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「前代未聞ですよ。離婚調停は話し合いの場所で、決闘の場じゃないんだから」
家庭裁判所の玄関を出たところで、古田弁護士が呆れたように言う。
「すみません」
奈緒は頭を下げて謝った。
やったことに後悔はないが、古田弁護士に迷惑がかからないかは心配だ。
「それで本当に大丈夫なんですか? 何か仕事の当てでも?」
「…正直ありません」
奈緒の返事に、古田弁護士はあんぐりと口を開けた。
「ただ、このまま何もしないよりはマシかなと」
「いやいや、何もしないほうがマシな事もありますよ!」
「まったくだ」
突如、史博の声が聞こえて、ゾッとなった。
嫌悪感から体が硬直する。
「世の中、お前が思っているほど楽じゃないぞ。まぁ、夫の汗水たらした金をチュウチュウ吸うしかない寄生虫には理解できないかぁ」
大袈裟にお手上げのポーズをしてみせる。
屈辱で奈緒は奥歯を噛みしめた。
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