。
「また会ったわね」
華子はなるべく棘のある口調にならないよう注意する。
すると栞は何も言えずに固まったまま華子を見つめていた。
そこで更に華子が言った。
「あの時は本当にごめんなさい。クレームなんて大人気ない事をしてしまって、自分でも嫌気が差すわ」
華子はそう言って頭を下げた。
その時、強張っていた栞の顔が少しほぐれたように見えた。
栞は何かを考えている様子だったがまだ何も言えずに黙っている。
そこで華子は続けた。
「CAになりたかったから慶尚大学を受けたのね。今になって理由が分かったわ。頑張って夢を叶えたのね。凄いじゃない」
華子はそう言ってフフッと笑った。
すると栞の顔が徐々に穏やかな表情へと変わっていった。
華子が努めて優しく話しかけようとしている事に栞も気づいたようだ。
そして漸く栞が口を開いた。
「ありがとうございます」
その時陸が隣の席に戻って来た。
栞は陸が華子の連れだと気付いたようで陸の事を見ている。
華子は戻って来た陸に言った。
「彼女が元義理の妹よ。CAなの! 凄いでしょう?」
陸がうんと頷くと華子は栞に陸を紹介した。
「こちらは婚約者の日比野さん」
「初めまして、日比野です」
栞はかなり驚いている様子だったがすぐに二人に向かって言った。
「婚約したんですね、おめでとうございます」
「ありがとう」
元妹に対し優しく接しようと努力している華子の姿を見て陸は思わず愛おしくなる。
そして隣から華子を優しい眼差しで見つめていた。
そんな二人の様子を見た栞は感極まったのか目を赤くしていた。必死に涙をこらえている様子だった。
しかしすぐに晴れやかな笑顔を浮かべると、二人に向かって一礼をしてから次の列へ移動して行った。
栞が目の前からいなくなると華子はホッと息をつく。
そこで陸が言った。
「よく頑張ったな、偉いぞ。また惚れ直しそうだ」
「ばかっ!」
華子は照れたように言ってから笑顔で陸の肩に頭をもたれた。
やがて飛行機が空港に着陸すると、華子は席を立ち陸と手を繋いで栞が立つ出口へ歩いて行く。
栞の前を通り過ぎる際華子は栞に向かって軽く会釈をした。
その際一瞬二人の視線が絡み合う。そして互いに笑顔を浮かべた。
華子は思わず涙が溢れて来た。その瞬間あの日彼女と暮らした懐かしい日々が思い出される。
(可愛い妹、さようなら)
華子は心の中で呟きながら飛行機を後にした。
零れる涙を必死に手で拭う華子を見て陸が手をギュッと握りしめる。
「ちゃんと伝わったと思うぞ、お姉さんの気持ちは」
「うん」
「よく頑張った」
「うん」
華子は嬉しそうに微笑みながら陸の手をギュッと握り返した。
コメント
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帰りの機内で 栞ちゃんと再会した華子チャン....✈️ 前回 八つ当たりしてしまったことをきちんと謝り、 婚約者の陸さんを紹介することが出来ましたね✨ 華子チャン、本当によく頑張りました‼️👍️💖 栞ちゃんにも、きっと伝わっていると思います✨ 婚約を栞ちゃんにも祝福して貰えて、幸せだね....🥺🍀
これも因果応報ですね、華子が陸さんに出会い、心を入れ替えてみんなが認めるほど素敵な女性になって、陸さん言った通り自分にも過去辛く当たった栞ちゃんにも優しく接することで、過去の自分の罪を昇華することができたね✨🥰👍 もしかしてもう会うことはないかもしれないけど、お互いの心の中に姉妹👭の存在は生き続けるよ、華子🥲🌹🌌